アニソンのパラダイムシフトがついに発生!? 話題作だらけで大盛況の2022秋アニメのおススメアニソン10選!【いいから黙ってアニソン聴け! in 2022秋】

2022年11月13日 12:000

・悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました

OP「共感されなくてもいいじゃない/高橋李依」


新しい感覚のメロディラインがとにかく強烈で、一度聴いただけで耳に残ります。耳に残る、ということは、間違いなくいいメロディではあるんですが、いわゆる一般的なグッドメロディの定義からかけ離れているのがこの曲の特徴。

ここで言うグッドメロディとは、メロディの起伏がていねいであることと、シンプルで覚えやすいものであること。基本的にメロディはひとつずつ階段状に上がったり下がったりするルールがあって、ここぞ!のタイミングで一気に四段飛ばし、みたいな駆け上がり方が入ることで感情が高まり、我々はエモくなるわけです(ざっくり説明すると一段一段の音の並びに名前をつけたのがスケールになります)。

一般的なグッドメロディの定義と比べると、この曲は音が上下に激しく動いていてシンプルとはほど遠い、複雑で覚えにくい難解なメロディ。メロディの並び方だけ見ればいいメロディとは言い難いのですが、不思議とこれがとても覚えやすい。

その要因は低い地声と高音域の裏声を行き来する歌い方にあります。最低音から一気にオクターブ上に飛ぶメロディは強烈なインパクトがあり、この部分がメロディの難解さを飛び越えてすぐに覚えてしまうから一度聴いたら耳に残る、ということ。歌よりも「語り」に近いニュアンスが感じられるのも、非常に今っぽい洗練された感覚のある楽曲です。

  

・農民関連のスキルばっか上げてたら何故か強くなった。

ED「ローリンソウル・ハッピーデイズ/ポップしなないで」


この曲もメロディに語りのニュアンスがあり、途切れずに淡々と流れる独特のループ感から生まれる不思議なグルーヴは、中有毒性が高いのでついリピートしてしまいます。

このグルーヴの正体を考えると、おそらくはラップの発展系とするのが正しいような気がします。ドラマチックな展開を見せるメロディがほとんどなく、冷静に言葉をつないでいく曲構成がその証左ではないでしょうか。それでも、楽曲の温度感は低くなく、実は手数の多い各セクションのプレイに静かにアツい熱気が感じられます。

ひょうひょうとしながら、要所でしっかり締める絶妙なバランス感がとても素晴らしい。うらやましい。

  

・おばけずかん!(第2シリーズ)

OP「おばけ ばけばけ ばけがっちゃ!/BMK」


「おはスタ」で放送されているアニメなので、ほかの作品とは毛色が少し異なりますが、楽曲が素晴らしくいいので選出。

これこそグッドメロディのお手本です。シンプルで覚えやすいメロディ、言葉の響きが楽しい歌詞、そして踊りたくなる振り付けもある。子どもの心に確実に刺さる要素だけで構成された、今期もっともキャッチーな楽曲です。

楽曲を手がけるのは、子どもに絶大な人気を誇る「エビカニクス」でおなじみのケロポンズ。シンプルながらも計算され尽くした高度なアレンジに、日本で一番子どもと向き合ってきた音楽ユニットの気概が感じられます。大名曲。

  

・永久少年 Eternal Boys

OP「Dreamy Life/Gentlemen」


曲だけ聴けば王道の男性アイドルソングですが、作品の世界観と地続きになっているのでテーマ性が強く、主題歌でありながら本編の一部のような役割をもっているのが特徴です。

歌うのは劇中で国民的アイドルとして人気を博すGentlemen(のキャストたち)。国民的男性アイドルの楽曲とあって、ジャニーズ系アイドル(主に「嵐」)を彷彿とさせるストリングスが印象的な爽やかな楽曲。質の高いメロディは、アニソンとしてもアイドル曲としてももっと評価されてもいい気がします。

私も今年40歳になり、主人公たちと同世代とあって他人事とは思えないものを感じており、見るたびに40歳まだまだこれから!と勇気をもらっています。

  

・夫婦以上、恋人未満。

ED「Stuck on you/Nowlu」

 

「宇宙規模で騙した今をわたし愛してみたい」の歌い出し一発でつかまれました。

落ち着いたビートに、レイドバック気味のボーカルが重なったらもう答えは「最高!」しかない。心地よいグルーヴは、遠くの夜景を眺めている雰囲気にマッチしていて、エンディングの映像ともバッチリハマっています。センスがいい曲というのは、こういう曲のこと。楽曲の長さがフルでもほぼ3分というのも、センスが爆発していて素晴らしくいいです。

本編の雰囲気とまったくつながっていないことが、結果として本編を見たあとの余韻を受け止める受け皿になっているのが面白いですね。本当にすごい曲。

 

・後宮の烏

OP「MYSTERIOUS/女王蜂」


このコラムはランキング形式ではありませんが、強いて一番を選ぶとすれば「後宮の烏」オープニング曲「MYSTERIOUS」になります。今期1位!

女王蜂は、作品の世界観に寄り添った楽曲をリリースするごとにバンドの表現力が段違いに深くなっていき、この曲で誰も追いつけない深いところまで突き抜けた感じがあります。彼らが得意とする、生き急ぐような性急なビートはなりを潜め、代わりにビッグバンドを思わせるアダルトでジャジーなビートを鳴らすところに、バンドが新しいタームに入ったことを感じさせます。

最後まで感情が爆発しないタメが効いた展開には、静かな狂気が奥底で渦巻いているかのよう。そのタメも相まって抑制の効いたボーカルにも、狂気をはらんだすごみを感じます。

あらためて、今期1位は「MYSTERIOUS」になります!

 

以上、今期10曲選出でした!

 

およそ5年にわたってクールごとにすべてのアニソンを聴いて超個人的な趣味嗜好で10曲選出してきた当コラムですが、先にも述べましたとおりアニメ作品を取り巻く環境が著しく変化しアニソンもその役割を含めて変革の時期を迎えている現状を鑑み、時代に合った形での新しい発信の方法を探りたいと考えております。

したがって、コラム形式はいったん今回までとなります。とか言いながら、来年の冬アニメの時期になんでもないような顔をして復活、なんてことも万が一あるかもしれませんが、来年は「いいから黙ってアニソン聴け!」を再編リニューアルする予定です。リニューアルしたところでこれまでと同じ批評性も革新性もないただの定点観測であることには変わらないかもしれませんが、皆様に楽しんでもらえるようなコンテンツになるよう尽力いたしますので、ぜひ楽しみにお待ちいただけますと幸いです。

 

それでは、また新しいアニメが放送される頃にお会いしましょう!

(文/出口博之)

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