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中国でいよいよ明確になっていくオタクのジェネレーションギャップ
日本でもオタクのジェネレーションギャップは存在しますが、中国では経済状況やネット環境などの変化の速さから、作品の入り方や広まり方、オタクが交流する環境などが数年も経てば激変してしまうので、日本以上に極端なジェネレーションギャップが発生している模様です。
00年代半ば頃から中国でオタク文化を形作っていった世代も今では中年になっていますし、現在の中国のオタク界隈で元気な若い世代との間には、感覚や好みについて日本の感覚で見た年齢差による違いよりもさらに大きな違いが生じているといった話もあります。
実際、近年の中国のオタク界隈では、よくも悪くも以前の傾向とは異なる大人気作品や新たな流行が出現したり、上の世代にとって「好みではない」「評価が低い」ような作品が人気になったりしています。またそれを認める・認めないで、オタク同士のちょっとしたゴタゴタが発生するなどといった事例も珍しくありません。
中国のオタクの方々の話によれば、こういった変化としてわかりやすいのはやはりキャラクターデザインなどの見た目だそうですが、ストーリーの好みに関する変化やそれによる人気への影響もわかりやすい形で出ているそうです。
中国ではオタク向けに限らず以前から、ストーリー重視、世界観の大きさ・深さで作品が評価される傾向がありました。しかしこの傾向が消えたわけではないものの、近年人気になっている作品に関しては爽快感重視で、ストーリーの整合性や設定の深さはある程度無視している作品や、積極的に理解しようとしなくても気軽に楽しめる、話題にしやすい内容の作品が増えているとのことです。
これは以前の中国ではあまり評価されていなかった日本の異世界転移・転生系の作品の需要が増加していることや、大当たりは少ないものの堅実な人気を獲得できるようになってきている理由のひとつだとも考えられるそうです。
またほかにもラブコメ展開に対する「価値観の問題」を掲げた批判の増加など、昔と比べて何かと許容範囲が狭くなっている、批判からの炎上につながりかねない要素やストーリー展開が明らかに増えているのも無視できない変化だそうで、これは現代中国のネットで簡単に通報ができる環境とも組み合わさって極めて難しい問題になってきている模様です。
このような背景もあってか現在の中国のオタク界隈ではひと昔前の大人気作品に関して
「キャラクターデザインが好みではない、絵柄が古く感じる」
「じれったい展開が多い、爽快感が足りない」
「価値観がおかしいキャラがいる」
などといった否定的な意見も出るようになっているそうで、中国のオタクの比較的上の世代では困惑する人も少なくないとのことです。
中国の古参のオタクで二次元分野の業界を見続けてきた人からは
「実は『古い作品の絵柄は好きではない』というのは我々の世代も昔言っていたことです。考えてみれば当然の話なのでしょうが、自分がいいと思っている作品が実際にそう言われているのを見るとなんとも言えない気分になりますね」
「最近は自分のセンスに頼って人気を予想するのも難しくなってきています。昔は中国のオタクという集団におけるオタク向け、二次元文化というイメージを共有できていましたが、現在は世代や集団ごとの好き嫌いの違いを意識する機会が増えています。私たちの世代が面白くても下の世代が面白いと感じているかはわからないと考えることも増えました」
「評価する内容に関してだけでなく、今後は『NARUTO -ナルト-』や『BLEACH』などの名作の思い出の話題に関しても世代の違いを意識させられることが増えるのだろうと覚悟しています」
などといった話もありました。
私自身も、環境が変わり続ける中国のオタク界隈を見ていると、昔現地で中国のオタク事情を追いかけていた頃の感覚を過信してはらなない、知識や判断材料を意識して更新し続けなければならないと実感してしまいますね。
(文/百元籠羊)