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最終回では、再びフィルムスコアリングをやっています
── その後の話数でも、クラスタごとに多彩な曲が用意されています。 藤澤 お色気の曲があったり、神秘的な曲があったり、高貴を気取った曲があったり、本当にいろいろなことをやりましたね。
── 第1話から第3話まで毎回使われたコミカルな曲があります。山口さんのメニューでは「とんずらダンス」というタイトルが付けられている曲です。 藤澤 「とんずらダンス」はその名の通り、逃げる人の悲喜こもごもをコミカルに描いた曲です。「お祭りのお囃子(はやし)みたいな感じがいいよね」という意見が楽曲の打ち合わせで出て、そのままやると逃げる人の曲にはならないので、いろいろな要素を加えました。リズムは日本の祭り囃子なんですけど、音階はアラビアンで、フルートを和笛っぽく吹いてもらったり、中東やブラジルの楽器を入れたりしています。
── 世界各地の要素が盛り盛りですね。 藤澤 ディジュリドゥというオーストラリアのアボリジニが使う民族楽器があるんですけど、そのサンプル音源も使ったりと、本当に世界中の音が盛り込まれています。そうすることで、よくわからない感じが出ればいいかなと。
── そういうごちゃ混ぜ感は、「エスタブライフ グレイトエスケープ」の世界観そのものですね。 藤澤 そうですね。クラスタという独自の文化と常識を持った街が点在していて、その中には普通の人間もいれば、魔法使いも獣人もロボットもスライム人間もいて。作曲するにあたっても、まずは自分の先入観を取っ払う必要がありました。こういう曲調だからこういう楽器を使うという音楽的な常識にとらわれず、なんでも入れていいんじゃないかと思いながら、作っていきました。
── 物語の展開を知らないまま、クライマックス用の曲も聴かせていただきました。シリアスな曲が多く、大変な事態が待っているのだろうなと思いました。 藤澤 クライマックスには必然的にエクアたちが追いつめられる展開があるので、そこに付けた曲がまずあります。深刻な状況ではあるんですけど、あまり重たくなり過ぎないように意識して作曲しました。ピンチの中でエクアたちの感情がうねって、ぶつかり合っている様子を音楽でも表したかったんですけど、絶望感を出したくはなかったんです。
── どんな展開が待っているのか、楽しみです。そして最終回では、再びフィルムスコアリングによって書かれた長い楽曲が使われる、という。 藤澤 第1話のアバンに比べて、かなり長いんです。でも、ここでもメインテーマを使うというコンセプトがあったので、うまく映像にはめることができたと思います。
── TVアニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ」の劇伴について、最後に総括していただけますか? 藤澤 劇伴の仕事として、いろいろなことができたので、すごく面白かったですね。僕はもともとロックやジャズが好きで、音楽の仕事をスタートさせたので、自分の根本にあるものを、今仕事としてどう出すかということにも挑戦できましたし、東京23区内という狭い世界を舞台にしつつ、そんな狭い地域にまったく別の文化と社会通念を持ったクラスタが点在しているという、音楽で表現するのは難しい作品だったんですけど、その分、作る楽しさがありました。発注メニューを見ていても「この曲の次はこれ? えー?」という驚きがあって、ちょっと言葉は悪いんですけど退屈しなかったですね。
── 今日はありがとうございました。ゲーム「エスタブライフ ユニティメモリーズ」の音楽も、楽しみにしています。 藤澤 ゲームはゲームでまったく違う音楽になっているので、よろしくお願いします。
藤澤慶昌プロフィール
ふじさわよしあき/1981年9月12日生まれ。福岡県出身。
作曲家。劇伴を手がけた主な作品に「有頂天家族」、「ラブライブ!」シリーズ、「宝石の国」、「宇宙よりも遠い場所」、「スロウスタート」、「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~」、「セブンナイツレボリューション -英雄の継承者-」など。アーティストへの楽曲提供も多数。
作品情報
■TVアニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ」
フジテレビ「+Ultra」ほかで放送中/FODにて先行独占配信中・1週間見逃し配信中!
(取材・文/鈴木隆詩)
(C) SSF/エスタブライフ製作委員会