※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。
日中ネット小説テンプレのそこはかとない違い
近頃の日本のアニメやマンガにはネット小説原作の作品が増えていることから、中国のオタク界隈でも日本のネット小説のお約束、テンプレ的展開といったものが、ネタ的な方向込みで認識されるようになっています。
また中国はネット小説の商業化に関しては日本よりも先行していて、現在の中国国産コンテンツにおいて強い存在感を示していることもあり、中国のオタクな人たちも国産ネット小説に関しては基礎知識的に把握しています。
そのような背景もあってか、中国のオタク界隈では日本のネット小説出身の作品に関して中国国産作品との違いが話題になることも増えているそうですし、「中国の」テンプレ的なイメージから来る展開を期待していたところに、予想外の「日本の」テンプレ的展開にぶつかって引っかかりを覚えたり、ガッカリしたりといったようなことも起きているのだとか。
最近の新作アニメでは、「転生したらスライムだった件」や「盾の勇者の成り上がり」、現在は配信中止となってしまったようですが「異世界かるてっと」(クロスオーバー元の4作品すべてが中国で一定以上の人気になっています)といった、中国でも比較的広い範囲で話題になった日本のネット小説原作の作品が出ていますが、人気や話題とともに、日本と中国の「ネット小説のテンプレの違い」「好まれる定番要素の違い」といった部分についても浮き彫りになってきているそうです。
そんなわけで、以下に中国のオタクな方たちから聞いた、目に付きやすい「日中ネット小説テンプレの違い」をいくつかあげてみようかと思います。
●主人公が強くなる過程、強くなる方法
中国の作品では主人公に与えられる特別な能力は「強くなる方法」で、一般人とは違う効率で鍛錬しレベルアップするための特別な方法を習得して主人公が強くなっていく。
それに対して日本の作品では、異世界に行く際などに主人公が何らかの特別な能力、強力な力を直接獲得する。またその影響なのか、中国の作品であれば最後に獲得するような最強能力が、日本の作品では序盤から与えられて随分と軽く扱われるようなこともある。
●強いキャラ(主人公)の待遇
中国の作品ではキャラは強くなるとともに上の立場になり組織や種族のトップになる。
それに対して日本の作品では強いキャラがそのままトップになるとは限らず、また面倒ごとを避けるために実力を隠したりする。
また中国の作品の「強い主人公」は上位的な存在となっていることにより格下の敵からの攻撃で深手を負う、突然の不意打ちでピンチになるといったこともないので、日本の作品の主人公の格下の敵に対する突発的な弱さ、あっさり死んだり死にかけたりする展開にはとまどう。
●強くなって求めるモノ
中国の作品では「凡人」ではなくなること、人の上位的存在になって支配される側から抜け出して好き勝手にやる、世界を変えるなど、日常ではやれないことを実現するために目標に向かって奮闘する。
それに対して日本の作品は世界を変えるような方向の意欲はあまりなく、自分の周囲に居心地のよい人間関係や生活水準などが整った環境を構築して日常を楽しみたがる、守りたがる。
以上のような違いのほかにも、大きな違いとして、文字数課金やそれにともなう評価が基本となっている中国のネット小説プラットフォーム事情による文字数稼ぎの技法でもある、展開の引き延ばしや、世界設定と攻略法的内容の掘り下げなどから来る作品の印象の違いなどもあるそうです。
もちろん日中問わず個別のネット小説作品を見ていくとテンプレ的なところから外れる、独自要素を備えているという作品もたくさんありますし、変化の速いジャンルなので、次々と「新しい定番ネタ」も出てきているそうですが、大まかなイメージの違いとして上のようなものがあるのも確かだということです。
ネット小説系作品に限らず、日本の作品に関して、中国では見ている側が求める主人公の活躍、乗り越えるべき障害の描写などに関する感覚の違いから、イロイロな引っかかりや不満が出たりすることも少なくないそうです。
しかしちょっとした感覚の違いがあっても人気になる作品は出ていますし、そういった作品の反応から中国にも刺さる日本作品の傾向を見ていくのも面白いかもしれませんね。
(文/百元籠羊)