中山久美子さんの補佐を経て、色彩設定デビュー
―彩色関係のキャリアパスは一般的に、「仕上げ→色指定・検査→色彩設定」と言われますが、松山さんはどのようにキャリアを積まれていかれたのでしょうか?
松山 セル画からデジタル環境に移って、しばらくは仕上げの経験を積んでいました。その後、仕上げ部のチーフから「将来どうしたい?」と聞かれたので、私が「色を作る人になりたい」と答えると、次に動く作品「太陽の船ソルビアンカ」(1999)の色彩設定の補佐をするように言われました。この時の色彩設定が中山さんで、当時はまだセル画で色を作っていました。私はそれをデジタル環境で再現できるように色指定表にするお手伝いをしました。
─松山さんの場合、色彩設定補佐のお仕事も経験されているのですね。では、初めて色指定・検査をされた作品は?
松山 「ソルビアンカ」については色指定の役目にも携わることができました。ただ、色指定としてのクレジットがあるかは定かではありません。クレジットに載ったのは、ロボットアニメの「破邪巨星G弾劾凰」(2001)の1話、3話、8話です。この作品の制作デスクの方から仕事として指示があり、携わることになったんです。
─色彩設定のデビューは「ぷちぷり*ユーシィ」(2002~03)ですね。抜擢のご経緯をうかがえますか?
松山 「ソルビアンカ」のプロデューサーからお声がけいただきました。「ぷちぷり*ユーシィ」に関しては原案のカラーがあり、「大体こういう方向で行きましょう」という進め方でした。
─「S・A~スペシャル・エー~」(2008)は、原作が少女漫画で、原作絵には独特の色使いがありますが、アニメ化にあたりどのような点に配慮されましたか?
松山 原作を読んでいる方があまり違和感を持たないように心がけました。めったにないのですけど、ひとつのフレームの中にキャラクター全員が並んだ時に、色がかぶったりするとバランスが悪くなります。アニメでは気をつけました。
「アマガミSS」の色使いのポイントとは?
─「アマガミSS」(2010、2012)では、各シーンの光の当たり具合がよく考えられているように感じましたが。
松山 「アマガミSS」ではキャラクターデザインの方と作画監督の方の希望もあり、ちゃんと光の方向で影つけを変えて、色をきれいに見せましょうという方針がありました。
─「アマガミSS」の色使いでほかに気をつけられたことは?
松山 原作であるゲームがあるので、ゲームをプレイした方から「違う!」と思われないように気をつけていましたね。アニメは「1エピソードに1人のヒロイン」というストーリー構成でしたが、ゲームのほかの女の子も常に出てくるので色がかぶらないように注意しました。
─「アマガミSS」では色彩設定だけでなく、一部の話数の色指定・検査もされています。松山さんが色指定・検査をされる話数というのは、規則性があるのでしょうか?
松山 他社さんはよくわかりませんが、AICではめずらしいことではありませんでした。AICの先輩からは「自分で色彩設定やってるんだから、1話と最終話ぐらいは色指定をやったら?」みたいなことを言われて「ああ、そうか」と思いやっていました。最近はちょっと難しくなってきていますが、1話と最終話、オープニングとエンディングくらいは、自分で色指定をやるようにしています。直近の作品でも頑張りました(笑)
─「アマガミSS+ plus」に登場するオリジナルキャラ、森島・セクシー・ジェシカの色使いは、どのように決めていかれたのでしょうか?
松山 監督から「外国人だとわかる感じに」との話があったので、少々ベタかもしれませんが、わかりやすいよう金髪に青い瞳としました。
─「アマガミSS」という大人気作品の制作に参加されたご感想は?
松山 AICという恵まれた環境で作業させてもらっていたので、テレビ画面で観ても思った通りになりました。AICでは自分が作った色に撮影処理が加わり、そして編集が終わると現場でしっかり確認することができたんです。隠れキャラで主人公をストーカーしていた上崎裡沙がすごい印象に残っています(笑)。