出口博之×鮫島ヒロミが2018年のアニソンを語りまくる! 年末スペシャル「いいから黙ってアニソン聴け!」ロング対談!!

2018年12月28日 12:490

2018年秋クール

出口 じゃあ、秋は私から行きます。3位は「DOUBLE DECKER! ダグ&キリル」のエンディング、「Buntline Special」(ビッケブランカ)です。

 

──ちょっとパーティーロックっぽい曲調ですよね。

 

出口 うん。この曲は、バンドがやるアニメソングの、ひとつの到達点なんじゃないのかなって思います。これはかっこいい!って。優勝!って。

 

──また優勝が出ました(笑)。

 

出口 時代がめぐってきたというか、時代が進んでいったというか。今の30~40歳くらいのバンドマンって、この手のニュアンスの曲って、「ちょっとベタすぎて恥ずかしい」っていう感覚があると思うんです。たとえば自分たちが聴いてたものとか、高校の時に好きだったブランドの服って、今着られるかと言うと……ちょっと恥ずかしいよね。その感覚に近いものを感じていて、もし自分のバンドでこういう曲をやるとしたら、ちょっと恥ずかしい。でも確実にその道を通ってきてるから好きなんですよね。

それが今、自分よりも年下の若い子たちが、そういう曲を新鮮に聴けるのかなって。純粋に「だってかっこいいじゃん、これ」っていう風にやっている印象を受けたので、第3位に選びました。そして、似たようなところで第2位に「火ノ丸相撲」のオープニング「FIRE GROUND」(Official髭男dism)を選びました。

 

 

鮫島 これもかっこいいですよね。

 

出口 方向性としては前述の「Buntline Special」に近いものがあると思うんだけど、この曲のほうがより洋楽っぽいというか、よりアメリカっぽいというか、よりマイケルジャクソンになったなっていう。90年代前半ぐらいのアメリカの音楽を、今の解釈でバンドでやるとこうなるよねっていう曲。最近のトレンドっぽい感じではあるのかな。めちゃくちゃかっこいい。「このテがあったか!」ってね。

ダンスミュージックをバンドでやると大体四つ打ちになるという流れに対して、世の中が食傷気味になっているところで、きちんと最初にディスコがあって、そこから派生していったヒップホップとかニュージャックスイングがあって……、という歴史をきちんとたどっていってる感じがするので、面白いなと思いました。そして1位は「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」エンディング「Freek’n You」(Jodeci)。

 

 

鮫島 エンディングですか!? オープンニングじゃなくて?

 

出口 これは曲自体は90年代に活躍したR&Bユニットの洋楽です。書き下ろされたアニメソングではないです。以前はイエスやバングルスとか、物語に則した選曲できてるけれども、今回は何でこの人たちになんだろう?って調べたら。このJodeciって、メンバーに“ジョジョ(Joel "JoJo" Hailey)”がいるんですよ。本当にこれだけの理由だったら、逆にすげえよ!っていう。

 

鮫島 ちょっと1位でしょ?(笑) 全然褒めてないじゃないですか。優勝してませんよ、これ。

 

──イメージ的に毎回アニメ「ジョジョ」のエンディングの絵と演出が、劇中とリンクさせてる部分がありますよね。

 

鮫島 今回はイタリアのマフィアの話だけど、毎回曲はストーリーと関係あるんですか

 

出口 音楽性に一貫した何かがあるっていうわけではなくて、おそらく要素とか言葉遊びなのか。そこをいろんな解釈で読み解いていくのも面白いのかなと思う。新旧作品が、並列で全部並べて聴けるっていうのは面白いことだなと思いました。「FIRE GROUND」も、元ネタは90年代の音楽なんだけど、その元ネタの時代の人たちはこういう音を出しているんだよ、というのをYouTubeなりで手軽に聴くことができるのがすごく面白いなと。今の若い子たちは、今の曲も古い曲も全部「今季のアニソン」として聴くわけだからね。だからたとえば、「東のエデン」(2009年)のオープニングに「フォーリング・ダウン」(オアシス)が起用された時は、「やべえ……オアシスだよ」って、映像が全然入ってこない、みたいなところだけど、若い子は「英語だなーっ」て思いながらあれを観ちゃうわけで。

