「サガ エメラルド ビヨンド」をレビュー 挑み理解するほど面白くなる!周回プレイに応じて深みが増すRPG!

2024年05月04日 12:000

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2024年4月25日より、PS5/PS4/Switch/Steam/iOS/Android向けRPG「サガ エメラルド ビヨンド」が発売された。本作はスクウェア・エニックスが手がける「サガ」シリーズの最新作であり、2016年の「サガ スカーレットグレイス」以来、約8年ぶりの完全新作でもある。

本稿では、本作のSteam版をプレイしたうえでのレビューをお届けしよう。

膨大なパターンの分岐により、周回するほどストーリーが楽しくなる


 

本作には5組6人の主人公が登場する。住む場所も立場も、なにもかもが異なる彼らは、あることがきっかけで異世界に向かい、それぞれの目的のために戦う。異世界は全部で17種類あるが、その回のプレイで行ける世界はランダム。ストーリーの進め方は基本的に同じで、選択肢に出てきた世界のうちひとつに向かった後、そこに出てくるメインミッションをクリアしていけばいい。道中にはちょっとした寄り道要素であるサブミッションや、敵とのバトルのみのミッションも存在する。

 

 

メインミッションではいくつかの選択肢が出るパターンもあり、どのように話を進めるのかプレイヤーが決められる。ネタバレになるので詳細は避けるが、ある物を手に入れる際、敵と正面から戦うのか、あるいは情報を集めて作戦を立てるのか。特殊な力で動けなくなってしまった人々を助けるとき、限られた道具を誰に使うのか。といった具合だ。どれも物語の行方を大きく左右するものばかりで、どれを選ぼうかしばらく悩むのも珍しくなかった。複数の選択肢があるメインミッションは、いずれかを選ぶとほかのパターンは消失してしまうのでなおさらだ。

 

加えて本作のストーリーはそうした展開の連続でもあり、選択の重さにプレッシャーを感じるいっぽう、自分の意志が物語を動かしているのだという実感からくる没入感は相当なものだった。

 

 

ちなみに筆者が最初に選んだのは、御堂 綱紀(みどうつなのり)のストーリー。政府を裏から支え続けてきた御堂家の青年である綱紀は、各地で頻発する怪異現象を収めるため、「クグツ」という人形を引き連れて異世界を訪れる。そこで強大な力を持った精霊を4つ集めるのが目的だ。

 

 

登場する異世界は多彩で、いい意味でまとまりがない。氷漬けにされた人間たちがいる町に来て、「最終皇帝」とやらを巡る不思議な話が出てきたと思ったら、未知の技術がふんだんに使われたSFチックな基地に飛ばされたり、あるいはいきなり海中に放り込まれたり、意味不明の言葉を話す謎の生命体と接触したりと、どの世界も序盤から驚きの連続だ。

 

 

 

そして本作の物語は、周回プレイによって展開が変化する。たとえば綱紀のストーリーでは、1周目の序盤で関係者のお姉さんが綱紀の名前を呼ぶが、「つなのり」のところを「こうき」と間違え、訂正するという流れがある。だが2周目では、最初から「つなのり」と呼ぶ。さらに、序盤で綱紀の叔父が事の経緯を説明するシーンでは、1周目だと綱紀が異世界に行くことになった理由を少しぼかしているのに対し、筆者が体験した2周目では父が登場し、綱紀より上の世代には適合者がいないということも言及されていた。

 

 

セリフの違いから伏線を探ったり、世界観について考察を深めるのも楽しいが、同じ世界をまた訪れて、1周目とは違った選択肢を取るのも本作の醍醐味と言える。メインミッションを進める際、勝てない敵がいたせいで諦めていた選択肢も、1周目の育成状況を引き継いだ2周目なら選べるかもしれない。もし選んで勝てれば、物語の新たな一面を見られるし、1周目の雪辱も果たせる。綱紀のストーリーだけでなく、1周目では展開が唐突でよくわからなかったというパターンもあるので、全容を知るという意味でもなるべく周回はこなしたいところだ。

 

 

本作は個別のストーリーと全体の累計でそれぞれの周回数が表示されており、システム的にも周回プレイが奨励されている。実際、御堂 綱紀の話はサブミッションをそれなりにやりながらでも7時間半くらいで終わったので、1~3日もあれば、各ストーリーを1周するのに費やす期間としては十分だろう。

テンポのいい掛け合いや巻き戻し機能で周回プレイもやりやすい


 

周回プレイをこなすうえで重要なのはテンポだが、本作はそこもしっかり考えられている。まず、ストーリーの会話のテンポがよい。どこに行くのか、その目的といった必要な内容に加えて、最後にちょっとした一言をプラスするようなシンプルな掛け合いが大半なので、中だるみなどはない。そのため、周回を想定して控えめなボリュームになっている各ストーリーが、ことさらスピーディーに展開しているような印象を受けた。

 

 

さらに会話自体は選択肢が出てくる部分も含めて巻き戻せるため、間違えて選んだ、想像と違った、といったプレイヤー側の都合も難なくフォローできる。1周目で強化したステータスや集めた装備を次周に引き継げるのもありがたい。前回と今回で主人公が異なる場合、ステータス自体は反映されないようだが、装備などは持っていける。先述の通り、前回と同じ主人公で2周目を始めて、1周目ではクリアできなかった選択肢にも挑みやすくなるため、なかなか便利な機能だ。

 

連携が勝敗を左右する作り込まれたバトルシステム


 

