「パトレイバー」をアカデミックに考察! webセミナー「パトレイバー塾」第2回「本気で作るパトレイバー」リポート

2021年12月24日 10:300

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「機動警察パトレイバー」で描かれる10年後の近未来、日本の社会環境のあり方をアカデミックに考察するwebセミナー「パトレイバー塾」の第2回が、2021年12月18日にインターネット配信された。

第2回のテーマは2本立て。前半では「未来都市の多摩エリアはパトレイバーの舞台になるか?」。後半はグローバルに展開する自動車部品メーカー、株式会社デンソーより光行恵司 東京支社長を迎えて、イングラムの内部資料なども参考に「レイバーを本当につくるなら?」というトークが繰り広げられた。

出演者は、矢部俊男さん(森ビル 都市開発本部 計画企画部 メディア企画部 部長)、小林あずささん(女優、アナウンサー)、廣瀬通孝さん(東京大学名誉教授)、光行恵司さん(株式会社デンソー 東京支社長)。

矢部さん、廣瀬さんは、第1回に引き続きの出演となる。

 

進行役を務める矢部さんは、「機動警察パトレイバー」劇場版1作目、2作目を視聴し、作中で描かれる都市再開発の情景から都市計画、都市開発に興味を持ち森ビル株式会社に入社したという、筋金入りの「パトレイバー」フリーク。アカデミックな話題と「パトレイバー」の話題を、ボーダレスに行き来する語り口は前回に続いて非常に滑らかだ。

 

多摩は次世代パトレイバーの舞台になりえるか?

さて、今回の「パトレイバー塾」のテーマは先述の通り、2本立て。

1本目のテーマは「未来都市の多摩エリアはパトレイバーの舞台になるか?」。

ここでは「パトレイバー」世界に大きな影響を与える「バビロンプロジェクト」についての再考からスタート。東京湾内を埋め立てて来たるべき地球温暖化による海面上昇に備えるという国家プロジェクトである「バビロンプロジェクト」は、採算性が悪いのではないか。ということで、番組では「ポストバビロンプロジェクト」として、多摩地区を活用する「エデンプロジェクト」が提唱された。

 

小林あずささん(左)、矢部俊男さん

多摩地区と言えば、八王子に篠原重工の工場があることから、わりと頻繁に劇中に登場する土地である。

とはいえ、関東圏以外の住人以外には多摩地区の想像がつかないだろうということで、まずは小林さんから、よくわからないという視聴者に向けて多摩のイメージが語られる。

「手軽に都心から登山できる山がある」「大学が多い」「(ドラマ、映画などの)撮影所が多い」「府中競馬場は幅広い世代が訪れる」「夏は花火大会がある」といった、一般的な、明るいイメージが開陳されるいっぽう、矢部さんからはいわゆる多摩地区の「負の側面」が語られる。

多摩ニュータウンが抱える構造的な問題や、各種鉄道網の裏話、戦前の立川、横田、入間は最先端技術の集積地だったという。

 

また廣瀬さんより、人類の社会はSociety1.0狩猟社会>Society2.0農耕社会>Society3.0工業社会>Society4.0情報社会>Society5.0超スマート社会という段階を追って変遷していくことが語られ、多摩地区こそがSociety3.0工業社会の申し子であることが語られる。

その理由に、立川飛行場の存在があるという。

飛行機はさまざまな先端技術の集合体であるがゆえにさまざまな工場が寄り合ったり、飛行機を飛ばすための広大な土地を持っていたりといった理由から、戦前~戦後を通じて作業や人が集まるエリアができあがったと廣瀬さんと矢部さんは語る。

 

そういった土地を舞台にしたエデンプロジェクトは、バビロンプロジェクトに代わる次世代の「パトレイバー」の舞台になりうるか、というのが第1部の主題である。

 

廣瀬通孝さん(左)、光行恵司さん

興味深かったのが、「バビロンプロジェクトの時代は、立ち向かおうという元気な時代だった。でも、今は逃げてもいいという時代」という廣瀬さんの言葉だ。

「パトレイバー」が発表された1980年代末は、まだバブル景気の影響下にある時代である。こういう時代だからこそ、災害や環境の変化に対して立ち向かうというマッチョな思想が自然に生まれてきたのだろう。しかし、無理に沿岸にインフラを構築するのはコストも高いし水害の危険性もある。また、すでに長い歴史の中で蓄積されていた資産や土地があり、さらには堅い岩盤を持つ多摩地域を舞台にするのが、現代の「パトレイバー」の世界設定としては理にかなっているのではないだろうか。というのである。

