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ビクター時代のSee-SawがコンプリートされたDISC3
── DISC3には、3rdアルバム「Dream Field」の曲順に準じて、活動再開後のビクターエンタテイメント時代の楽曲が収録されています。See-Sawの再出発のきっかけとなったのは14曲目の「indio」ですね。その当時の思いを振り返っていただけますか? 梶浦 当時は「再出発」という仰々しい感覚ではありませんでした。私が「NOIR(ノワール)」という作品の音楽を担当していて、「この作品に『indio』は合うよね。じゃあ歌ってくれるか、ちーちゃんに連絡してみよう」という、あくまで挿入歌目線で始まったんです。その後、周囲の方に曲を気に入っていただけて、再活動につながっていったのはあくまでうれしい流れというか……。きっかけって、きっとそんなふうにささいなものですよね。
── 「NOIR(ノワール)」と同じ真下耕一監督作品の「.hack//SIGN」でオープニングテーマ「Obsession」とエンディングテーマ「優しい夜明け」を歌ったのが、See-Sawの再出発、最初の作品となりました。 梶浦 「Obsession」は、当時の感覚でまた新たなSee-Sawというか……。昔からのSee-Sawの流れに、再出発当時の自分好みのサウンドをめいっぱい盛り込んだ、そんな感覚の曲でしたね。歌詞も英語だし、今思うとよく真下監督がこの曲をオープニングテーマとして受け入れてくださったなと。真下監督とのお仕事はそういったことばかりです。こちらの提案に簡単にNOは言わずに、むしろいつも面白がって受け入れてくださいました。
── 「機動戦士ガンダムSEED」のエンディングテーマ「あんなに一緒だったのに」は、See-Sawがより多くのアニメファンに知られるきっかけになりました。 石川 「あんなに一緒だったのに」はSee-Sawとしては大きな転機でした。まだ評価をいただけてない苦しい時期に、毎週1曲は必ず作るというミッションがあり、ひたすらストック曲を増やしていた、その中の1曲が目に止まり、さらに2人でガンダム作品へと生まれ変わらせました。See-Sawにとって、ようやく羽ばたくための翼を手に入れた瞬間で、うれしかったです。
梶浦 やはり本当に大きな、ありがたい転機でした。多くの皆様にSee-Sawの名前を知っていただくことができましたし、それが結局、その後2人がソロで活動して行けるパワーにもなりました。個人的なことを言えば、私は当時サウンドトラックの仕事が中心になっていましたが、この曲によって「歌も書く人」と認識してもらえたかなと思っています。
── 以上のアニメ主題歌を含む3rdアルバム「Dream Field」は、2003年2月にリリースされました。どのような作品になったと感じていますか? 石川 See-Sawとしてヒット曲にも恵まれ、一番聴いていただくことができたアルバムだったと思います。個人的に自分が繊細に大事に歌ってきた楽曲が、すべてこのアルバムに収められ、Saw-Sawとしてやりきったという気持ちで送り出したアルバムです。
梶浦 デビューして1枚目、2枚目のSee-Sawのアルバムは、私は1曲もアレンジに加わることができませんでしたし、選曲の権限もほぼありませんでした。時代もありますし、単純に自分の力不足も大きかったんです。この3rdアルバムは本当に思う存分、自分勝手にやったと思っています(笑)。アマチュアの頃から、See-Sawとしてやりたかったのはこういうことだったんだよ、というモノをやっと出せた、というやり切った感が、当時非常に強くありました。See-Sawの活動を通して、またその後のサウンドトラックのお仕事を通して、いろいろな方に育てていただいた結果、とてもいいタイミングでこの3rdアルバムをリリースできたことを心底感謝しています。
── アルバム「Dream Field」以降にリリースされた「君は僕に似ている」は、今のところSee-Sawの最後のシングルとなっています。この曲の印象も、お聞かせください。 石川 「君は僕に似ている」は、作詞にあたって、タイトルを先に明確に思いついて、一人称でひとり呟いていくようなスタイルの歌詞にしました。制作中に「2番の歌詞に、より石川さん本人を感じる」という助言をいただいて、1番と2番を差し替えたという経緯があります。「ガンダムSEED」シリーズのシリーズ構成・脚本を担当されていた両澤千晶さんには感謝しています。
── アニメーションと出会うことによって、See-Sawの音楽はどのように変化していったと感じていますか? それとも変わっていないのでしょうか? 石川 アニメーションで変化したというより、むしろSee-Sawとして逆に本質を出せるフィールドを手に入れたという気がします。See-Sawは当時のJ-POPシーンとベクトルの違うものをよしとしていたし、その場所で右往左往するのはSee-Sawとして不幸せだったと思います。
梶浦 See-Sawの音楽は不変ではありませんが、それは時代によって多少変化した2人の音楽性といった内向的な問題で、正直アニメーションというフィールドと出会ったことにはあまり影響を受けていないかもしれません。むしろ今までやりたくてもなかなか発表する機会のなかった音楽が、アニメーションというフィールドで暖かく受け入れてもらえた、という感覚でした。
── 「Dream Field」リリース時の公式サイトで、梶浦さんは、See-Sawは自分の原点であり、「一生“See-Saw”を自分の中のどこかに置いておきたい、それが私の夢なんです」と語られていました。今、この時点でお2人はSee-Sawについて、どのように考えていますか? 石川 17年以上経って、前触れもなく一夜限りのライブが開かれ、特に意図してなかったところでコンプリートベストアルバムが出る。長い沈黙のあとの、この急激な流れはなんだろうと思ってます。まるで10年に1回開かれる迷宮の扉みたいに。また、こんなに自由にやれるものだろうかとも思っていて、この不思議こそSee-Sawな気がします。See-Sawはリスナーの皆様、囲むスタッフの方の熱量だけで何年も生かされてきました。感謝です。ありがとうございます!
