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「日本はもう終わりだよ」、その発言の裏に隠されたもの
── 「ULTRAMAN」のモーションキャプチャー作業が続いていますが、シナリオは原作どおりに進んでいるのでしょうか? 神山 最初は1話完結スタイルでシリーズ構成したらどうでしょう、と提案したのですが、原作どおりに進めてほしいというオーダーが返ってきました。ところが、漫画だと気にならない部分が、時間軸のある映像にするとすごく気になってくるんです。だから、なるべくセリフは原作のまま、意味をまったく変えている部分もあります。
荒牧 気がつかない人は「なんだ、原作そのままじゃないか」と思ってしまうでしょうね。ひとつの要素を足すことによって、1周して、原作のセリフが別の意味になっていたりするんですけど。
神山 原作を尊重しつつ、アニメならではの面白さが出ているはずです。今までそういうシナリオのつくり方はしたことがなかったけれど、やってみたら意外とおいしいじゃん、と思って。
荒牧 シナリオ打ちが終わって、「やった終わった!」とみんなで喜んでいると、神山さんが新しいアイデアをぶっこんでくる(笑)。最初は「原作に忠実」が縛りだったんだけど、原作どおりでありながら別の意味を持たせることが、だんだん面白くなっていったんですよね。
── 神山監督と荒牧監督は、机を背中合わせにして仕事されているそうですが、いつもどんな話をされているんですか? 神山 週明けは休みの間に見た映画の話、あとは時事ネタですね。「攻殻機動隊」のシナリオも練っているから、どうしても時事ネタには敏感になります。
── 荒牧監督によると、「日本はもう終わりだよ」が神山監督の口癖だそうですが……。 神山 シナリオの打ち合わせのたび、3回は言ってますね。「アニメつくってる場合じゃない」とか(笑)。
荒牧 「もう、日本を脱出しよう」とか(笑)。
神山 やっぱり少子化のニュースを聞くと「日本はもう終わりかな」と思ってしまいます。だけど、それは「どうすれば日本を救えるか」の裏返しでもあるんです。「では、その問題を解決するためには何が必要なのだろうか」というアプローチで作品をつくっているので、なにか新しいヒントが出てこないものか……と思って、脚本家や荒牧さんに投げかけてるつもりなんですけどね(笑)。
荒牧 たとえば、「ネットによって監視社会になりつつあるよ、やばいよ」と神山さんが言いますよね。「でも、若いやつって他人に見られてないと不安なんじゃないですか?」と僕から切り返すような感じですね。
神山 もしかすると、監視社会をよしとしている人のほうが多数派なのかもしれない。すると、20年後には保守もリベラルも意識が変化している可能性があるから、従来とはキャラクター像を変えてみようとか、思想犯の質も変化しているんじゃないかとか。そういうひっくり返した視点は、僕ひとりで悩んでいても出てきませんからね。
荒牧 だけど、若い脚本家からすれば「監督たちがなぜ議論しているのか、そこからして理解できません」って感じなのかもしれない(笑)。まあ、それも含めて新しい制作環境をつくっていきたいですね。
(取材・文/廣田恵介)