2024春アニメ『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』鈴木寿広Pインタビュー! 「今回はファミリーだけでなく、全ての視聴者をターゲットに」

2024年04月06日 18:000

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2024年4月7日よりテレ東系列およびBSテレ東ほかにて放送がスタートする、TVアニメ『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』(以下、『シンカリオンCW』)。

TVアニメとしては『新幹線変形ロボ シンカリオン』(2018年1月6日〜2019年6月29日)、『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』(2021年4月9日〜2022年3月18日)に続く3作目。本作では、アニメーション制作にシグナル・エムディとProduction I.G、監督に駒屋健一郎さん、シリーズ構成に梅原英司さんと、これまでのシリーズ作品と布陣を一新。中学2年生の大成タイセイを主人公とした新たな物語が描かれる。

さらに、今回のシンカリオン(ロボット)は、大型トレーラーなどのエルダビークルとの「ビークル合体」やシンカリオン同士の「3両合体」があるなど、物語と同様にどんなシンカリオンの活躍が見られるかも注目だ。

 

 

『シンカリオンCW』はどのように生み出されたのか。シリーズ第1作からプロデューサーとして『シンカリオン』シリーズに携わってきた鈴木寿広さんを直撃し、制作体制のことや作品の見どころなどいろいろお話をうかがった。

 

鈴木寿広プロデューサー

世界観が繋がっていないからこそ、主人公はあえて中学生に

 

――『シンカリオンCW』はこれまでのシリーズから制作がシグナル・エムディとProduction I.Gに、監督も駒屋健一郎さんに変わりました。前作でも脚本を務めていた石橋大助さん(副シリーズ構成)以外ほぼ一新に近い体制ですが、このような座組みにした経緯を教えてください。

 

鈴木 大きな理由のひとつが、今作は“これまでの『シンカリオン』シリーズと世界観が違う”、ということです。イメージをそのまま引きずりたくなかったというか、これまでとは違う『シンカリオン』を目指したかったんです。

 

もうひとつの理由として、“ターゲットを広げる”こともあります。コロナ禍を経て、アニメの視聴環境・視聴習慣も変わり、子ども向けに作らなくても子どもが見ることができる環境になりました。それならば、子どもが見ても面白いし、もっと上の世代が見ても普通に面白い作品にしたかった。そのためには、脚本もビジュアル面も含めて今まで同じ制作メンバーでいいのか? と考え、思い切ってこういった座組にしました。別に今まで積み上げてきたものを捨てるわけではなく、割り切って一度切り離したんですね。そこは勇気のあるやり方だったかなと思います。

 

――制作がシグナル・エムディとProduction I.Gになったのは、どのような経緯で?

 

鈴木 理由はいろいろありますが、I.Gグループの作品に対するリスペクト、憧れがあって。彼らが作ってきたような作品を目指したい、一緒にやってみたいと思っていたところ、賛同いただいたのがシグナル・エムディさんとProduction I.Gさんでした。

  

――実際にやってみていかがですか?

 

鈴木 アニメに対する考え方も仕事の進め方も本当にしっかりとしていて、ものすごく信頼を持てる制作会社だなと思いました。

  

――駒屋監督の印象もお聞かせ下さい。

 

鈴木 シグナル・エムディさんとProduction I.Gさんからの推薦だったのですが、作品づくりが始まると熱い方で。シナリオ会議で意見を求められると的確に答えていらっしゃいましたし、いい制作チームを作っていただいていると思ってます。

 

 

――“ターゲットを広げる”に絡むかもしれませんが、驚いたのは主人公が小学生ではなく中学生であることです。キービジュアルも大人っぽいですし、なぜ中学生にしたのでしょうか?

 

鈴木 今までと同じ小学生のキャラクターにしちゃうと変化が作りにくく、小学生か中学生かで物語の進め方が全然変わってくると思うんです。中学生を主人公にした方がイメージするものを作りやすかった、というのが一番大きいです。

 

それに、小学生からみたら、中学生ってお兄ちゃん・お姉ちゃんになりますから、憧れも持てるでしょうし、中学生って大人になろうとしている時期でものすごく難しい年代ですよね。成長物語を描いていくうえで、中学生にしたほうがいろいろな可能性を感じました。

  

――「シンカリオン」を見て育った子どもたちに合わせる意味合いもあるのかなと思ったのですが。

 

鈴木 それはないですね。“今までの作品と世界が繋がっていない=ゼロから組み立てることができる”ので、あえて中学生にしたんです。高校生にする案もありましたが、高校生だとまた違う歩み方が出てきて今回の「シンカリオン」をやりにくいなと思い、中学生にしました。

  

――これまでは小学生じゃないとシンカリオンを動かすための「適合率」が低かったので、中学生で大丈夫なのかと思ったのですが、世界が繋がっていないからなのですね。

 

鈴木 はい。今までの設定を全て採用するわけではない、ということです。「適合率」も今作では「適性値」と言っていますし、いろいろな名称が微妙に変わっています。

  

――先ほどターゲットに言及されていましたが、改めて今作のターゲット層を言葉にすると、どうなりますか?

