イラストレーター・米山舞 ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人” 第26回)

2018年09月08日 08:000

小説のキャラデザ作法


─小説の場合、著者と出版社のチェックが入ることになりますが、アニメとやり方が違ったりしますか?


米山 原作者の方から「このパーツはつけてください」とか言われたり、チェックバックだったり、厳しいところは厳しいらしいですね。私の場合は、幸い自由にやらせてもらっています。でも、自分優先というよりは、ひと通り全部読んで、作品の色に合わせるようにしています。


たとえば、「学園交渉人 法条真誠の華麗なる逆転劇」(2017)は、ギャグ寄りにしています。「海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと」(2018)の場合は表情を崩すと、読んでいる人の気がそれちゃうんですよね。絵の力が強すぎてもダメなので、自分でコントロールするようにしています。


─小説でも、ご自身で色を決めるのですか?


米山 そうですね。大体のイメージはいただいて、あとは自分で考える感じです。「学園交渉人」の場合、真誠と華織の髪の色は最初茶髪だったんですけど、それじゃ映えないなと思って、変えさせてもらいました。


─作品参加の基準はありますか?


米山 特にないですけど、はっちゃけられないというか、デッサンをちゃんと描かないといけないとか、あんまり遊びのない作品は取らないようにしています。そういう意味では、今石さんの作品は遊びしかなくて、やっぱり楽しいんですよね(笑)。


あとアニメの場合は、声をかけていただいた方のつながりですね。自分からやりたいと思ってやっている作品はほぼなくて、手伝いが多いですね。


─自発的に参加された作品というのは?


米山 「ペルソナ5」(2016)くらいですね。プロダクションI.Gに電話して、お願いしてやらせてもらいました(編注:テレビシリーズ(2018)ではなく、ゲーム内アニメーションの原画)。昔から「ペルソナ」シリーズが大好きなんです。


─アニメではどういったカットを依頼されることが多いですか?


米山 顔のアップとか、「ここは外せない」というところを頼まれることが多いですね。私はガイナ系以外に、「あしたのジョー」(1970~71)の杉野昭夫さんや「聖闘士星矢」の荒木伸吾さんの影響も受けているので、迫力のある顔の芝居をやるのがすごく好きなんです。

 

アクセサリーやフィギュアも自分で作る


─仕事道具や職場環境にこだわりは?


米山 鉛筆は2B以上を使っています。手慣らしに1枚、何か描くこともしていますね。それは絵じゃなくて、字だったりもするんです。


それから、スタジオに行っている時は服をちゃんと着替えて、ちゃんとお化粧をします(笑)。オン/オフができて、身が引き締まるんですよ。あと、チョコとか甘いものを机に置いて、頭の回転がよくなるようにもしていますね。


─どんなチョコを食べるのですか?


米山 ガルボをよく食べます(笑)。


─息抜きはどんなことを?


米山 DIYが好きです。市販品だと自分の希望に合うものが少ないから、作っちゃえ! みたいな(笑)。アクセサリーもフィギュアも作ります。うまくないですけど、作るのが好きなんですよね。写真も撮っていまして、20代のころは奥多摩とかに行っていました。

─アニメーション監督の尾崎隆晴さんは、軍艦島や池島炭鉱に旅行した経験を「少女終末旅行」(2017)の制作に生かされたそうです(編注:https://akiba-souken.com/article/34798/?page=3


米山 いいな~(笑)。すごくいいことですよね。私も「ダーリン・イン・ザ・フランキス」のエンディングで、実際に歩道橋や踏切や駅を撮りに行って、写真っぽくしたイメージボードを作ったんですけど、すごく楽しかったですよ。

 

同期の女性が辞めていく中、それでも描き続ける


─キャリアについてうかがいます。まずアニメ業界に入った経緯を教えてください。


米山 アニメにハマって、ずっとアニメーターの絵のうまさに惹かれていました。長野から上京して、東京デザイナー学院アニメーション科を卒業して、ガイナックスに入りました。


─最初からガイナックス希望で?


米山 ガイナは入りたいというより、高嶺の花だったんですよね。就活せずにウダウダしていたんですけど、専門学校の先生から小松田大全さん(編注:「ブブキ・ブランキ」(2016)の監督)を紹介してもらいまして、ポートフォリオを見せつつ相談したら、大丈夫だと言ってもらえたので、ポートフォリオを送って入社しました。


─キャリア初期のご生活いかがでしたか?


米山 いや~大変でした(笑)。入った時は「グレンラガン」の劇場版「螺巌篇」(2009)を作っていて、動画の先輩が「グレンラガン」を描いているのを見て、ああいうのができるんだろうなとワクワクしていました。


でも、実際は枚数を稼げないし、家賃は4万5千円くらいだったんですけど、初任給が1万いかないくらいで……(苦笑)。持っているゲームをブックオフに売りにいったり、毎日具のない素麺を食べたりしていました。


今は動画マンでも拘束料もらってあとは歩合みたいな、待遇のいい会社もありますけど、そのころは完全に歩合でした。ただ、完全歩合がやりがいにつながらなかったわけではなく、もっと描くぞ!みたいなモチベーションになっていたので、それはよかったと思います。


─男性女性関係なく、アニメーターのスタートは厳しいのですね。


米山 私が入った時は6人いて、男3人女3人だったんですけど、私以外の女の子はやめちゃいました。やっぱり生活が厳しいとか、お風呂に入りたいとか、そういった理由で。仲のいい子がやめていくのは寂しかったですね。でも、私は割と男寄りだったので、田舎から出てきたのもあって、やってやる! 認められたい!という気持ちのほうが強かったですね。


今も女の子の後輩に、生活できないとか相談されます。私は専門学校時代の友達と同居していたのでまだ大丈夫だったんですけど、ひとり暮らしだと、本当に大変だと思います。

─ガイナックス出身でアニメーション監督の益山亮司さんは、原画開始まで3年かかったそうですが(編注:https://akiba-souken.com/article/33166/?page=2、米山さんはどのくらいかかりましたか?


米山 1年くらいですね。ガイナは研修から動画に上がるのも大変で、半年~1年かかって動画に上がる子もいました。私は幸い、同期の中では一番早く原画に上がることができました。ちょうど「パンティ&ストッキング with ガーターベルト」(2010)をやることになった時期で、これを動画でやりたくないな、「パンスト」は絶対原画でやりたい! と思っていました。タイミング的に「パンスト」が、いいモチベーションになりましたね。

─益山さんは、米山さんの先輩にあたるわけですね。


米山 後輩にもやさしくしてくれる方で、今でも会えばおしゃべりしています。


─すしおさんとは師弟関係がおありだとか。


米山 原画に上がると先輩が教える制度があって、私の場合はすしおさんが担当でした。「パンスト」の原画をひたすら直され、1カット25回ぐらい持って返って、持って返ってを繰り返しました(笑)。


─鬱になったり、嫌になったりしませんでしたか?


米山 私は教わるのがすごく好きなので、楽しんでやっていましたよ。私は「すしおさんの成分が入ったら得じゃん!」と思うほうで、どんどん吸収していきました。

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