 

 

鮫島 アニメファンの子たちは、知らず知らずに良質な曲を聴いてるってことですよね。

 

出口 全然アニメソングじゃないものを選んだけれども、詰まるところ、そこに行きつくよなって。逆説的ですけどね。

 

鮫島 さて私のトップ3ですね。まだ迷ってるんですけど……3位は「ゾンビランドサガ」のオープニング「徒花ネクロマンシー」(フランシュシュ)と、「RELEASE THE SPYCE」のオープニング「スパッと!スパイ&スパイス」(ツキカゲ)の2曲です。

 

 


出口
 そこで悩むのは、すごくわかります。俺も記事を書いた時は超悩んだ。

 

鮫島 「ゾンビランドサガ」はアニメが進むにつれて、実はみんなの死因が歌詞に含まれてるみたいだ、という考察も出てきてて、「ああ、そういう解釈で読めるんだ」って。最初は「戦隊モノぽいぞ、わーい!」という目で見てたんですが、そういう考察を聞いてから、「これは面白い歌詞なんだなぁ」という風に見ています。そして「リリスパ」のほうは単純に、ヒゲドライバーさんらしい楽しい曲っていうところです。アニソンディスコでもこれ、よくかけてるんです。で、このアニメはスパイもので、登場人物がみんな女の子で、百合要素がふんだんに含まれてて、「ああそうか、リリスパもゾンビランドサガもそうか」と。どっちも百合ものとして見られるんだと。

ただ最初はどっちも明るく楽しいと思いながら観てたんですけど、後半になるにつれてだんだん物語が深いところに入っていってる気がするんですよね。楽曲にも、それぞれ深みが出てきたと思うので、どっちも捨てられないんです。すいません!

 

出口 ルール違反はダメですけど(笑)、やっぱこの2曲で悩むのはよくわかります。

 

鮫島 どっちも捨てられなかったですね……。で、2位が「SSSS.GRIDMAN」のオープニング「UNION」(OxT)。これ、歌詞の話なんですけど、1番は少年の目線で書いてて、2番は夢を捨ててしまった大人の目線で書いてるんです。

 

出口 なるほど、面白いね。

 

 

鮫島 この歌の中で一番印象的なフレーズが「君を“退屈”から救いに来たんだ!」っていう最後の一文なんですけど。2番の大人の目線になった途端に、その歌詞は出てこないんです。2番では使われてないんですよ。で、大サビがあって最後の最後で、また「君を“退屈”から救いに来たんだ!」って歌詞が出てくるんです。2回しか使われてないのに、フルで聴いたらそこがめっちゃめちゃ印象に残るのはなぜだろうと。

退屈から救いに来たのはグリッドマンではなくて、少年の時の自分だったんじゃないのかなと。それを思い出した大人が「僕を退屈から救ってくれたのは少年の頃の自分だったんじゃないのかな」っていう風に、僕は勝手にとらえてます。このアニメって、もともと特撮ですよね?

 

出口 はい。円谷の特撮です。

 

鮫島 だから当時「グリッドマン」を観た子供たちが、今、この「SSSS.GRIDMAN」を観て退屈から救われてるんじゃないのかなぁっていう気持ちもして。

 

出口 まさに、そうだと思う。僕自身が、当時観てた世代ですからね。ちなみに、夢を諦めちゃった大人目線っていうのは、どういう歌詞から読んだの?

