アニメ業界ウォッチング第22回:“キャラクター”として認めてもらえるCGメカを作る、動かす! オレンジ代表・井野元英二インタビュー!

2016年06月25日 12:000

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

初めて“キャラクター”として認めてもらえたタチコマ


──オレンジのCGは、トゥーンシェイド(セル画のように輪郭線を入れる処理)が主体ですね。

井野元 原則的に、すべてトゥーンシェイドです。「ゾイド」以前はトゥーンではないCGがアニメで使われていましたが、「違和感がある」ということで、風当たりは強かったと思います。 ですが、「攻殻機動隊」でタチコマを作ったとき、初めて「よかった」と言ってもらえたんです。つまり、視聴者がタチコマに感情移入してくれた。作画だろうとCGだろうと関係なく、物語世界のひとりのキャラクターとして認めてもらえたわけですね。タチコマ以来、視聴者の視点に立って、視聴者が何を求めているのか意識しながら作る――そのスタンスは、ずっと変わっていません。ブレていないはずです。

──今年、「コードギアス 亡国のアキト」が完結しました。後半にいくに従って、どんどん情報量が増えていった感じがしましたが?

井野元 赤根和樹監督は、「前回と同じことはやりたくない」タイプの方なので、要素を足していった結果、情報量が増えたところはあるでしょうね。 アニメのロボットの見せ方に関しては、どんどん形式化してきていると思うんです。大張正巳さんのようなスーパーロボット的な見せ方ですとか、ミサイル発射だったら板野一郎さんの真似をすれば、確かに喜ばれはするんですけど、様式化されすぎて歌舞伎のような世界になってしまっている。そこで「自分だったら、どうするだろう?」と考えるわけです。自分は、タチコマを3年半も動かしてきた人間です。普通の人は、4足歩行のロボットに何年間も動かすなんてあり得ないわけで、それは自分だけの体験なんです。「アキト」に出てくるロボットは4足歩行という点では、タチコマの延長線上にあります。 「アキト」も最初のころは自分も動かしていましたが、後半は若いスタッフに任せています。僕の経験をうまく噛み砕いて、スタッフが自分たちのスキルで作り上げてくれたのが「アキト」最終章です。


──「アキト」のロボットの動きは、リアリティとも、また違うんですよね。

井野元 「マクロスF」(2008年)のとき、「マクロスなんだから、とにかく速く動かせばいいんだろう」というムードがあったのですが、目で追いきれないほど速くしてしまうと、視聴者は拒絶反応を示すようです。その経験があったので、口をすっぱくして「これ以上、速くし動かしてはいかん」とスタッフを抑えながら、一番気持ちいい動きはどのあたりなのか――そのバランスや落としどころを「アキト」では探っていきました。 もうひとつ、作画パートとなじませることを考えるだけでなく、金属だったら金属らしい質感を入れる。嫌味のない程度に、CGにしかできない表現も積極的に入れていく。何でもかんでも、トゥーンシェーダーでペタッとなじませず、CGならではの可能性を探ってもいいんじゃないか……と思って作ったのが「アキト」ですね。 それと、ロボットではなく「アキト」として見てほしい。ロボットが傷ついたら「アキト、大丈夫かな?」と心配になるような人間的な存在にしたい、と思って作りました。



視聴者がCGに抵抗感がなくなった理由


──仕事としては、やはりロボットが多いのですか?

井野元 それが、ここ2~3年はキャラクターが増えてきているんです。現在は、6割ぐらいがキャラクターでしょう。そうは言っても、体にメカの付いているキャラクター、メカっぽいキャラクターも多いですけどね。「基本は作画で、戦闘シーンだけCGキャラクターにしたい」というオーダーの延長線上で、キャラクターを作っている感じです。最近は、作画でアクションの描ける人を確保するのが難しいのかもしれません。

──「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-」(2016年)は、オレンジさんがCGを担当されていますね。


井野元 「アクティヴレイド」は、CGのスーツを着たまま日常芝居をするようなシーンも多いので、カット数が増えて大変なんです(笑)。……ここ最近、つくづく思いますけど、最近はCGのカットが、どんどん増えていくんです。予算は昔と同じなのに、カット数だけが増えていく。それでは対応しきれないので、そろそろ何か手を打たないといけませんね。クライアント側に「CGなら楽だろう」「簡単に作れるだろう」という誤解があるとも思います。

──アニメにCGが導入されはじめた90年代末期に比べると、視聴者側には、もはやCGに抵抗感がなくなっているように思います。その理由は何でしょう?

