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「教える」「教わる」ということ、そして、この10年間で得た理想的な仕事のしかた
── 2010年代の本橋さんの仕事を見ていると、劇場版「名探偵コナン」シリーズや「それいけ!アンパンマン」でも原画を描いていますね。 本橋 そうです。何も自分のキャラクターデザインでなくても、進んで原画を描くようになりました。今までの経験を生かして、いろいろと描き方を思い出しながら、試しつつ描くのが楽しい。アニメーターにとって、絵柄はあまり関係ないんだと感じました。
── いっぽうで、神戸芸術工科大学の映像表現学科の学科主任/教授という顔もお持ちですが? 本橋 映像表現学科の件は、神村幸子さんに頼まれました。とても断ることはできませんでした。やっぱり僕は、そういう時代の人間なんでしょうね。だけど、大学の仕事はとても大変で、月に半分ぐらいの時間をもっていかれてしまいます。ですから、スタジオでは新人の指導を断って、僕のわがままで弟子をとらない形にさせてもらいました。その分、自分の原画を多く描かせてもらっています。
── アニメーターを長く続けるコツは、何でしょう? 本橋 長く……というより、“現場を切り抜けるコツ”は、知らないものを実直に勉強する姿勢でしょうね。「こんなの、自分にはできない」と思っていたものでも描けてしまうのは、過去の経験があるおかげです。作品の見せ場を考えられるのも経験があるからですし、経験は何よりも強い武器です。「ベルサイユのばら」(1979年)で水鳥が飛び立つ原画を任されたとき、「水鳥の飛び方なんて知りません」と言ったら、「知らないじゃないだろう!」と、荒木さんに怒鳴られました。わからないことは自分で調べろ、ということです。そこで初めて、図書館に足を運びました。さらにスタジオのみんなが帰宅した後、いろんな人の原画を手でトレスして描き方をこっそり覚えたりもしました。手が覚えると、描けるようになるんです。
レイアウトについては、荒木さんに出崎統さんを紹介していただき、当時の東京ムービーに通って教えてもらいました。だけど、約束の時間に行っても、不在だったりします。そこで帰るようじゃあ、ダメなんです。じっと待っていると「よし、待ってたな」と教えてもらえる。また別の方からは、「望月三起也という漫画家の絵を参考にしてみたら」とだけ教えてもらったこともあります。そのひと言だけを手がかりに「ワイルド7」を全巻買ってきて、あとは独学で勉強するんです。人前で原画を破かれたこともありますし、あの時代に「教わる」とはどういうことなのか、身をもって実感させられました。今でも、何かわからないことがあれば図書館へ行って、ひとりで資料を探します。
── 最近の若いアニメーターは、どうですか? 本橋 この10年で、もがいてようやく理想的な自分の仕事ができるようになりました。今の時代に僕が生きていく場所は、まさにここにある……と感じています。なので、若いアニメーターの人たちには、もっとがむしゃらになって欲しいと思います。年寄りがアニメーションを支えているなんて言わせずに、自分たちがアニメーションを引っ張っていくつもりで、がんばっていきましょう。
僕なんて目は老眼で見えないし、手は曲がっているし、もうボロボロですよ。でもそんな自分もまだまだがんばっていますよ。
(取材・文/廣田恵介)
ゲッターロボ アーク 作品情報
<スタッフ>
企画:ダイナミック企画
原作:永井豪・石川賢
監督:川越淳
構成・脚本:早川正
キャラクターコンセプト:星和弥
キャラクターデザイン:本橋秀之
ロボット・コンセプトデザイン:堀井敏之
プロップ・メカデザイン:岩畑剛一/森木靖泰/鈴木典孝
美術監督:根岸大輔
美術設定:滝口勝久
CGI 監督&CG デザイン:後藤優一
音響監督:なかのとおる
音楽:栗山善親/寺田志保/横関敦/鈴木歌穂
音楽制作:ランティス
OP 主題歌:JAM Project「Bloodlines~運命の血統~」
アニメーション制作:Bee・Media×studioA-CAT
製作:真早乙女研究所
<キャスト>
流拓馬:内田雄馬、カムイ・ショウ:向野存麿、山岸獏:寸石和弘、神隼人:内田直哉 ほか
(C)永井豪・石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所