最高の音響と空間から届ける配信ならではの“大人の”アニサマ──「Animelo Summer Night in Billboard Live」レポート

2020年09月03日 19:080

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「Animelo Summer Night in Billboard Live」(以下、アニサマナイト)が2020年8月30日、Billboard Live YOKOHAMAにて開催され、オーイシマサヨシさん、鈴木愛奈さん、鈴木雅之さん、鈴木愛理さん、TRUEさん、早見沙織さん、三森すずこさん、森口博子さん、およびアニサマバンドが出演した。

「アニサマナイト」は、STAY HOMEでも本格的なアーティストライブを届けることを目的としたオンライン配信ライブイベント。自宅で夜楽しむ有料配信イベントという性格もさることながら、会場となったBillboard Live YOKOHAMAは、2020年4月に予定されていたこけら落とし公演に、伝説的ミュージシャンのバート・バカラックを招いていたことからもわかるように、「大人のための本格的なライブハウス」である(なお同公演は新型コロナウイルスの影響で中止となった)。

というわけで、本公演はお酒を片手に生バンドで超実力派アーティストのパフォーマンスを楽しむコンセプトのライブとなった。

 

なお「アニサマナイト」はニコニコ動画、およびLINE LIVE-VEWINGにて同時配信されたが、ここではニコニコ生放送での視聴体験をレポートする。

 

アーティストのパフォーマンス&アニサマバンドの演奏が高い次元で融合!


ライブ当日に練習風景をSNSで動画配信したり、配信スタートの約5分前から準備の様子を配信したりする臨場感はオンラインならでは。生バンドセットは距離をもって配置、各メンバーはアクリルボードで隔離されている。配信ライブではあまり記憶にないほど音響環境はよく、相当にセッティングを追いこんでいることがうかがえた。

 

鈴木愛奈

 

夏の夜を彩るライブのトップバッターは鈴木愛奈さん。「やさしさの名前」で気持ちよくビブラートを響かせると、歌唱のうまさを絶賛する声や彼女の民謡経験を指摘するコメントが画面を流れていく。

そして鈴木さんが「みなさん、こんばんはー!」と画面の向こうに語りかけると、「こんばんは」の弾幕が画面を流れる。画面上のコメントは、アーティスト側にも見られるようになっているのが今回の特徴のひとつだ。生ライブなのに、コメントとのやりとりが行われるというのも不思議な感覚だが、コール&レスポンスがリアルではできない昨今、ニコ生というツールを通じてコミュニケーションが成立しているのが面白い。

 

鈴木愛奈

 

好きな色のサイリウムで照らしてほしいと頼んだ鈴木さんは「ヒカリイロの歌」へ。圧倒的な歌唱力と安定のパフォーマンスを見せつけたり、「会いたい」のひと言にとびっきりのエモーションを込めてきたりと、いつまでも見ていたくなるステージだった。

 

オーイシマサヨシ×鈴木愛奈

 

鈴木さんの歌声に「エモーい!」と感嘆しながら現れたオーイシマサヨシさんはノリのいいMCで場を盛り上げると、オーイシマサヨシ×鈴木愛奈のコラボを提案。アコースティックギターをラフに携えたオーイシさんが奏で始めたのは松任谷由実さんの「やさしさに包まれたなら」だ。オーイシさんのやさしい歌声に、鈴木愛奈さんはサビから合流。するとオーイシさんは自然に上ハモへスライドして歌い続ける。アニサマバンドも自然に合わせていく。このセッション感が、まさしく大人のアニサマナイトという感じだった。

 

オーイシマサヨシ

 

続いてアコギの早弾きを聴かせたオーイシさんは「アニサマナイトじゃなきゃ、ダメみたーい!」と叫んで「君じゃなきゃダメみたい」へ。この歌がきっかけとなり、7年前にアニサマに初出演した感謝を語ると、そのま流れるように「おかげでキンカン社に中途採用されまして」と、今年自身がCMソング担当&“広告宣伝課長”としてCM出演を果たしたキンカン社の話へ。

 

オーイシマサヨシ

 

ここから歌うのはもちろんCMソング「キンカンのうた2020」なのだが、哀愁漂うトランペットとピアノでイントロをやりすぎなぐらいかっこよく仕上げるのがアニサマナイト流。プロフェッショナルの大人たちが本気で遊ぶ時間だ。曲中の長台詞や、歌い終わりのコミカルフェイスまで、全てをバチッとやりきったオーイシさんだった。続いては「世界が君を必要とする時が来たんだ」でかっこよさに全振りし、コミカルとかっこいいを行ったり来たりする振れ幅の大きなオーイシマサヨシ劇場で視聴者を魅了した。

 

先ほどのオーイシさんと鈴木愛奈さんとのMCで「民謡(出身)の鈴木さん」「アイドルの鈴木さん」「とんでもない鈴木さん」が出演していて……というくだりがあったが、これは当然フリ。今度オーイシさんが呼びこんだ「鈴木さん」は「とんでもないほうの鈴木さん」こと、鈴木雅之さんだった。