 

鮫島 「ヒーローになれやしないんだって 主人公は誰かやるでしょって 知らぬ間に諦めたりしないでよ」、これもう、完全に人生の脇役になってしまった大人たちの話じゃないですか。で、サビが来て最後に「A wish,A wish come true」。これは「願いはかなう」かな? そして、また大サビが来るんですけど、この最後の大サビの歌詞が1番とはちょっとだけ違うんですよ。そこで、また改めて夢を見ようと思った大人たちが子供の心を取り返して、この歌を歌ってるんじゃないかなって感じました。

 

出口 いい話!

 

鮫島 アニソンディスコでもよくかけてました。アクセスフラッシュっていう、左手の手首に、右手の手首を合わせるっていう動きがあるんですけど、それを1番の中で2回やるんです。1回は自分の両手首を合わせるんですけど、2回目はほかの人の手首に自分の手首を合わせにいく振り付けにしたんですよ。そしたら、フロアのみんなが横の人たちと手首を合わしてくれたりして、いい画が生まれております。

 

出口 まさにユニオン!

 

鮫島 そんなわけで、1位は「キャプテン翼」オープニング「傷だらけの愛」(ジャニーズWEST)! 1期では清々しい少年、小学生サッカーの世界だったわけなんですが、2期では中学生編に入っていきます。で中学生編になると、翼くんがめっちゃめちゃケガするんですよ。どんどん体がボロボロになっていくんです、あとヒロインの存在も、ちょっと大きくなってくるんですね。松山くんの彼女だったり、三杉くんの彼女だったり、もちろろん翼くんの彼女・早苗ちゃんだったりとか。中学生という多感な時期に突入すると、彼女たちの応援っていう要素も大きくなってきます。で、中学生編のオープニングが小学生編のオープニングと違うのが、原作の絵をたくさん使ってることなんですよ。マンガの絵がそのままドン・ドン・ドン!と出てくる映像になってます。まあ自分の思い出補正もありますけども、「新しいオープニングはどんな感じかなぁ」って観てみたら、原画がドン・ドン・ドン!と出てきてもう泣いちゃった。ハードディスクが擦り切れるくらい何回も観ました。

 

 

出口 それは、泣けるオープニングっていうか、鮫さんが勝手に泣いてるってことじゃ……。

 

鮫島 いや、違います! みんな泣けます。

 

出口 泣けるんだ(笑)。曲自体はかっこいいんですか?

 

鮫島 めっちゃかっこいいです。で、曲はジャニーズお得意のラテン調になってるんですけど、明るいラテンじゃなくて暗くて哀愁のあるラテンなんです。結果的に小学生編のオープニングから大きく方向を変えてきたけど、「あ、中学生編の『キャプテン翼』が始まるな~」って気持ちになれて。よかったです。

 

──やっぱサッカーというと、南米とかのイメージもありますよね。もしかしたら、そのイメージがあったんじゃないでしょうか?

 

鮫島 ラテン系ってことはそうかもしれないですね。翼くんは卒業したらブラジル行きますから。「ブラジルに行く」という暗喩があるのかもしれませんね。

 

出口 ああ、なるほどね。……全くかぶりませんでしたね。

 

──すごいですね。それぞれ別々の楽曲を評価していてさすがだと思います。ちなみにランキングから落としたけれど押さえておきたい曲ってあります?

 

鮫島 「少女☆歌劇レヴュースタァライト」の「スタァライト九九組」が歌うエンディング「Fly Me to the Star」かな。「スタァライト」の曲は全部よかったですね。

 

 

出口 どの文脈で話そうかなって思ってたのが、夏のポケモン映画「劇場案ポケットモンスター みんなの物語」ですね。ポルノグラフィティの曲「ブレス」が、すごくいい歌でした。

 

 

鮫島 僕は「多田くんは恋をしない」オープニング「オトモダチフィルム」(オーイシマサヨシ)がよかったな。オーイシさんって、ちゃんと求められていることをやってくれる方、サービス精神がある方ですよね、さすが関西人。

 

 

──やっぱり今年はオーイシマサヨシさんの活躍がすごかったですね。

 