井野元 古い世代よりも、新しい世代が増加しているからではないでしょうか。アニメーションと一緒に育って、「作画でなくちゃ絶対にイヤだ」という世代は45歳以上だと思うんですよ。その世代は、だんだんアニメを見なくなるし、ソフトも買わなくなっていく。新しい世代はゲームで育っていますから、子供のころにゲームで親しんだCGがアニメに入ってきても、それほど違和感をおぼえなくなってきている。そうした世代間ギャップは、確実にあるでしょうね。 ですから、見る側もCGに抵抗感がなくなってきているし、作り手側としても「CGにはもっと可能性があるんじゃないか?」という空気を感じています。それに答えられる体制を目下、準備しているところです。具体的には、3年前には会社にいなかったプロデューサーや制作、事務職を雇い入れています。事務すらいなかったんですよ、3年前は(笑)。また、デジタル作画やデジタル美術のできるスタッフも集めました。美術さんもモデリングを覚えて、自分で描いて自分で動かすことができるようになれば、仕事のクオリティがアップしますから。

──そうした新しいスタッフを増やして、丸ごと1本、CGで作品をつくろうという動きは?

井野元 テレビか劇場かはさておき、いま一生懸命、作っているところです。いつ見せられるかというと、少なくとも今年ではないですね(笑)。うまく形になればいいんですけど、作っていて、とても楽しいですよ。



(取材・文/廣田恵介)

画像一覧

関連作品

ゾイド -ZOIDS-

ゾイド -ZOIDS-

放送日: 1999年9月4日~2000年12月23日   制作会社: ジーベック
キャスト: 岸尾だいすけ、大本眞基子、鈴木琢磨、藤原啓治、渡辺久美子
(C) 1983-2006 TOMY (C) ShoPro

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX

放送日: 2002年10月1日~2003年11月30日   制作会社: プロダクションI.G
キャスト: 田中敦子、阪脩、大塚明夫、山寺宏一、仲野裕、大川透、小野塚貴志、山口太郎、玉川砂記子
(C) 士郎正宗・Production I.G / 講談社・攻殻機動隊製作委員会

攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG

攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG

放送日: 2004年1月~2005年1月   制作会社: プロダクションI.G
(C) 士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

コードギアス 亡国のアキト 最終章「愛シキモノタチヘ」

コードギアス 亡国のアキト 最終章「愛シキモノタチヘ」

上映開始日: 2016年2月6日   制作会社: サンライズ
キャスト: 入野自由、坂本真綾、日野聡、松岡禎丞、日笠陽子、藤原啓治、茅野愛衣、甲斐田裕子、川田紳司、森久保祥太郎、石塚運昇、寺島拓篤、伊瀬茉莉也、松風雅也、工藤晴香、櫻井孝宏、福山潤
(C) SUNRISE/PROJECT G-AKITO Character Design (C) 2006-2011 CLAMP・ST

アクティヴレイド -機動強襲室第八係-

アクティヴレイド -機動強襲室第八係-

放送日: 2016年1月7日~2016年3月24日   制作会社: プロダクションアイムズ
キャスト: 島﨑信長、櫻井孝宏、小澤亜李、石上静香、倉田雅世、村田太志、相坂優歌、花江夏樹、大川透、大西沙織、鳥海浩輔、緑川光、大原さやか、山下大輝
(C) 創通・フィールズ・フライングドッグ/ACTIVERAID PARTNERS

アクティヴレイド -機動強襲室第八係-2nd

アクティヴレイド -機動強襲室第八係-2nd

放送日: 2016年7月10日~2016年9月25日   制作会社: プロダクションアイムズ
キャスト: 島﨑信長、櫻井孝宏、小澤亜李、石上静香、倉田雅世、大川透、鳥海浩輔、大西沙織、花江夏樹、緑川光、大原さやか、相坂優歌、黒沢ともよ、田村ゆかり、田中あいみ、新井里美、速水奨
(C) 創通・フィールズ・フライングドッグ/ACTIVERAID PARTNERS

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連記事