梶浦 去年は本当にSee-Sawにとっては大きな流れがあった1年でしたが、でも「ちょっとやってみようよ」という2人の気持ちだけではできないことがたくさんありました。フライングドッグさんの「犬フェス!」にご招待いただいたことがすべてのきっかけで、多くの方に声をかけていただき、応援していただき、自分たちでもびっくりするような「ちょっとやってみよう」の1年が送れたことに心から感謝しています。
See-Sawプロフィール
See-Saw/石川智晶(ボーカル&コーラス)、梶浦由記(キーボード)のユニット。
1993年7月、西岡由紀子(ベース)を含む3人組のユニット、See-Sawとしてデビュー。1994年4月より2人となり、1995年2月にシングル「また会えるから」を発売後、石川と梶浦はそれぞれのソロ活動を開始。
2001年、梶浦がBGMを手掛けたTVアニメ「NOIR(ノワール)」で、石川をボーカルに迎えた「indio」を制作したことをきっかけに、See-Sawとしての活動を再開。2002年5月リリースのシングル「Obsession」を皮切りに、5枚のシングルと1枚のアルバムをリリース。2006年、再び活動を休止。
2019年2月の「犬フェス!」でのSee-Saw復活がきっかけとなり、17年ぶりとなるワンマンライブ「See-Saw LIVE ~Dream Field 2019~」が同年12月に東京国際フォーラム ホールAにて開催された。
CDデータ
■See-Saw Complete Best「See-Saw-Scene」
4,500円(税別)
レーベル:FlyingDog/2020年6月10日発売
〈収録曲〉【DISC1】
01. Swimmer/作詞・作曲:梶浦由記 編曲:土屋 学
02. La La Africa/作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記 編曲:小西貴雄
03. かくれんぼ/作詞・作曲:梶浦由記 編曲:坂本昌之
04. Timecard Love/作詞:石川智晶 作曲:西岡由紀子 編曲:土屋 学
05. Heaven/作詞・作曲:梶浦由記 編曲:土屋 学
06. キライになりたい -Snow Drop version-/作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記・石川智晶 編曲:土屋 学 ストリングスアレンジ:溝口 肇
07. うた/作詞・作曲:梶浦由記 編曲:土屋 学
08. 永遠/作詞:石川智晶 作曲:西岡由紀子 編曲:小西貴雄
09. 不透明水彩絵具/作詞・作曲:梶浦由記 編曲:小西貴雄
10. 遠いティンパニ/作詞・作曲:梶浦由記 編曲:小西貴雄
11. 心の絵本/作詞・作曲:梶浦由記 編曲:坂本昌之
【DISC2】
01. スレンダー カメレオン/作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記 編曲:新川 博・斉藤ノブ ホーンアレンジ:小林正弘
02. 素肌 ノーメイク/作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記 編曲:新川 博・斉藤ノブ
03. うす紅/作詞・作曲:梶浦由記 編曲:小西貴雄
04. Chao Tokyo/作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記 編曲:小西貴雄
05. 抱きしめている/作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記 編曲:新川 博・斉藤ノブ
06. 誰か私と…/作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記 編曲:新川 博・斉藤ノブ
07. NERVE/作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記・石川智晶 編曲:新川 博・斉藤ノブ ホーンアレンジ:小林正弘
08. たった一人のあなたへ/作詞:石川智晶 作曲:西岡由紀子 編曲:小西貴雄
09. また会えるから/作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記 編曲:新川 博・斉藤ノブ
[Bonus Track]
10.新しい予感 ~Only at JUSCO~/作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記
【DISC3】
01. 君がいた物語 ~Dream Field Mix~/作詞・作曲・編曲:梶浦由記
02. edge/作詞・作曲・編曲:梶浦由記
03. 黄昏の海/作詞・作曲・編曲:梶浦由記
04. LOVE/作詞・作曲・編曲:梶浦由記
05. Emerald Green/作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記
06. あんなに一緒だったのに/作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記
07. 千夜一夜/作詞・作曲・編曲:梶浦由記
08. 月ひとつ/作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記
09. 夏の手紙/作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記
10. Obsession/作詞・作曲・編曲:梶浦由記
11. 記憶/作詞・作曲・編曲:梶浦由記
12. Jumping Fish/作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記
13. 優しい夜明け/作詞・作曲・編曲:梶浦由記
14. indio/作詞・作曲・編曲:梶浦由記
15. 静寂はヘッドフォンの中/作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記
16. 君は僕に似ている/作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記
※「See-Saw-Scene」においては、現在のアーティストネーム「石川智晶」に表記を統一
(取材・文/鈴木隆詩)