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アニメの製作現場を「3K」にしたくない。
──その後、制作会社A-1 Picturesの社長にもなったんですよね?
植田 実質的にA-1がスタートしたのは、2006年でした。僕がアニプッレクスに入ったころから「制作会社もつくろうと思うんです」と、社長から聞いてはいたんです。「いいことじゃないですか。でも、僕はやりませんよ」と答えました。だって、せっかくメーカーに入ったのに、どうして、また現場に戻らなきゃいけないんですか(笑)。だけど、A-1 Picturesをつくること自体は、業界に本気度を示すことにもなるし、いいことだと思ったのは確かです。「アニメが儲かりそうだからちょっと手を出して、損しそうなら引き返すつもりだろう?」と思われるのが癪だと、当時の社長はおっしゃっていました。どうせ制作会社をつくるなら3K(きつい、汚い、危険)な職場にはしないという理念にも、共感しました。
──植田さん自身、専門学校で開いたセミナーで、「アニメの現場を3Kにしたくない」とおっしゃっていましたね。
植田 ええ、今でもそう思っています。A-1では進行車(制作進行が、素材を回収するのに使う社用車)を持つのをやめて、素材の回収は、業者に任せるようにしたんです。疲れきった制作進行が、車で事故を起こしたら、アニメ業界のイメージが落ちてしまう。 そのとき、「進行車のないスタジオが、アニメを制作できるわけない」と言われましたが、では、A-1のつくった作品がボロボロの出来で、ヒットしてないんですか? そんなことはないわけです。僕は現場出身の人間だから、構造的な問題点も見据えながら、経営のことを考えましたが、それでA-1は大きな赤字にはなっていない。社長になって、コストも踏まえ、まっさきに他のスタジオに進行車をやめてみるよう、薦めました。できるところから現場を変えていかないと、庵野秀明さんの発言じゃないけど、それこそ2年後に業界がなくなりかねないです。
──2010年にA-1 Picturesの社長、2014年にアニプレックスの社長、2016年に会長になりましたね。その間、どういうことを考えてきましたか?
植田 自分の中に、いくつかキーワードがあります。海外・デジタル・オリジナルの3つです。どの立場でも、その3つを念頭においてきました。海外での状況はとても厳しいのですが、あえてドイツとフランスにアニプレックスの関連会社をつくり、自らファンと直接コンタクトできるようにしました。デジタル分野では「Fate/Grand Order」というアプリゲームに挑戦し、大ヒットを飛ばすこともできました。
──では、そろそろ「アニメ100周年プロジェクト」について、聞かせてください。