イラストレーター・米山舞 ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人” 第26回)

2018年09月08日 08:000

オリジナルアニメを作れる幸せ


─ガイナックスやトリガーはオリジナルアニメ制作に力を入れている印象があります。


米山 原作アニメももちろん楽しいんですけど、オリジナルアニメをやれる醍醐味は、ガイナで実感できました。「グレンラガン」とか、「パンスト」とか、オリジナルアニメをやれるって、すごい幸せなことじゃないですか。


─そのほかの制作会社のアニメにもいろいろ参加していますね。たとえば、「THE IDOLM@STER」(2011)の第10話は、益山さんの絵コンテ・演出回でした。アイドルの運動会のエピソードですが、米山さんはどういったカットを描かれたのでしょうか?


米山 伊織がバトンを渡すシーンです。


─シロクマ、パンダ、ペンギンといった動物キャラが活躍する「しろくまカフェ」(2012~13)にも参加されています。


米山 11話のアイキャッチと本編原画を少しやりました。動物をメインで描くアニメはなかなかないので、難しかったですね。


─「デス・パレード」(2015)第6話はどの部分を?


米山 マユと原田がツイスターゲームをしているところですね。


─作画監督デビューは?


米山 「ブラック★ロックシューター」(2012)の2話です。


─最初のキャラクターデザインは?


米山 「HILL CLIMB GIRL」です。カラーさんからお話をいただきました。


─米山さんは初音ミクGTプロジェクト「レーシングミク 2016ver.」のイラストも描かれていますね。


米山 デザイン監修をされている、コヤマシゲトさんに紹介していただきました。今のイラストのお仕事を増やすきっかけになったのも、コヤマさんに「レーミク」を紹介していただいたおかげです。


─「キズナイーバー」のキャラデザ抜擢は、どういったご経緯だったのでしょうか?


米山 アニメーションプロデューサーの堤尚子さんからお話をいただいたんですが、原案をイラストレーターの三輪士郎さんでやると聞いた時、私と三輪さんと絵のルーツが結構一緒だったので、相性いいかな、三輪さんの絵をトリガー風にやったらおもしろいだろうなと思って、引き受けました。あとは、監督の小林寛さんの画作りがすごく映画的なので、勉強になるかなと。得意なものを突きつめつつ、自分の引き出しを増やしたいなと思ったんです。


─現在のお立場は、トリガーの社員でいらっしゃるのでしょうか?


米山 フリーランスです。ガイナックスにいた時から誘われてはいたんですが、トリガーにはずっとフリーの立場でお手伝いさせてもらっています。

 

「キルラキル」で増える表現の幅


─転機になったお仕事は?


米山 やっぱり「キルラキル」ですね。アニメって続けていくと、凝り固まっちゃうんですよ。同じ感じになっちゃうというか。同じことを繰り返して、効率よく作品を進めていかなきゃいけないのは当然なんですけど、同時に凝り固まっちゃうんですよ。いつも同じ顔を描いてるな、とか。


「キルラキル」は、描いたことないものを描かないと自分の引き出しにならない、ということを教えてくれました。たとえばで言うと、腰はどこまでも細くなる、腕もどこまでも伸びる、口もどこまでも開く。そういう常識、当たり前みたいなものを崩された、カルチャーショックの作品なんです。終わった後、すごく自分の表現の幅が増えました。


─そのほかに、印象に残っている作品は?


米山 「ソードアート・オンライン」(2012)は、人が観たいものをすごく意識して、それが成功した作品でした(編注:米山さんは第8話の作監)。やったぶんだけ反応が返ってくるんですよ。「この恥ずかしい顔、最高!」みたいに言われると、すごくうれしくて。そういうのを実験する場が「ソードアート」にはあって、それを生かせたのは「キズナイーバー」でした。


─キャラクターデザインに必要な資質能力は?


