「伝説巨神イデオン」から40年、キャラクターデザイナーの湖川友謙氏が振り返る“あの時代”【アニメ業界ウォッチング第68回】

アニメ2020-07-29 12:00

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「機動戦士ガンダム」(1979年)で評価を得た富野由悠季監督が、翌1980年に監督したテレビシリーズが「伝説巨神イデオン」だ。キャラクターデザイナー、アニメーションディレクター、色彩監督を担当した湖川友謙さんは、放送当時30歳。1982年7月の劇場版「THE IDEON 接触篇/発動篇」公開まで2年以上もの間、「イデオン」に関わり続けた。
放送から40年が経過したいまなお、熱狂的に支持される「イデオン」を中心に、湖川さんに1970年代末~1980年代前半のお仕事、富野監督とのやりとりを振り返っていただいた。

イデオンに対して、なにか不満があるとしたら……


── 湖川さんが富野由悠季監督作にキャラクターデザイナーとして初めて参加したのは、「無敵鋼人ダイターン3」(1978年)の敵側デザインでしたね。

湖川 そう、最初は全キャラクターのデザインを頼まれていました。ところが1週間ぐらい用事があって打ち合わせに行けなくて、それから上井草の交番で場所を聞いて、ひとりでサンライズへ行ったんです。すると、おトミさん(富野監督)とプロデューサーの渋江(晴夫)さんと設定制作の人と3人で、ほかの人の描いたキャラクターデザインを見ていました(メインキャラクターデザインは塩山紀生氏)。そのとき、おトミさんが「あっ、マズいところ見られちゃったな」なんて言うんです。私は気にせず、「ほかの人が描いたのであれば別に構いませんよ」と帰ろうとしたんですが、渋江さんに「敵側のキャラクターがまったくできていないので、敵でよかったらデザインしてくれない?」と呼び止められました。渋江さんとは、その後も仲よくさせてもらいました。

── 1978年というと、「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」が8月の公開です(湖川氏は総作画監督を担当)。「ダイターン3」は、その前々月から放送なんですよね。

湖川 実は、「さらば宇宙戦艦ヤマト」の設定制作と「ダイターン3」の設定制作が同じ人だったんです。だから、「さらば宇宙戦艦ヤマト」のスタッフルームで、「ダイターンの次回のゲストキャラはこんな感じです」と聞かされて、その場でデザインしていました。

── 完全に同時進行で進んでいたんですね。「さらば宇宙戦艦ヤマト」には、どういう経緯で参加したんですか?

湖川 タツノコプロ作品の原画をやっている頃、東映動画(以下、東映)からよく依頼が来たんです。東映に横井(三郎)さんという人がいて、私のことを買ってくれていました。横井さんが「湖川ちゃん、東映では毎年4月に長編アニメをつくっているんだけど、キャラデと作監やらない?」と、声をかけてくれたんです。その頃は、もうアニメをやめるつもりでいました。東映の長編アニメで作監できるなら、それを思い出にやめればいいやと考えていました。たまたま、横井さんが持ってきてくれた仕事が「さらば宇宙戦艦ヤマト」でした。「湖川ちゃん、『ヤマト』の続編でもいい? だけど、作監でなきゃイヤだよね?」という感じで。東映とは、不思議と縁があるんです。

── 東映作品では、「超人戦隊バラタック」(1977年)などの各話作監をなさってますね。

湖川 テレビ以外にも、「世界名作童話 白鳥の王子」(1977年)などにも参加していました。「白鳥の王子」を監督した西沢(信孝)さんは、テレビの「銀河鉄道999」(1978年)のチーフディレクターです(湖川氏はキャラクターデザイン・総作画監督として参加)。西沢さんとは仲よくなって、よく飲みに行きました。


── なるほど、東映まんがまつり~「さらば宇宙戦艦ヤマト」~「銀河鉄道999」という流れがあったんですね。「ダイターン3」でのキャラデが気に入られて、「伝説巨神イデオン」(1980年)へと繋がったのでしょうか?

湖川 多分、そうだと思います。おトミさんと「ダイターン3」の設定制作の人が、「最初からぜんぶのキャラを湖川さんに頼めばよかった」と話していたそうですから、それで私に「イデオン」のデザインを依頼してくれたのかも知れません。

── すると、「イデオン」では富野監督とうまくやっていたわけですね?

湖川 おトミさんとは「破裏拳ポリマー」(1974年)の各話演出、各話原画として知り合って以来の付き合いです。他社で切ったコンテの原画をやって欲しいと頼まれたこともあって、実際に何本かやりました。打ち合わせもそこそこに映画やアニメの話を何時間もして、「自分のキャラクターは創ったことないの?」とも聞かれました。お互いに若くて、燃えていたんでしょうね。ただ、「イデオン」には少しだけ不満があって、それは第六文明人の描写なんです。

── 映画「エイリアン」のようにしたかったそうですが?

湖川 そう、第六文明人は地球人より大きいんだそうです。「エイリアン」の巨大な異星人の椅子を見て、おトミさんは「俺がやるべきだったのは、これだったんだ」と驚いたそうです。その気持ちは、よくわかります。でも、だったら「イデオン」の第1話で、第六文明人の生きていた形跡を見せておかないと。イデオンの形がどうのという問題ではなく、使い方がよくないという話です。第六文明人は画面に出てこないわけですから、何とか工夫して、彼らの存在を想像させるべきでしょう?

── 第1話から、イデオン内部には普通の人間サイズの椅子が、間に合わせ的に設置してありましたからね。

湖川 イデオンの頭にある扉からデクが落ちそうになったり、最初から人間の大きさに合わせたメカとしか思えない。それは、おかしいです。イデオンの外観はともかく、おトミさんから相談があれば、内装は樋口(雄一)ちゃんと一緒に、何か面白いものを考えたはずです。イデオンの内装は、自分が関われなかったということも含めて、いまだに不満ですね。

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