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デザートと食後酒を、2曲ずつ用意しました
── アルバムも後半に入って、9曲目「恋愛分子ガストロノミー」は新曲です。 宝野 「分子ガストロノミー(分子美食学)」という料理の分野があるんです。料理を科学的に解析して、普通に作ったら泡にならないような食材を泡状にしてみたり、食材によっては煙にしたりする料理法で、それと恋愛を結びつけた歌詞にしました。
── その次の「桃色天国」は収録曲の中では古い部類に入る曲ですね。 宝野 これはTVアニメ「かみちゃまかりん」のオープニングテーマ「暗黒天国」(2007年)のカップリング曲ですね。「暗黒天国」と一緒に収録される曲だから、「桃色天国」にしようと(笑)。甘いお菓子の曲なので、今回、収録することにしました。私、この曲大好きなんです。
片倉 ジャズで心地いいよね。楽器もすべて、生で録りました。次の「Maison de Bonbonnière」もお菓子の曲ということで、2曲を並べてみました。
宝野 「Maison de Bonbonnière」は去年リリースしたアルバム「Fantasia」の収録曲なので、既存曲の中では一番新しい曲です。グリム童話のヘンゼルとグレーテルをモチーフにした歌詞で、お菓子の家を描いています。この2曲がデザートで、次の「或る修道士の告解」は、食後酒ですね。
── 「或る修道士の告解」は2018年のアルバム「芸術変態論」の収録曲です。 宝野 不老不死の薬を地下室でこっそり作っている修道士の歌です。フランスにはシャルトリューズという、修道院で17世紀ごろから作られていた由緒あるお酒があるんです。しかも、製法は今に至っても公開されていないんですね。それを初めて飲んだときに、レストランのボーイさんから「これは不老不死のお酒なんですよ」と教えられたのが記憶に残っていて、この曲を作りました。
── 食通ならではの発想ですね。 宝野 アルコール度数が55度と強いんですけど、美味しくていくらでも飲めて(笑)。
片倉 しかも、この人は割らないで飲むんですよ。
宝野 後で辛い思いをしましたけど(笑)。でも、緑色のキレイなお酒で、作り方を修道院以外の誰も知らないというのが素敵じゃないですか。これは曲にできるなと。作ったのは、ちょうど「あんさんぶるスターズ!」の楽曲制作をやっていたころなんですよね。なので、美少年を長生きさせるために、不老不死の薬を作る修道士の話にしようと思いました。素晴らしいシチュエーションだわと思って(笑)。
── 一方的に永遠の愛を誓う修道士が印象に残りました。そして、ラストを飾るのが新曲の「La Fee Verte〜アブサニストによる音楽的試み」です。 宝野 これも食後酒の歌で、アブサンがモチーフです。
── これまた強いお酒ですね。 宝野 芸術家が中毒になって死ぬようなお酒です。昔から、アブサンを飲み過ぎると緑の妖精が見えると言われているので、歌詞にも緑の妖精を出してみました。これも緑色のお酒なんですけど、お水で薄めると白濁するんです。そのカラフルな色合いも、歌詞に入れ込んでいます。
── さらに通常盤のみ、「ストロベリーパイをお食べ〜運命編」が追加収録されています。 片倉 「ストロベリーパイをお食べ」はかなり古い曲で、OVA「緑山高校 甲子園編」のオープニングテーマでした。それを今回、録り直しました。
宝野 なぜかベートーヴェンの「運命」が混ざっているという(笑)。
片倉 CDは手元にあるんですけど、原曲のデータは失われてしまったんですよ。だからいつか録り直そうと思っていたんですけど、同じことをやってもつまらないから、いいアイデアはないかなと。アリプロはたまにクラシックを引用するんですけど、「運命」のような有名曲を使うことはないので、今回は露骨な引用をやってみようと思いました(笑)。
宝野 「運命」を混ぜた理由を、今、初めて知りました(笑)。でも、それ以外のアレンジはあまり変更がなく、ボーカルも当時と近い感じになっているので、原曲の雰囲気は強く残っていると思います。
片倉 そうですね。サウンド的には昔のテクノっぽい感じがそのままになっています。