【インタビュー】1stフルアルバム「A PIECE OF CAKE」完成！ 安野希世乃インタビュー。「フルアルバムの制作はお祭りのようでした」

アルバムの最後には、ローソクを吹き消す音が入っているんです

── 続く11曲目の「花時雨」は安野さんの作詞です。先ほどもおっしゃった通り、どっしりと重いバラード（作曲：廣中トキワ、編曲：家原正樹）に、どのような詞を書こうと思いましたか？

安野　「人生の中での別れ」「未練や後悔、心残り」というネガティブな感情がテーマです。やっぱり人って、幸せの絶頂のとき、心が平和なときは、悲しい感情にわざわざ目を向けたりしないじゃないですか。だけど、悲しい出来事があったり、大切なものを失ったりして、すぐには立ち直れない気持ちになったとき、今はただ悲しみの水たまりの中で、じっとしていたいと願うことがあると思うんです。そういう傷ついた心に寄り添える曲になればいいなと思って書きました。

── 使われている言葉に趣があって、悲しみと同時に、懐古的な美しい情景が描かれているように感じました。

安野　悲しみに浸っているとき、きっと頭の中には、かつて見たいろいろな風景が思い浮かんでいるような気がしたんです。曲自体に、日本の風景が思い出されるような、ある意味、懐かしい場所にトリップするような雰囲気があったので、それに合わせて歌詞も日本的になっていきました。辞書を引きながら作詞をしたので難読語が多くなって、プロデューサーさんから「歌詞カードにはルビを振っていいですか」とご提案いただきました（笑）。

── たしかに「紲（きずな）」とか「嘯（うそぶ）く」とか難しいですよね。

安野　「紲」はこちらの字を使ったほうが、手かせや足かせのような、自分をその場から離れなくさせるものという意味合いが強くなるらしいです。そういうものですら愛おしく感じるような、離れ難い過去がある。そういう心の奥底を表現したいなと思って書いていったら、どんどん歌詞の世界に入りこんでいけました（笑）。

── じっくり味わいたい曲になったと思います。そしてラストに来るのがタイトル曲の「A piece of cake」。安野さんの作詞で、松本良喜さんの作曲・編曲です。ピアノとアコースティックギターによる、温かみのある曲になりましたね。

安野　アルバム最後の曲は短めの小品にしたいとお伝えして、松本良喜さんに書いていただきました。手のひらに収まるくらいの、かわいらしい曲になったと思います。

── 歌詞には、どんな思いを乗せましたか？

安野　私のイメージする「A piece of cake」は、やっぱりショートケーキなんですよね。誕生日とか人生の中のいろいろな節目に食べる、なじみのあるケーキについて歌う曲だから、誰にでもスッと入るようなやわらかくてやさしい日常の言葉を使いたいなと思いました。曲の終わりには「フゥー」というコーラスを3声くらい重ねていただいて、彩りを添えていただいて。さらにその後にローソクをフッと吹き消す音が入っているんです。この曲のメロディを使ったオーバーチュアが、ローソクの炎が揺らめいている感じがすると最初に言いましたが、それは最後のローソクのイメージがあったからかもしれません。

── 最後まで聴くと、1曲目につながるということですね。1枚を通して、どんなアルバムになったと感じていますか？

安野　人生のいろいろな瞬間に差し出せる、酸いも甘いも表現できたアルバムになったと思います。かわいいタイトルで心地よい曲が並ぶ中に、人生の機微を感じ取っていただけたらうれしいです。

── ありがとうございました。限定盤Aは特製BOX仕様になっていて、「ぱくぱくモンスター」ぬいぐるみマスコットが付いてきます。この「ぱくぱくモンスター」について教えてください。

安野　これは「おんなじキモチ。」のMVに登場したパペットを、手のひらサイズのぬいぐるみにしていただいたものです。MVを作ったときから、かわいいと思っていたので、アルバムを機会にグッズ化させていただきました。ぜひ、みなさんのお家に連れていってあげてください。

── ライブに持ってきてもらうというのも、ありですよね。

安野　もちろんです。そのための手のひらサイズです（笑）。

── ということで、5周年を記念してのライブツアーが決定しました。ちょっと先で来年2月から3月の開催なんですね。

安野　宮城、大阪、愛知、東京と4都市を回るツアーになります。実はソロライブを愛知で開催するのはこれが初めてですし、私の出身地の宮城でも、初の凱旋ライブになります。本当にうれしいです！　初めてのフルアルバム「A PIECE OF CAKE」をたずさえてのツアー、ぜひ楽しみにしていてください。

安野希世乃プロフィール

やすのきよの／7月9日生まれ。宮城県出身。
2017年7月26日に、1stミニアルバム「涙。」をリリースして、ソロとしての活動をスタート。2018年11月には2ndミニアルバム「笑顔。」、2019年9月には3rdミニアルバム「おかえり。」をリリース。
また、現在までアニメ主題歌を表題曲にした4枚のシングルをリリース。最新シングルは2021年10月リリースの「おんなじキモチ。」（TVアニメ「異世界食堂2」オープニングテーマ）。

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CDデータ

■1stフルアルバム「A PIECE OF CAKE」

※限定盤Aは初回生産のみの完全限定。特製BOX仕様。「ぱくぱくモンスター」ぬいぐるみマスコット付き
※限定盤Bは、Blu-ray安野希世乃「A PIECE OF CAKE」Music Video Collection付き。「晴れ模様」「フェリチータ」「おんなじキモチ。」のMVと、「世紀の祝祭」MV＆メイキング映像を収録

〈収録曲〉

01. Cut the cake ～overture～
02. 宇宙の法則
03. 世紀の祝祭
04. おんなじキモチ。
05. 晴れ模様
06. Bad Temptation
07. 波間に消えた夏
08. フェリチータ
09. エトセトラ
10. OUTな夜
11. 花時雨
12. echoes
13. A piece of cake

インフォメーション

●Kiyono Yasuno 5th Anniversary Live Tour 2023 ～It’s A PIECE OF CAKE！～

2023年2月11日(土・祝) 宮城・仙台GIGS
2023年2月19日(日) 大阪・Zepp Namba
2023年3月4日(土) 愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
2023年3月18日(土) 東京・中野サンプラザ

※チケット一般発売に先駆けて、アルバム「A PIECE OF CAKE」全形態にチケット先行抽選シリアルナンバーを封入
※封入シリアル受付期間：2022年7月27日(水)12:00 ～ 8月22日(月)18:00


（取材・文／鈴木隆詩）