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モーションキャプチャーの収録作業で気づかされる、いくつかの利点
── 荒牧監督から神山監督に期待するところは、どこだったのですか? 荒牧 ずっと監督をやってきましたが、シナリオ開発の答えを見出せないまま来てしまった感じがありました。ですから、神山さんのシナリオに対する考え方や方法論を間近で学ばせてもらいたいという気持ちがありました。それにプラスして、モーションキャプチャーという方法に神山さんは必ず興味を持つだろう、という確信もあったんです。
── 神山監督の「009 RE:CYBORG」と「CYBORG009 CALL OF JUSTICE」はモーションキャプチャーではなく、手付けのCGアニメでしたね。 神山 両作品ともアニメーターによる手付けで、すぐれた部分を認めながらも限界を感じてもいました。というのは、打ち合わせをした後、アニメーターから完成映像が上がってくるまでのタイムラグが長すぎるんです。
荒牧 手付けのCGアニメだと、「本当にこれでうまくいくんだろうか?」と不安になる時間が長いんですよね。
神山 2D作画ならレイアウト段階でチェックできるし、多少の修正もできるんですが、手付けの3Dアニメは2Dよりも時間がかかるんです。上がってきた映像を見て、さらにアニメーターに説明して直してもらわなくてはいけない。かゆいところに手が届かないというか、レスポンスが悪すぎるんです。そこへ、モーションキャプチャーでアニメづくりをしてきた荒牧さんからの声がかかったわけです。果たして、モーションキャプチャーを使った方法を“アニメーション”と呼ぶのかどうかの議論もあるだろうけど……。
荒牧 そうそう。この技法をアニメーションと呼ぶかどうかにこだわりを持ちすぎると、モーションキャプチャーを使った3Dアニメはできないんです。
神山 同感ですね。僕はアニメーションをつくりたいという動機が強いし、モーションキャプチャーを使っても、結局はアニメのつくり方になるんですよ。だけど、モーションキャプチャーの場合は俳優に指示を出すというファクターが加わるので、「演出している」感覚がとても強いんです。
── 「ULTRAMAN」でのモーションキャプチャーの収録を見学させてもらいましたが、俳優さんのアドリブはあるし、神山監督と荒牧監督がその場でカット割を変更したり、自由な雰囲気でしたね。 神山 その場で即座にレスポンスが返ってくるんですよ。俳優に対する演出と、それを元にしてアニメーターたちとじっくり絵づくりしていく両方の演出があって、とても楽しく仕事しています。僕はシナリオ主義ではあるんだけど、今回は俳優さんからのフィードバックに助けられています。
荒牧 モーションキャプチャーの収録前に本読みをやって、「この流れでこのセリフは不自然でしょう」など、俳優さんたちからも多くの意見をもらって、それをシナリオに反映させていくんです。
神山 本読みの段階で僕らも気づかされることがあって、生っぽい雰囲気が生まれていく。その過程がすごく面白いんです。荒牧さんがこのスタイルを確立するまでに、きっと苦労されたと思いますけど……。
荒牧 どちらかというと、自分は人間ドラマが得意じゃないタイプだったんです。だけど、生身の俳優さんに演じてもらうことで客観的になれるし、「ドラマって面白いんだな」と気づくことができたんです。
神山 すごくよくわかります。
荒牧 だったら、もっとこの方法を面白がってくれそうな監督が参加すれば、作品ももっと面白くなるだろうな、と思って神山さんを誘ったんです。