 

鈴木 「オールターゲット」です。……そう答えるのは、はっきり言って卑怯なんですよ(笑)。どこかに引っかかってくれればいいかな、って見方もできますからね。業界の人からも「オールターゲット」はズルいとよく言われます。

でも、本当にそうで、もともとやりたかったのは、「オールターゲット」のアニメなんです。新幹線を題材にしているから、単発的なアニメではなく未来永劫続くような作品・キャラクターにしていきたい、との思いで始めたのが『シンカリオン』ですから。子どもたちだけでなく、親御さんを含めたファミリーだけのものでもなく、オールターゲットに見てもらえるアニメにしたい。だから、今回はあえて「オールターゲット」と言っています。これまでTVアニメとしては2作品やってきて、次に目指すのはやっぱりそこだなと。

  

――子ども向けに作ると逆に子どもはハマらない、という話はよく聞きますね。

 

鈴木 そうですね。スマホを使っている子どももいますし、やっぱり情報量が違うんです。だから、子どもを馬鹿にしちゃいけないというか、あえて子ども向けに作る必要はないと、本当にここ数年感じていますね。

  

――難しい設定でも、子どもは理解しますからね。

 

鈴木 いまは未就学児が『鬼滅の刃』を見ますからね。深夜に放送されているアニメでも配信で見られますし、子どもに合わせる必要はないと思っています。むしろ、子どもが合わせてくれます。

  

――お父さんお母さんが子どもに聞きますからね。これはどういうことなのか、って。

 

鈴木 そういう親子の会話にも繋がってもらえたらいいなと思います。

 

見どころは新たな合体! 新型車両が登場するかも楽しみにしてもらいたい

 

――『シンカリオン』と言えば、やはりロボットや合体も楽しみです。すでに「ビークル合体」や「3両合体」は発表されていますが、どのように考えたのか教えて下さい。

 

鈴木 シンカリオンのデザインも、なにと合体するのかも、毎回なかなか決まらない部分です。タイトルが「シンカリオン」なので、もちろん「シンカリオン」のデザインが看板になるわけですけど、難しいんですよ。プラレールもありますし。玩具ってすごくて、毎回技術が進歩しているから、できることがどんどん広がっているんですね。

 

いろいろ考えた結果、今作はこうした乗り物(ビークル)と合体する形になりました。ただ、ここに行き着くまではいくつものアイディアがあり、「第1期に戻って(合体せずに)素の新幹線だけでいくのがいいのでは?」といった案も出ましたが、やはり違いを出すためには「なんらかの合体は必要だよね」となったんです。ビークルと合体させることで、デザインが全然変わって違いを生み出せましたから、それで進めていった感じですね。

 

――E7かがやきのドリル装備とか、パッと見ただけでも熱いですからね。

 

鈴木 そうなんですよ。シルエットが変わるのは大きいですよね。エルダドリルと合体してドリルがつくことで、E7かがやきがあそこまで変わるとは正直思っていなかったです。

  

――シルエットだけでなく映像としての演出も期待していいですよね?

 

鈴木 もちろんです。『シンカリオン』シリーズはロボットのアクションアニメですから、そこはひとつの見せどころですし。今までとは違う武器も楽しみにしてもらいたいなと思います。

 

 

――ちなみに、プラレールはすでに発売されていますが、反響はいかがですか?

 

鈴木 とてもいいですね。デザイン面で評価されている部分が結構あって、狙い通りといったらおこがましいですが、良かったなと思います。

 

 

――「ビークル合体」や「3両合体」だけでなく、物語が進めばほかにもありそうですね。

 

鈴木 これだけだったら、物語が終わっちゃいますからね(笑)。まだまだいろいろと出てきますので、楽しみにしていてください。

 

 

――いま言える範囲で、どういうところを期待して欲しいか教えて下さい。

 

鈴木 過去に登場したブラックシンカリオンもそうでしたが、敵としてどういうシンカリオンが出てくるのか期待してもらいたいです。

  

――『シンカリオン』シリーズは毎回コラボも話題になりますが、今作でもやる予定はあるのでしょうか?

 

鈴木 アニメ本編に関していえば、今回はコラボについては積極的に考えていません。宣伝のためになんらかのコラボをすることはあるかもしれませんが。

 

最初の『エヴァンゲリオン』のコラボは、やっぱりオリジナルのアニメですからいろいろなフックを作りたくて始めたんです。そうしたらあそこまでハマり、ひとつの『シンカリオン』のカラーにもなったので、それはそれでいいかなと思って続けてきました。でも、今回はコラボの力を借りずに、作品そのものの魅力で観ていただけるようにしたいと思っています。

 

『シンカリオン』は身近なヒーローだからこそ、“距離感”を大事にしています

 

――中学生が主人公ということで、物語の色も違ってくると思います。今回どのような物語になっていくのか見どころをお聞かせ下さい。

 

鈴木 これまでと同様に、成長ストーリーであることは間違いないです。主人公のタイセイがほかのキャラクターとどう絡んで成長していくのか、そのあたりは結構深く描かれていきます。

 

最初に思い描いていたのは「作品を見ていただく中で、衝撃を与えるようななにかが作れたらいいな」ということです。衝撃がどういうことなのかはまだ言えませんが、単純に成長していく話でもないですので、そうしたところも楽しんでもらえたらと思います。

  

――公式サイトの石橋さん(副シリーズ構成)のコメントの中に「シンカリオンらしさを意識しつつ」とありますが、鈴木さんは「シンカリオンらしさ」とはどのようなものだと考えていますか?

