今後、ジャズ系アニソンの定番となるのが「歌舞伎町シャーロック」のOP「CAPTURE」ではないでしょうか。
誰かに何かを伝えるとき「〇〇っぽい」という表現を使いイメージを共有しますが、ジャズ系のテイストを共有するとき「EGO-WRAPPIN’っぽい感じ」や「EGO-WRAPPIN’のような」といった言葉が多く使われます。それくらい、今の邦楽におけるジャズ表現に影響を与えたのがEGO-WRAPPIN’なのです。ジャズ系アニソンにもEGO-WRAPPIN’の匂い漂う曲がありますが、やはり本物のオリジナリティはすさまじさがあります。
EGO-WRAPPIN’のオリジナリティは、オールドスクールなジャズが基本にあり、そこからキャバレー音楽や歌謡曲を取り込んだ雑食性の高い音楽にあります。
いわゆる盛り場などの雑多で猥雑な場所で生まれた音楽がルーツにあるので、その雰囲気が自然とサウンドから漂う、漏れ出しちゃってるのがほかのアーティストには真似できないところ。音の並びをそれっぽくすることはできても、漏れてきちゃう匂いはオリジナリティの塊。
都会の夜の猥雑さを匂い立たせるEGO-WRAPPIN’と「歌舞伎町シャーロック」の組み合わせは、いわずもがな最高のマッチングです。
中毒性の高さにハマる人続出のsora tob sakana。「ハイスコアガールII」のOPを続投するということで、喜んだ方も多いのではないでしょうか。
ここまで作品と楽曲がハマるのもなかなかないと思います。作品自体はレトロゲームを題材とした懐かしい時代のお話なのに、最先端のエモ系エレクトロがバッチリハマる不思議。
「ハイスコアガール」という作品が持つ「いかんともしがたいもどかしさ」と、sora tob sakanaの曲の根底にある「はかなさ」や「失うことを前提とするエヴァーグリーンさ」が異常にシンクロしているから、聴くたびに毎度無性に切なくなってしまいます。
「魔入りました!入間くん」のOPは、今やお茶の間の顔となったDA PUMPの「Magical Babyrinth」
「U.S.A.」の大ヒットから「ちょいダサ感」がひとつのテーマになっているようなDA PUMP。最近では「仮面ライダージオウ」の映画「劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer」でも、ちょいダサ感のある主題歌「P.A.R.T.Y. ~ユニバース・フェスティバル~」を発表しました。
で、今回もみんなが期待する通りのちょいダサ感がある曲になっています。
こうやって書くと、少しバカにしてねえか?と怒る方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。むしろすごく高度な表現なんです、ちょいダサ。
この曲(と最近のDA PUMP)の面白さは、繰り返されるリズムに乗る少し棒立ちな語感の言葉。要するに「カタカナ英語」をリズミカルに歌うのが、DA PUMPのオリジナリティなのです。子供でも真似しやすく、練習しなくても音楽の気持ちよさ、ダンスの気持ちよさを体感できるのはカタカナ英語によるところが大きい。それもこれも、超ハイレベルのダンスと歌唱スキルがないと表現できません。
リズミカルに跳ねるカタカナ英語の発音の面白さは、地味ながらも邦楽の表現方法の大きな発見だと思います。
ちょいダサ感とは、ちょっと極端に言えば「お茶の間と純度の高いダンスミュージックをつなぐ架け橋」ではないかと。そんなお茶の間に愛されるちょいダサ感のあるDA PUMPが、僕のルーツなのです。
数年後活躍する超一流ダンサーのルーツがこのアニソンだった、なんて話、絶対あると思うんですがいかがでしょうか。
さて、残る曲はあと2曲。
完全に私の趣味というか、聴く前から「これはもう絶対この10曲の中に入れるもんね!」と思っていた大先輩方の曲になります。
それが「ノー・ガンズ・ライフ」OP、「MOTOR CITY」。
ベンジー!
俺たちのベンジーの!アニメソング!!
とてもいいです。BLANKEY JET CITYが好きな人はまず間違いなくハマります。ロメオっぽいリフも最奥すぎる。
ベンジーこと浅井健一については、もうとにかく聴いてくれ!としか言えませんが、ベンジーの特異性はロックの不良性とは真逆にあたる文学性の高さにあります。
ロックが持つ暴力的な不良性ではなく、純文学に匹敵する文学性の高い詞世界を表現する方法としてのロックがBLANKEY JET CITYの、ベンジーの音楽なのです。
ベンジーの文学的なロックのダイナミクスが、「ノー・ガンズ・ライフ」のストレンジでハードボイルドな世界観を補強し拡大させている。90秒とは思えない密度と濃度で迫るOPは出色の出来。
最後は「あひるの空」OP、「Happy Go Ducky!」。
今期最推しは、北海道の大先輩・the pillowsのこの曲です!
the pillowsのほとんどの楽曲を手がける山中さわおさんも、ロックの暴力性、攻撃性よりも、内省的でリリカルな詩世界をロックで表現しているひとりです。
the pillowsの音楽には透明度の高いエヴァーグリーンな感情を想起させる力があり、それがアニメ作品と相互に影響しあっているのが非常にいい。特に部活動などをテーマにした作品には、ことごとくバッチリハマる。
BPMが早く手数が多いアニメソングが多い昨今、こういったストレートなバンドサウンドの楽曲がきちんと作品と二人三脚しているのは、バンドマンからするととても嬉しくも誇らしい気持ちになります。自分も先輩の背中を、もっと追いかけようと思いました。
以上、今期アニメの10曲でした。
お気に入りの楽曲、作品はありましたか??
今期は全体的にベースがかっこいい曲が多かった印象があります。派手さが目立つようなものではないんですが、絶妙にいい仕事するなぁ、と感じる瞬間が何度もありました。
機会があればベースかっこいい曲だけで選曲、なんてのもどうでしょうか。
いい! かっこいい! すごい!!
全部これになりそうなので、もうちょっと考えてから企画します。
それでは、また次回お会いしましょう。
(文/出口博之)