本作を語るうえでは、行動順を巡ったバトルシステムも欠かせない。敵とのバトルでは、まず画面下部にある「タイムライン」上に敵味方のアイコンがランダムで配置。こちらが「術」や「技」といった攻撃手段をパーティーの分だけ選んだ後は、タイムラインに沿って左から順に行動していく。全員が行動し終えると、敵味方の行動順を示すアイコンがもう一度タイムライン上に配置され、再びこちら側は味方の攻撃手段を選ぶ。バトルは、このくり返しで進行する。

 

 

配置された直後の順番は固定ではなく、技や術といった攻撃手段の性能によって前後するのがポイント。技と術には「連携範囲」が設定されており、攻撃を選ぶと対象のキャラクターの真下に緑色のバーで表示される。この連携範囲同士がつながる、あるいは重なった仲間が隣にいると「連携」が発動し、対象の仲間全員が連続で攻撃していく。

 

連携する仲間が多いほど、使う術や技のダメージも増える。さらに連携に応じて「連携率」が上昇し、150%以上になると一定の確率で、200%を超えると確実に「オーバードライブ」が発動するのも強みだ。オーバードライブは連携した仲間が攻撃をくり返すというもので、シンプルに攻撃回数が増えるため非常に強力。

 

 

連携とは真逆の「独壇場」という要素もある。タイムライン上で敵や味方がある程度離れており、孤立したようなキャラクターは、自分ひとりで連携をくり出せるというもの。ランダムではあるが自分の使える技や術をつぎつぎと放つため、追い詰められた状況を一気にひっくり返せるだけのポテンシャルを秘めている。

 

 

連携やオーバードライブ、独壇場といった各種要素は強力だが、敵も使ってくるのが悩ましい。こちらが連携したと思ったら相手からも連携を受けてピンチになったり、それまで有利だったのがボスの独壇場によって仲間が一瞬でやられたりすることも少なくない。

 

タイムライン上の行動順は、対象のキャラクターが選んだ技や術の性能によって前後するという仕様がここで重要になる。たとえばタイムライン上の位置をずらして、あえて敵のあいだに割り込むことで、こちらの連携を諦める代わりに相手の連携を阻止できるわけだ。

 

 

攻撃を当てた相手の位置を奥にずらす「バンプ」、特定の攻撃に反応し、対象の直前に割り込む「インタラプト」といった、一部の特殊な能力を持つ技・術も込みでタイムラインの行動順を考えられるようになると、本作のバトルがいよいよ面白くなってくる。タイムライン上では連携が決まっている敵側を、インタラプト付きの技で割り込んで妨害する、バンプ付きの技で相手を押し出し、味方の独壇場の発動条件を力ずくで整えるなど、さまざまな作戦が思いつける。そして敵にも同じことをされて予定が崩れ、慌てて対策を練るというのもお約束で、そのスリルがたまらない。

 

戦闘中は味方が「ひらめき」を発動することも。ひらめくと新たな技が発現し、以降のバトルで使えるようになる

 

術や技はそれぞれ「BP」を使う。BPはパーティーで共有しており、BPを多く使う攻撃ばかり選んでいると、ほかの仲間が満足に動けない。BPの増加や最大値は陣形により異なるが、初期の連携陣ではターンが改まるごとにBPはひとつずつ増えていき、最終的に10まで増える。いっぽう、術および技に必要なBPは1~4程度で、考えなしに攻撃していると一向に作戦を立てられなくなる。

 

 

タイムラインと技に術、連携にオーバードライブ、独壇場など、本作のバトルは覚えることが多く複雑なので、最初はなかなか思い通りに戦えない。さらに本作はTIPSや用語集で情報を確認できるとはいえ、チュートリアル的なものはあまりなく、実戦を通して体に叩き込むような硬派なスタイルを取っている。

 

幸い、「LP」があるかぎりバトル後に何度でも復活できるので、味方がやられることをあまり恐れず、どんどん戦ってノウハウを覚えていくのがオススメだ。LPはキャラクターごとに備わっており、戦闘不能になるたびにひとつずつ減少。これがゼロになったメンバーはバトルに参加できなくなる。メインパーティーから外れた仲間は、バトルを経るにつれて少しずつLPが増えていくので、いざというときは利用しよう。

 

メインパーティーのLPをひとつずつ消費することで、その場で再挑戦が可能。再挑戦するとパーティーの連携率が少し上がりやすくなる


周回を前提にした、コンパクトかつ重厚なストーリー、周回をプレイヤーに促すための便利な機能の数々、そして行動順が勝敗を握るスリル満点のバトルなど、本作は手軽かつ骨太なバトルが楽しめるRPGと言える。RPG好きはもちろん、やり込みや周回には目がないプレイヤーにはとくにオススメできる1作だ。

  • 【タイトル情報】
  • ■「サガ エメラルド ビヨンド
  • ジャンル:RPG
  • 発売日:2024年4月25日(木)
    ※Steam 版は 2024年4月26日(金)
  • 対応機種:Nintendo Switch, PlayStation4, PlayStation5, Steam, iOS, Android
  • メーカー:スクエア・エニックス

(C)SQUARE ENIX

夏無内好

夏無内好

活動歴約10年のフリーライター。専門学校を出た後、大手のゲーム雑誌の記事作成や編集プロダクションの攻略本作成などを経験。週刊誌での長期連載やプレスリリースのリライトも経て、最近はアキバ総研などのウェブ系でも執筆を始める。 基本的に雑食で、RPGからアクション、シミュレーションやFPSまでなんでもやる。

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