 

鈴木雅之 with オーイシマサヨシ

 

オーイシさんは鈴木雅之さんの40th Anniversaryアルバム「ALL TIME ROCK‘N’ROLL」にも参加しており、鈴木雅之さんからは「まさよし」と呼びかけられるファミリー的関係だ。そして、同アルバムで、鈴木さんからオーイシマサヨシさんと声優の山寺宏一さんにオファーしてカバーした楽曲が「夢で逢えたら」だった。今回、鈴木雅之 with オーイシマサヨシとして歌った「夢で逢えたら」では、キャリア40周年の「アニソン界の大型新人」に、少年のようにキラキラした瞳のオーイシさんがついていく姿が印象的だった。山寺さんの語りパートは、今回はオーイシさんが担当。

歌詞の一部を「アニサマ」に変える歌詞替えは定番ネタだが、昨今の状況の中で聴く「アニサマで逢えたら素敵なことね」のフレーズにはひときわ特別な響きがあった。

 

鈴木雅之 feat. 鈴木愛理

 

そして、“大型新人”としての鈴木雅之さんといえば「かぐや様は告らせたい」関連曲だ。お相手の鈴木愛理さんを呼びこむと、2人で「DADDY ! DADDY ! DO !」を披露。鈴木雅之さんはアニメ「かぐや様」第2期を振り返りながらMCを行なったのだが、鈴木さんの口から石上会計の名前が出るだけでも面白い。かぐやと会長の心情に重ねながら「DADDY ! DADDY ! DO !」を歌った……という話をしている背後で、アニサマバンドがさらっとグラサンをかけて大型新人への敬意を示していた。

 

ここでちょっとしたサプライズだったのが、「かぐや様は告らせたい」第1期の主題歌であり、アニソン界の大型新人鈴木雅之さんの原点である「ラブ・ドラマティック」のfeat.鈴木愛理バージョン披露だ。2曲を通して感じたのが、“超大型新人”の隣で華やかに咲き誇る鈴木愛理さんの非凡さ。まったく求められる要素の違う2曲のコーラスに完璧に対応しながら、堂々と歌い踊る存在感。人生の大半をアイドルという道に捧げてきた存在の強度と、彼女ののびのびとしたパフォーマンスを引き出した鈴木雅之さんの懐の深さを感じた。

 

なんてカラフルなライブ! これまでの歴史と未来への希望に満ちた終盤戦


ここまでの前半戦を鈴木雅之さんは「スズサマナイト」と表現していたが、ある意味もうひとりの「すずさま」が三森すずこさんだ。休憩明け、ステージにすっと立って登場した三森さんは「夢飛行」をしっとりと聴かせた。

 

三森すずこ

 

「Fly Me to the Star」はアニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」のEDだが、今回は三森さんが大人のテイストのソロで披露。アニメではさまざまな組み合わせのデュオで歌われたかけあいの曲だが、今回のライブではフルートやピアノの音の立たせ方がひとつひとつ素晴らしく、ボーカルと対話しているような表現だった。

 

三森さんは「九九組のみんなの想いも背負って『Fly Me to the Star』を歌わせていただきました。今年アニサマでカバーしたかったなーという楽曲を歌いたいと思います」と語ると「薔薇は美しく散る」へ。「ベルサイユのばら」は「スタァライト」のルーツのひとつを思わせる作品であり、漫画原作からテレビアニメ、実写映画、ミュージカル。そして宝塚歌劇団による舞台と、さまざまな形で語り継がれている不朽の名作だ。かつて宝塚音楽学校の最終試験まで残ったという三森さんには、この上なくぴったりな楽曲だ。いつかスタァライト九九組のステージで見たい楽曲が、またひとつ増えた気がした。

 

早見沙織

 

Billboard Live YOKOHAMAという大人の空間がある意味一番似合っていたのが早見沙織さん。ドレス姿で登場した早見さんは「やさしい希望」をボサノババージョンで披露。吐息のような歌声から少しずつ世界が広がっていくような歌唱だ。驚いたのは「Jewelry」で、きらびやかな楽曲をパワフルで、時にいたずらっぽい歌唱で場の空気によりぴったりな音に仕上げていた。そんな早見さんがビルボードでぜひやりたいと持ってきた楽曲が「ESCORT」。メンバー紹介を繰り広げながら、ジャジーで大人な空間を作り上げた。

早見沙織

 

森口博子さんは「鳥籠の少年」「フリージア」「君を見つめて -The time I'm seeing you-」を披露。「フリージア」ではアニサマバンドの今井隼さんのピアノ1本で、「君を見つめて -The time I'm seeing you-」ではヒロムーチョさんのサックスを大きくフィーチャーしたバンド演奏と、森口さんの生の歌声が響きあうステージを披露した。もうひとつの主役と言うべきサックスの極上の響きはこの会場、この環境のライブだからこそ配信できたものだった。