 

今後の「パトレイバー塾」では、引き続き多摩地区をさらに深掘りすることで、より具体的に「次世代のパトレイバー」への提言をしていくそうなので、第3回以降にも注目したい。

 

第2部のテーマは「レイバーを本当につくるなら?」

ここで、改めて株式会社デンソーの光行恵司 東京支社長が紹介される。

なぜデンソーがここで登場するのかというと、矢部さんが「パトレイバー」に登場する工業メーカー・篠原重工の歴史を振り返った時、「トヨハタ自動車」の部品メーカーからスタートしたという設定を目にした時、もとはトヨタ自動車の一部品工場であり、そこから分社化したというバックボーンを持つデンソーのことが思い出されたためだそうだ。

 

というわけで「電動化」「ロボットの制御」「自動運転技術の活用」「快適なコックピットを作るには」「お金の話」という5つのテーマのもと、ここではレイバーを本当につくるうえでの課題が検証された。

 

 

今回の配信のハイライトはここからで、各ジャンルのプロフェッショナルである出演者たちが、現実の最先端技術や概念を、ほとんどかみ砕くことなく語り合うという光景が繰り広げられた。

面白いもので、普通こういう技術の話や学術的なトークを見聞きしていると、置いてけぼりな感覚を覚えがちなのだが、「パトレイバー」の世界に紐づけて語られることで100%話の内容がわからないながらも、なんとなくでも興味がわいて耳を傾けられるのである。

きっと技術や未知の学問への興味は、こういう形で醸成されていくのだろう……そんな風にも思えた。

また、大真面目にレイバーの実現可能性について語り合う出演者の姿から、「パトレイバー」という作品が現実世界の延長線上にあり、よく練られた設定を持つ強度の高い作品であることが再認識できた。

 

個人的には「お金の話」で出てきた、「レイバーは自動車のパーツを流用することでコストカットできるのでは」という話題である。「レイバー」という新たなカテゴリの機械を開発するうえで、1から新たなパーツを使うのはあまりにもコストがかかりすぎる。しかし、すでに大量生産されている自動車パーツを使うことで、大幅に生産コストを抑えられるのではないか、というのである。

奇しくも、篠原重工がトヨハタ自動車の部品生産からスタートしたという設定にも、デンソーがトヨタ自動車の部品工場に出自を持つ部品メーカーであるという実際のエピソードにも通じるように思えた。

 

また、現代ならではの考え方としてサブスクリプションサービスで運用されるレイバー。故障したレイバーを回収して整備するというサイクルを持つ企業が一番儲かるのでは。OSに蓄積されたデータそのものが重要だと考えられるので、データカンパニーも需要があるのでは。などなど、「パトレイバー」をトリガーにどんどん話題が転がっていく2時間の配信であった。

 

普段から親しんでいるアニメを通じて、最新技術や歴史などさまざまなジャンルの知識を獲得できる「パトレイバー塾」第2回であった。

 

 

なお今回の配信を視聴するためのチケットは2021年12月24日23時59分まで販売されているので、まだ観ていないという方は急いでチケットを購入しよう! アーカイブ視聴は2022年1月1日23時59分まで。 

【イベント情報】

■パトレイバー塾第2回「本気で作るパトレイバー」

・開催日時:2021年12月18日(土)15:00~17:00

 生配信終了後、アーカイブ視聴は2022年1月1日(土)23:59まで

・会場:Fabeatsパトレイバー塾(第2回)webセミナー視聴ページ

・出演者:廣瀬 通孝(東京大学名誉教授)、光行 恵司(株式会社デンソー 東京支社長)、 小林あずさ(女優、アナウンサー)、矢部 俊男(森ビル 都市開発本部 計画企画部 メディア企画部 部長)

 

<チケット>

【学生専用】視聴チケット(500円)

【パトレイバーファンクラブ会員専用】視聴チケット(1,000円)

【一般】視聴チケット(2,000円)

【団体】25名分視聴チケット(37,500円)

【団体】50名分視聴チケット (75,000円)

 

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