鮫島 どのクールでも歌ってたんじゃないですか? なんか、新しいタイプの男性アニソンシンガーだなって印象ですね。JAM projectから脈々と流れている、激しいサウンドとはまた違って。

 

出口 本当にポップス出身っていうところは、今っぽいですね。

 

──あとは「爆釣バーハンター」のオープニング「爆釣ソウル」(島爺)も、秋アニソンの原稿を書く時に、出口さんと編集とでちょっと盛り上がりましたよね。島爺! なんだこいつは!って。

 

出口 そうだ!俺たちの大好きな島爺! これはすごいぞ!って盛り上がりました。

 


──島爺は、2019年、ちょっと注目したいですよね。

 

鮫島 島爺、要チェックなんですね。どんな方なんですか?

 

──それが謎なんですよ。ニコニコ動画の歌い手をやっていた方らしいですけど……かっこいいんですよね。

 

出口 かっこいい。もしかしたら、顔出しができない方が顔を隠して歌ってみたところ、それがハネちゃったのかな?

 

鮫島 謎多き人ですね。

 

──「バーハンター」といえばエンディング「友情ZABOOOON!!」もすごくて、Q-MHzが作曲して小松未可子さんが歌ってる。

 

鮫島 キッズアニメすごいですね。

 

出口 あなどれないですよ。今年はそこに気づいた感じはありますね。アニメといえば、今は深夜!って感じになってるけども、キッズアニメや配信アニメという、深夜アニメ以外の作品もきちんと注目していかなきゃと。それこそ夕方とか朝とかやってるアニメのほうが、アニメの歴史としては大先輩だし、我々もかつて観ていたのがそういう時間帯のアニメだったわけだから。というところで、2018年のアニソンをまとめると、どうでしょうか。

 

鮫島 個人的には「アニソンだな」っていう曲をあげていきましたけど、一般的なオタクにとっては、やっぱり「スタァライト」だったり「ウマ娘」。あと「音楽少女」もあったじゃないですか。で、紅白にはAqoursが出ますし、まだまだ女性声優アイドルって強いなあと。いっぽう、男性声優では「ヒプノシスマイク」が出てきて。今回、トップ3にはどれも入れてないんですけど……。

 

出口 俺も同じことは思いましたね。やっぱり声優さんがキャラクターの声で歌うって、普通に考えれば当たり前なんだよなって。だってその作品に出てる人たちだし、そのキャラクターが曲を歌うっていうのは、ものすごく理にかなったこと、当たり前のことなんだよなっていうのは思いました。でもそのいっぽうで、作品数は多すぎると思う。

 

鮫島 確かに多い! みんながんばって観てる感じがありますよね。

 

出口 すごく興味深いんだけど、「それでもがんばって観なきゃね」とかっていう風潮はある気がする。水島精二監督が「アニメ、今の半分にしても、悲しがる人いないんじゃないか。供給過多。」とツイートされていて。アニメを作ってる側の人も「何でこんなに作るんだろうなー」って思ってるのかもしれない。かといって、これを今すぐ半分にしたら、業界が回らなくなるっていう可能性もあるし……いいか悪いかはひと言では言えないけれども。でも確実に言えるのは、「多い!」ってことだよね。

 

鮫島 それと、とんがった作品とか、時間をかけていい作品として浸透していくものは、今後はNetflixなどの配信に移行していくのかなって。アニメファンには「いいものにはお金を惜しまない」っていう気概がありますから、もしいいものが観られるなら全然平気で千円払って観てくださると思うんですよ。

 

──1回流れができちゃうと、一気に移行しちゃいそうな気がします。

 

鮫島 バラエティ番組とかもそうですけど、やっぱりスポンサーを考えずに、お客さんからの課金で面白いものを作ろうという流れが、が2019年はより強く出てくるんじゃないかなと思います。

 

出口 うん、そうですね。観るほうもきちんと考えて、しっかり選んで観ないとね。せっかく観たのに、すぐに忘れていっちゃうのが一番もったいないから。

 



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