 

鈴木 言葉にするのはなかなか難しいですよね。「シンカリオンらしさ」を形作ったのは、やっぱり1作目だったと思うんです。ただ、あれが「シンカリオンらしさ」の全てではなく、もっと根っこにあると思っていて。新幹線が変形するアニメなので、「新幹線のロボットのアニメだよね」ってよく言われますけど、決してそれだけのアニメだと思っていない部分もあるんです。物語やキャラクターも含めて、どれだけ熱く作っていくか。そういった部分も「シンカリオン」には必要ですから。今作は制作メンバーが大きく変わりましたけど、肌感で理解されている方が揃いましたので、それをみんなで共有しながらできたと思います。

  

――肌感で理解するのも大切ですよね。

 

鈴木 そうですね。毎回『シンカリオン』は作り始めるときに、蓋を開けてみないと正しい方向に進むのかわからないんですよ。それでいくと今回もいいチームになったと思います。

 

 

――では、『シンカリオン』に関わらず、アニメを作るときに大切にしていることを教えて下さい。

 

鈴木 作品や原作の有無によって違うんでしょうけど、技術的なことで言えば、アバン・Aパート・Bパートとある中で、それぞれに見どころを作りたいと思っています。見どころといっても、笑わせる内容なのか泣かせる内容なのか、『シンカリオン』なら変形シーンのような見せる部分なのか……などいろいろありますよね。いずれにしても、各パートで見どころを作りたい。「その見どころはどう作るのか」「この話数のこの場面にはどんなものがあればいいか」と逆算して考えていくんです。そこは意識しながらやっていますね。

 

それに、年齢関係なく視聴者の皆さんは作り手が思っている以上にレベルが高い、ということはすごく意識しています。『シンカリオン』シリーズはオリジナル作品ですから、特に意識しているところですね。

 

 

――『シンカリオン』を作るうえでのルールといいますか、これはやらないようにしていることはあるのですか?

 

鈴木 「シンカリオン」って身近なヒーローなんですよ。存在的には実際の新幹線と一緒で。だから、“距離感”をすごく大事にしています。通常はロボットって視聴者からすると決して身近な存在ではないですよね。でも、「シンカリオン」は新幹線が変形しますから、近からず遠からず普段の自分の目線の少し上にいるような、ちょっと憧れのヒーロー。その“距離感”をすごく大事にしています。

  

――鉄道博物館にいけば基地があるんじゃないかとか、日常生活と接続している感じがありますよね。

 

鈴木 そうなんです。日常の延長線上に描ける夢でもありますから、新幹線は。なので「シンカリオン」もそう。

  

――鉄道はやっぱり夢が走るところみたいなところがありますよね。

 

鈴木 鉄道が好きな方には、乗り鉄や撮り鉄だけでなくプラレール鉄もいるらしいんです。それぞれでどういうところに夢を描くのか、ぜんぜん違うんですよ。でも、『シンカリオン』はそれらを全て拾っていかなければいけない。もちろん、鉄道好きな方じゃないと見られないアニメではないですから、そうじゃない方も夢を描けるように作っています。そこが難しいところですが、楽しみにしてもらいたいです。


(取材・文/千葉研一) 

作品情報

■シンカリオン チェンジ ザ ワールド
<放送情報>
2024 年 4 月からテレ東系列にて放送決定

<スタッフ>
監督 : 駒屋 健一郎
シリーズ構成 : 梅原 英司
副シリーズ構成 : 石橋 大助
キャラクターデザイン : 朝香 栞、森田 二惟奈
メカニックデザイン : 桐 敷晃
音響監督 : 三間 雅文
音楽 : 菅野 祐悟
アニメーション制作 : シグナル・エムディ/Production I.G
CG アニメーション制作 : SMDE
制作 : 小学館集英社プロダクション

<キャスト>
大成 タイセイ : 石橋 陽彩
フォールデン アカネ : 小野 賢章
九頭竜 リョータ : 土屋 神葉
ビーナ : 集貝 はな
青梅 マイ : 本渡 楓
高輪 カドミチ : 小林 親弘
大成 イナ : 喜多村 英梨


©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/ERDA・TX

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シンカリオン チェンジ ザ ワールド

シンカリオン チェンジ ザ ワールド

放送日: 2024年4月7日~   制作会社: Signal-MD/プロダクションI.G
キャスト: 石橋陽彩、小野賢章、土屋神葉、集貝はな、本渡楓、小林親弘、喜多村英梨、村井雄治、渡辺紘、石井未紗、田中正彦、斉藤次郎、藤原夏海、田澤茉純
(C) プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/ERDA

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