寿美菜子が、ニューアルバム「emotion」をリリース！　新曲全曲の作詞にトライした“奇跡の1枚”に

私にとっては、奇跡のようなアルバムになりました

── さて、新曲はあと2曲ですね。

寿　5曲目に書いたのが「feel in my heart」で、最後が「LOVE JOY FUN」です。ここまで来ると、もう折り返しを過ぎて、まだアルバムの中に足りていない要素はなんだろうと考えながら、作詞していました。曲調的には、「feel in my heart」はEDM要素の入ったバラード、「LOVE JOY FUN」はダンスナンバーということで、どちらもアルバムに必要な曲になっています。

── 「feel in my heart」はゆったりとしたグルーヴ感のある曲で、ボーカルの雰囲気も大人っぽいんですよね。

寿　はい。曲調に合わせて、他の曲よりもワードのチョイスを渋く、重ためにしてみようと思いました。今回、作詞はスマホでしていたんですよ。女子高生みたいにスマホに打ち込んでいたんですけど（笑）、「feel in my heart」は最後パソコンで打ち直してみて、言葉を念入りに選んでいったんです。書きながら思ったのは、ここまで作ってきた曲の主人公は、たまに切なくなることはあっても、最終的には気分が上がっている人たちだったなと。だったら、「feel in my heart」の主人公は、そこまで上がらなくてもいいんじゃないかなということでした。終盤に出てくる「回る回る “絶対”なんてない今日も」という1節は、もう少し気持ちが上がる歌詞も作っていたんですけど、「この曲だったら、これくらいの気分でいい」と思って変えたんです。

── 最後まで、静かなイメージに包まれて終わっていきますよね。

寿　今までの寿美菜子像とは違うかもしれないなと。私の音楽を好きで聴いてくださっている方々は、前向きにがんばれる歌に救いを求めてくださっているのかもしれないんですけど、この曲だけは、すごい落ち込んでいる時に聴いたら、さらに落ち込むかもしれないです（笑）。

── それもまた、ひとつの表現ですから（笑）。

寿　そうですね（笑）。でも、包み込むやさしさもある曲なので、よきタイミングで聴いていただきたいです。私としては、こういうタイプの歌詞も書いてみたいなと思って、挑戦しました。

── ここまで来たら、作詞のスキルがたっぷり蓄積されていたのではないでしょうか？

（ディレクター）恐ろしいくらいです（笑）。最後の歌詞を2パターン書いてみたというのも、別にこちらから求めたわけでもないのに、やってきて。

寿　うふふふ（笑）。少しずつわかっていけたと思います。前に（高垣）彩陽と話したことがあったんですけど、歌詞は一度決まったら、ずっとそのメロディにその言葉を乗せて歌っていくわけじゃないですか。彩陽は、自分で作詞した時に「本当にこの言葉でいいのかなって、すごく悩んだ」って言っていて。私はその点、1つひとつのワードはけっこうバサバサと決めていけたんですけど、歌詞全体のテーマを見た時に、本当にこれでいいのかなという、彩陽が言っていた気持ちが、「feel in my heart」で初めてわかりました。それで、最後の部分を2パターン書いて、選んでみようと思ったんです。まるでゲームのルート分岐だなって思いました（笑）。

── そして、ラストが「LOVE JOY FUN」。

寿　「LOVE JOY FUN」は歌詞の分量が、ほかと比べても極端に少ないんです。でも、ここまで書いてきた5曲の集大成になっていて、そこまでに勉強してきたことが詰め込まれているんです。書きたいことはたくさんあったんですけど、あえて言葉を絞るという、そういう勇気も示すことができたと思います。

── 「LOVE JOY FUN」というのは、すごく明るい言葉ですよね。

寿　2016年にLAに行った時に、古本屋さんで「LOVE JOY ART」というワードを見つけて、かわいいなって思ったんですよね。いつか、使ってみたいなと覚えていたのが、この曲のイメージと合って。「ART」じゃないかな？ と思ったので、「LOVE JOY FUN」に変えてみました。響きもいいですし、愛でよろこびで楽しくて、というこれ以上ないほど前向きな言葉になって。「LOVE JOY FUN これは 魔法の言葉」という歌詞には、結果的に私自身がいつも励まされています。私は、何かがうまくいっても、「もっとやれるでしょ？」と思ってしまうタイプなんですけど、この1節はよく出てきたなあと思いました。短い歌詞だからこそ、最後の最後までどんなワードを当てはめようか、悩みながら書いていきました。

