【インタビュー】コトリンゴが再び描く「このセカ」の音楽世界。「『この世界の片隅に』さらにいくつものサウンドトラック」が発売！

私の思いつきを、浦谷さんにジャケットイラストにしていただきました

── 「この世界の（さらにいくつもの）片隅に」の作品を見たご感想をお聞かせいただけますか？

コトリンゴ　実は私はまだ、通して見ていないんです。でも、周りのみんなの感想を聞いたり、自分の音楽が付いた新たなシーンを見ていると、すずさんとリンさんのやり取りが増えて、戦争という状況の中の心の交流が描かれ、さらに深いお話になっているんだなと感じました。前作以上に、すずさんたちの日常に入り込んでいく感覚になれるんじゃないかなと思っています。

── すずさんとリンさんの関係性は、今回の大きな柱ですよね。

コトリンゴ　周作さんのことがあるのにすずさんがふわふわと過ごしている感じがすごいなと思います。リンさんもどこまでわかっていたのかなと、私もいろいろ考えました。

── サウンドトラックのジャケットも、この2人ですね。アイスクリームを食べている姿はコトリンゴさんのアイデアだったとうかがっています。

コトリンゴ　アイデアを出したというほど大げさなことではなくて、監督さんとお話ししている中で思いついたことでした。さらりと「今回のサントラのジャケットは何がいいですかね？」と聞かれたので、甘い物を食べながらお話をするのは楽しいからアイスクリームを食べているというのはどうでしょうか、と。監督補の浦谷千恵さんがお忙しい中、描いてくださいました。


── なぜ2人とも左手でスプーンを持っているのか、すでにネットでは話題になっています。

コトリンゴ　そうなんですよ！ 私も理由を知らなくて、浦谷さんに訊いてみたいです。

── 「この世界の片隅に」から数えると、長いお付き合いになったと思いますが、改めてこの作品に参加しての感慨をお聞かせください。

コトリンゴ　私とは比較にならないほど、アニメーターさんは大変だったと思うので、たくさんの人の血の滲むような作業が報われるときが、いよいよ来ると思うとうれしいです。片渕監督が丹念に調べて、当時、本当にあったことが映像になっているので、あの時代の雰囲気を伝える作品として、ずっと残っていってほしいですね。

── サントラと同時に、コトリンゴさんの初のベストアルバム「小鳥観察 Kotringo Best」もリリースされます。

コトリンゴ　はい、周りの方が動いてくださって、同時発売できることになってうれしいです。ベストアルバムには「この世界の片隅に」の曲は入っていないので、一緒に聴いていただける機会ができて、よかったなと思います。

コトリンゴプロフィール

音楽家／ボストン・ バークリー音楽大学に留学し、学位を取得後、ニューヨークにて演奏活動を開始。坂本龍一に見い出され、2006年日本デビューを飾る。
現在までに10枚のソロアルバムと、8枚のサウンドトラックアルバムを発表。
劇場アニメーション映画「この世界の片隅に」のサウンドトラックを手がけ、日本アカデミー賞優秀音楽賞、毎日映画コンクール音楽賞、ほかを受賞。

CDデータ

■映画「この世界の片隅に」さらにいくつものサウンドトラック

<収録曲>
01.神の御子は今宵しも
02.悲しくてやりきれない
03.引き潮の海を歩く子供たち
04.すいかの思い出
05.周作さん
06.うちらどこかで
07.朝のお仕事
08.隣組
09.すずさんと晴美さん
10.広島の街
11.戦艦大和
12.試験栽培（※新曲）
13.ごはんの支度
14.径子
15.疑い
16.ありこさん
17.ヤミ市
18.りんさん
19.デート
20.知らんでええこと（※新曲）
21.大丈夫かのう
22.お見送り
23.あの道
24.良かった
25.左手で描く世界
26.白いサギを追って
27.広島から来たんかね
28.飛び去る正義
29.明日も明後日も
30.すずさんの右手
31.最後の務め
32.りんどうの秘密（※新曲）
33.みぎてのうた
34.たんぽぽ（さらにいくつものversion）
35.わたしの居場所（※新曲）
36.New day
37.すずさん
38.かんとくさん（※ドキュメンタリー映画「＜片隅＞たちと生きる　監督・片渕須直の仕事」テーマソング）


■小鳥観察 Kotringo Best 

（取材・文／鈴木隆詩）
(C) 2019こうの史代・双葉社 /「この世界の片隅に」製作委員会