米山 原画だけならパースやカメラの知識、絵のデッサン力なんですけど、キャラクターデザインになると、絵を見る力、好きになる力、頭を使う力が必要ですよね。原作があったら原作を好きになって、解釈して、その魅力が伝わるデザインをする、とかですかね。

─絵柄の流行についてはどうお考えですか?


米山 流行を一番には考えてないです。流行が何かを見る力は必要ですけど、流行を心の置きどころにはしていません。それを取り入れるのはほんの数パーセントでよくって、自分が表現したいものとか、最後まで残したいもののほうが大事かな。人と同じことをしてもつまんないですよね。

 

ゲームや独自のファンタジーをやってみたい


─今後挑戦したいことは?


米山 既成概念のファンタジーじゃない、自分が考えたファンタジーをやってみたいです。ジャンルでいうと、コンシューマーゲームのキャラクターデザインはやりたいな、と常々思っています。あと、「アイカツ!」(2012~16)みたいな、女児系の作品もやってみたいですね。服が好きなんですよ。


─米山さんがイラストを描かれた小説がアニメ化された際、キャラデザ・総作監もされたいですか?


米山 自分のキャリアアップにつながりそうなら、やりたいですね。


─漫画はいかがでしょうか?


米山 読むのはとっても好きなんですけど、今のところはお話を作る意欲があまりないというか、整合性を取るのが苦手というか(苦笑)。絵のうまさじゃないところで、漫画を描く才能って絶対にあると思うんですよ。もしかしたらやりたくなるかもしれないですけど、漫画をやりたくなった時には、コンテとか演出もやりたくなるのかなと思います。


─最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いいたします!


米山 アニメをあんまりやれてなくて、申し訳ございません。今後もアニメに関わらずいっぱいやっていくつもりなので、イラストのほうも「アニメをやっていたから、米山はこういう表現をするんだな」と見てくれたら、すごくうれしいなと思います!

 

 

●米山舞 プロフィール

イラストレーター、アニメーター、キャラクターデザイナー。長野県出身。東京デザイナー学院アニメーション科卒業後、ガイナックス入社。感情芝居やケレン味でキャラクターの魅力を引き出すのを得意とする。入社1年ほどで、名作「パンティ&ストッキング with ガーターベルト」(2010)の原画に昇格、「THE IDOLM@STER」(2011)、「ダンタリアンの書架」(2011)、「WORKING'!!」(2011)、「ペルソナ5」(2016、ゲーム内アニメーション)などにも参加。作画監督としての作品は、「ブラック★ロックシューター」(2012)、「ソードアート・オンライン」(2012)、「キルラキル」(2013~14)、「パンチライン」(2015)、「リトルウィッチアカデミア」(2017)、「ダーリン・イン・ザ・フランキス」(2018)など。「HILL CLIMB GIRL」(2014)や「キズナイーバー」(2016)でキャラクターデザイン能力を認められてからは、イラストレーターとしても活躍、「うさぎ強盗には死んでもらう」(2016)、「学園交渉人 法条真誠の華麗なる逆転劇」(2017)、「海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと」(2018)といった小説のイラストを担当した。アニメとイラストで多くのファンを魅了し、将来を嘱望されている若手作家である。


※角川スニーカー文庫 「うさぎ強盗には死んでもらう」 (著者 橘ユマ、イラスト 米山舞)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321609000496

※GA文庫「学園交渉人 法条真誠の華麗なる逆転劇」(著者 柚本悠斗、イラスト 米山舞)
http://www.sbcr.jp/products/4797392906.html

※角川スニーカー文庫「海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと」(著者 石川博品、イラスト 米山舞)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321802000366/

※短編アニメ「HILL CLIMB GIRL」 日本アニメ(ーター)見本市HPより
http://animatorexpo.com/hillclimbgirl/

※TVアニメ「キズナイーバー」 公式サイト
https://kiznaiver.jp/

※米山舞 ツイッター
https://twitter.com/yonema


(取材・文:crepuscular)

 

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