森口博子

 

「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」では、森口博子さんとTRUEさんという歌姫の共演が実現。トークでは大先輩との共演に恐縮しながらも、パフォーマンスでは真っ向から渡り合っていくTRUEさん。サビでは主線を歌わない側がコーラスを担当していて、どちらのパートでもあまりにも美しく響き渡った。

 

森口博子 with TRUE

 

TRUEさんは2020年9月18日に公開される「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」への想いを語ると、同作主題歌「WILL」へ。万感の想いを込めた歌唱を響かせた。

ラストスパートはいつも通りのアニサマということで、「Another colony」へ。テンションが突き抜けるような歌唱は、ここがさいたまスーパーアリーナであるように一瞬錯覚したほどだ。TRUEさんはカメラの向こうにファンがいて、一緒に盛り上がっていることを確信しているようで、曲中のあおりも普段以上に激しかったのが印象的だった。

ラストは「みんなで一緒に音楽しようぜ!」と宣言すると「DREAM SOLISTER」へ。客席のPPPHをあおる動きに、アニサマバンドのメンバーの一部が応えていたのもハッピーな光景だった。ラストは“みんな一緒に”ジャンプでステージを締めくくった。

 

TRUE

 

ここでスクリーンには「back to the beginning...」の言葉が。コメントがざわめく中、映し出されたのは、「Animelo Summer Live 2005 -THE BRIDGE-」で「夢光年」を歌う若き日の長老・影山ヒロノブさんの姿だった。「Animelo Summer Live 2005」については映像化されていないため、まさに幻の映像だ。

視聴者がアニサマの15年に想いを巡らせる中、現実に戻った映像には森口博子さん、TRUEさん、三森すずこさん、早見沙織さん、鈴木愛奈さん、オーイシマサヨシさんの姿があった。歌うのは「ONENESS」。「Animelo Summer Live 2005」の主題歌だ。今回欠席となった仲村宗悟さんも収録ボーカルという形ではあったが参加していた。アニサマのテーマ曲はライブのトリに出演者の多くがステージに登場して一緒に歌う「大団円」感が重視される楽曲だが、ここまで歌声のひとつひとつが洗練されて溶け合う「ONENESS」は初めて聴いた気がした。

 

森口博子、TRUE、三森すずこ、早見沙織、鈴木愛奈、オーイシマサヨシ

 

これにて本編はラストとなったのだが、プレミアム会員向けのアフタートークではオーイシマサヨシさん、三森すずこさん、鈴木愛奈さんによる振り返りや裏話が語られた。

番組終わりには、オーイシさんのサプライズ結婚祝いからそのままなだれ込むという、まさかのつなぎからの「なんてカラフルな世界!」スペシャルバージョンを披露! 

オーイシマサヨシ、三森すずこ、鈴木愛奈

 

来年に延期されたアニサマ本番よりひと足早くこの曲を生配信で見られる、嬉しいサプライズだった。

 

オーイシマサヨシ、三森すずこ、鈴木愛奈

 

(取材・文/中里キリ)

 
【セットリスト】

M01:やさしさの名前(鈴木愛奈)

M02:ヒカリイロの歌(鈴木愛奈)

M03:やさしさに包まれたなら(オーイシマサヨシ×鈴木愛奈)

M04:君じゃなきゃダメみたい(オーイシマサヨシ)

M05:キンカンのうた2020(オーイシマサヨシ)

M06:世界が君を必要とする時が来たんだ(オーイシマサヨシ)

M07:夢で逢えたら(鈴木雅之 with オーイシマサヨシ)

M08:DADDY ! DADDY ! DO !(鈴木雅之 feat. 鈴木愛理)

M09:ラブ・ドラマティック(鈴木雅之 feat. 鈴木愛理)

M10:夢飛行(三森すずこ)

M11:Fly Me to the Star(三森すずこ)

M12:薔薇は美しく散る(三森すずこ)

M13:やさしい希望(Bossa Nova)(早見沙織)

M14:Jewelry(早見沙織)

M15:ESCORT(早見沙織)

M16:鳥籠の少年(森口博子)

M17:フリージア(森口博子)

M18:君を見つめて -The time I'm seeing you-(森口博子)

M19:ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~(森口博子 with TRUE)

M20:WILL(TRUE)

M21:Another colony(TRUE)

M22:DREAM SOLISTER(TRUE)

M23:"夢光年 (Animelo Summer Live 2005 -THE BRIDGE- ver.) ※Special VTR"(影山ヒロノブ)

M24:ONENESS(森口博子、TRUE、三森すずこ、早見沙織、鈴木愛奈、オーイシマサヨシ)

M25:なんてカラフルな世界!(オーイシマサヨシ、三森すずこ、鈴木愛奈)

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