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中国伝統の恋愛的な「好き」の修正と言い換えに新たなパターン
以前の記事でも書かせていただいた昨年9月に中国で発生して現地でかなり大きな話題となった「ウルトラマンティガ」の配信中止事件ですが、その際に一緒に配信中止となっていた「Re:ゼロから始める異世界生活」の第1期が12月の終わり頃にひっそりと復活したそうです。
しかし配信復活後の作品にはイロイロな修正が行われていたそうで、中国のほうではまた何かと話題になっているとのことです。
そんな「リゼロ」第1期の新たな修正(自主規制?)で目を引くもののひとつが
「中国語字幕の修正」
だそうで、特に「好き」という言葉に関して修正が入っているのが目立つのだとか。
中国のオタクの方に教えていただいた情報によると、以前の中国語字幕では「好き」という言葉はごく普通に訳されていたそうですが、修正後の字幕では「助ける」や「気にかける」といった意味の訳語に変更されるなど、恋愛要素をそぎ落とした言い回しになっているそうです。
もっとも、日本のアニメでは頻繁に「好き」という言葉が出てくるので中国のアニメ視聴者にとって「好き」という言葉は「基本的に字幕で見ている人にとっても耳慣れた言葉」になっているそうで、この字幕の修正に気付いて違和感を覚えてしまう人もかなり出ているとのことです。
こういった恋愛要素の規制、修正の問題については中国社会における「早恋」という概念も影響している模様です。この「早恋」は主に小さい子どもや若者(昔は高校生くらいまでだったようですが近年は上限が下がっているという話も)の早すぎる恋愛といったもので、中国ではそれが好ましくないどころか有害、悪であり御法度だという何かと強めな考えがあります。
中国の現地校に子どもを通わせていた元駐在員ご夫婦から聞いた話によると、学校でも先生から保護者へ「早恋はダメ」と強い指導があって驚いたとのことですし、中国社会ではさまざまなところで出てくる考え方のようです。
さらに中国では、ことに子どもは「正しく潔癖」に管理するべきだという考えも加わるそうで、中国のオタクな人からも「小さい頃や若い頃に自分が楽しんだ作品であっても、恋愛要素のある作品を自分の子どもには見せたくない……」といった話が出てくることも珍しくはないようです。
実際、中国における日本のアニメに対する「子どもに悪影響を与える」という批判に関しては、バイオレンスやポルノ的な内容に加えて、子どもの恋愛が描かれているというものも含まれています。
そういった背景もあることから、さまざまな形で娯楽全般に対する圧力がかかっている現在の中国で安全重視に行こうとする場合、恋愛部分は真っ先に自主規制しておくべき要素のひとつとなっている模様です。
ちなみに中国では、昔日本のアニメがテレビで放映されていた際にも、恋愛要素のあるシーンは基本的にカットや修正が行われていたそうです。またキスシーンや告白シーンなどにカットや修正が入る際にはそれぞれ「踊りましょう」や「いい人ですね」などといった定番の修正方法があり、古い世代のオタクの間では何かとネタになる話題でもありました。
例えばかつて中国のテレビで「新世紀エヴァンゲリオン」が放映された際にも、やはりさまざまなシーンが削除修正されていました。その中の恋愛要素のからむシーンに関しては、アスカが寝ぼけてシンジの布団に入ってくるシーンでは「つまみ食いをした」という食いしん坊的な方向の言い合いになり、シンジとアスカのキスシーンでは「一緒に歌いましょうか」というものになっていたそうです。
このような昔の事例を体験している人たちからすると、この「リゼロ」の字幕の言い換えに関してはイロイロと複雑な気持ちになるようです。
中国の古参のオタクの方から聞こえてくる話では
「まだそんなことをやっているのか……」
というのもあれば
「今度はそう来たか!」
といったものもあり、頭を抱えたくなると同時に新たな修正パターンにちょっと面白みを感じてしまったりもするようです。
またそれとは別に中国のオタクな方々からは
「人口減少対策が叫ばれている横で、若者向け作品の恋愛要素に関する規制が強化されていく状況に関しては何とも言えない気分になります」
「偉い人や保護者が子ども、若者を恋愛から遠ざけたいというのも理解はできます。しかし急にそこから結婚しろ、子どもはまだかと言われても困ります」
といった話も聞こえてきます。
近頃の中国における規制や自主規制が強まっていく流れやその方向性に関しては、過去に行われてきたものに比べてさらに混乱や迷走気味な部分もあるのかもしれませんね。
(文/百元籠羊)