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原作アニメのメリットと、オリジナル企画の意味
南 スタジオが増えたキッカケのひとつは、「鋼の錬金術師」(2003年)です。ボンズのプロデューサーの大薮芳広とキャラクターデザイナーの伊藤嘉之くんが、「この漫画は面白いから、アニメ化用の企画書をつくりたい」と言ってきたんです。別件で付き合いのあったエニックス(当時)の倉重宣之さんに相談してみたら、「ボンズがアニメ化してくれるのであればぜひお願いしたい」と言っていただけました。とんとん拍子に、全国ネットの放送枠まで決まってしまったんです。その頃は「スクラップド・プリンセス」(2003年)と「WOLF'S RAIN」(2003年)の2ラインが走っていたので、AスタジオとBスタジオは埋まっていました。それで、「鋼の錬金術師」のためにCスタジオをつくったわけです。ちなみに、Dスタジオは「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」(2009年)のためにつくりました。ですから、この20年間、流れに任せるままにスタジオが増えてきたんです。
── Eスタジオは、いつつくったのですか? 南 「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション」(2017年)のときです。劇場用アニメ三部作の企画なので、トータルで4~5年はかかってしまいます。A~Dスタジオは、TVシリーズをつくるためのスタジオなんです。そこへ劇場アニメのラインを割りこませることはできないので、新しくスタジオをつくりました。それで現在、5つのスタジオがあります。
── 会社としては、スタジオは少ないほうがいいのでしょうか? 南 Cスタジオができたときは、よかったと思いました。1年間続くアニメならいいのですが、最近は1クールが多いじゃないですか。2ラインを同時に動かしていくと、スタッフが疲弊してしまうんです。途中、少しずつ間を空けながらラインを回していこうとすると、スタジオ2つでは効率が悪いんです。ですから、どうしても3ラインは必要。Cスタジオができたのはたまたまだったけど、結果としては助かりました。
── 原作モノであっても、やってよかったと思いますか? 南 もちろんです。僕自身はオリジナルをやりたくてボンズをつくったわけですけど、原作モノはドラマや絵面が、あらかじめわかっているわけですよね。すると、自分たちがどんな作品をつくろうとしているのか把握できて、若手スタッフや新人の制作にとっては学ぶところが大きい。だから、原作モノとオリジナルの両方をやったほうがいいんです。
── ボンズのオリジナル作品は多数ありますが、「ストレンヂア 無皇刃譚」(2007年)が印象に残っています。 南 ボンズには、アクションの好きなクリエイターたちが集まっています。彼らを思いきり暴れさせる企画があってもいいだろうと思って、監督の安藤真裕に「何かやりたい企画ある?」と聞いてみたんです。彼も、アクションの得意なアニメーターですから。すると、「チャンバラをやりたい」。チャンバラといっても、いろいろありますよね。妖怪や怪物と戦うチャンバラもありますけど、そういう要素をちょっと入れただけで、かなりファンタジー寄りになってしまう。そのほうがビジネス的な数字が見えやすいんですけど、今回は思い切り真っ当なチャンバラ映画にしました。脚本に高山文彦さんを呼んだところ、初稿では女性キャラクターがひとりもいなくて。
── だけど、男性キャラが多いおかげで、女性ファンに喜ばれたと聞きました。 南 ええ、自分が思っていたより女性が見てくれました。玄人好みの作品なので、男性も見てくれています。海外では、いまだに評価の高い作品です。「ストレンヂア」のような作品をつくると、ボンズというプロダクションのブランド力が上がるんです。今でこそ「鋼の錬金術師」や「僕のヒーローアカデミア」(2016年)が有名ですが、それらの作品をつくれたベースには、やはりオリジナル作品があると思います。
先日、「WOLF'S RAIN」を見なおしていたら、ほかでは見ないようなテイストで、よくできてるんですよ。川元利浩はもちろん、岡村天斎や信本敬子、才能あるクリエイターが集まっているおかげでもあります。やっぱり、オリジナル作品はボンズに欠かせないと、あらためて思いました。
── 南さんのオリジナル志向は、いつ頃から始まったのでしょう? 南 サンライズに入社した最初からです。サンライズ時代に「天空のエスカフローネ」をつくって、「カウボーイビバップ」をつくって……。だけど、「ビバップ」は「ターゲットがはっきりしない割に、予算がかかりすぎる」と怒られもしたんです。その頃は、海外のマーケットがはっきり見えていなかったせいもあると思います。キッズ向けアニメはマーチャンダイジングと一緒に海外で売られていましたが、ハイターゲットに向けて映像パッケージを売るビジネスの流れは、「ビバップ」が最初でしょうね。