── この曲を最後に作詞したというのは、とても納得できます。シンプルでいて、深い歌詞なんですよね。さらりと聴くこともできますが、一番、上級者らしいですよね。

寿　そうかもしれないですね（笑）、多くは語らないという。

（ディレクター）　2か月足らずで、ここまで書けるようになったというのは、素晴らしいです。

寿　集中できたのがよかったのかなと思います。スケジュール的に少し余裕があって、昼間や夕方に歌詞を書くことができたんです。私は深夜に作詞をしたらダメだということがわかって。仕事のスイッチが入って、作詞を終えても、歌詞のキャラクターがずっと頭の中で動いていて、眠れなくなっちゃうんです。ご飯を食べる時にゆっくりできるようなお店を選んだり、ひたすらスターバックスに行きましたね、今回は（笑）。自分の生活のペースに合わせながら、歌詞を書いて、自分自身と向き合うことができたのがよかったなと思います。

── では、作詞は主に外でしたんですか？

寿　はい、外で書いて、家に帰って口ずさんでみる、という感じでした。

── シングル曲も含めて、聴き応えのあるアルバムになったと思います。

寿　私からすると、奇跡のような1枚になりました。新曲6曲の作詞ができたということもそうなんですけど、ここまで寿美菜子の音楽を作り上げてきてくださった作家のみなさまの楽曲が、どれひとつ取っても被っていなくて、寿美菜子のいろいろな面が見えるアルバムになっているんです。シングル曲も、「black hole」以降は常に歩幅が大きいというか、大股でドンドンと進んできたので、すごく遠くまで来ることができたなと。すべての曲が繋がっていて、どの曲にも私がその時に感じたエモーションに溢れていて、本当に奇跡だなと思います。

── サウンドも完成度が高く、大人っぽいんですよね。

寿　そうですね。音楽的にも楽しめる作品になっていると思います。

── 作詞について、今後の野望はありますか？

寿　プロの作詞家さんにお任せしたほうがいい曲と、自分の言葉で書いたほうがいいかもと感じる曲と、2種類あると思うんです。書きたいな思った時は、積極的に挑戦していきたいなと思います。そして、欲を言えば、誰かほかの方の曲や、アニメやゲームの世界観に寄り添ったタイアップ曲も作詞してみたいです。

── ということは、作詞家も目指すと？

寿　いつかできたらいいなあと（笑）。夢がまたひとつ、ふくらみました。

寿美菜子プロフィール

9月17日生まれ。兵庫県出身。
2010年9月15日に、シングル「Shiny＋」をリリースしてソロデビュー。現在まで11枚のシングルと2枚のアルバムを発表している。
声優としての主な出演作に、「響け! ユーフォニアム」リーズ（田中あすか)、 「戦姫絶唱シンフォギアAXZ」（サンジェルマン） 、「夜明け告げるルーのうた」（遊歩）、「ドキドキ!プリキュア」（菱川六花/キュアダイヤモンド）、 「けいおん!」（琴吹紬）などがある。


■3rdアルバム「emotion」

〈収録曲〉
01. Ambitious map
02. ミリオンリトマス
03. Bye Bye Blue
04. LOVE JOY FUN
05. アンブレラ・アンブレラ
06. I wanted to do
07. Candy Color Pop
08. Sun Shower
09. black hole
10. "YES"
11. タイムカプセル
12. feel in my heart
13. Another Wonderland
14. Piece of emotion

〈初回生産限定盤DVD収録内容〉
1. 「Ambitious map」 Music Clip
2. Album「emotion」 TV SPOT 15sec＋30sec

インフォメーション

●LAWSON premium event
寿美菜子 360°SPECIAL LIVE at 舞浜アンフィシアター

千葉・舞浜アンフィシアター
2018年2月24日（土）開場17:00/開演18:00

●LAWSON presents 寿美菜子 Zepp Live Tour 2018“emotion”

東京 Zepp DiverCity（Tokyo）
2018年5月13日（日）開場17:00/開演18:00

愛知 Zepp Nagoya
2018年5月20日（日）開場17:00/開演18:00

大阪 Zepp Namba（OSAKA）
2018年5月26日（土）開場16:30/開演17:30

東京 Zepp Tokyo
2018年6月3日（日）開場17:00/開演18:00

※詳しくはオフィシャルサイト http://www.kotobukiminako.com/ まで

（取材・文／鈴木隆詩）