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大人が聴いたら、ビターな感触もある歌詞なんです
── 「ロケットビート」は、TVアニメ「カードキャプターさくら クリアカード編」のオープニングテーマで、すでにオンエアが始まっています。この曲は、安野さんにとっては記念すべき1stシングルになるんですよね。 安野 「カードキャプターさくら」のオープニングテーマを歌わせていただくことが先に決まって、では、シングルを出そう、という話になったんです。「ということは、これが1stシングルだね」って(笑)。ソロとしては、ゆるゆる活動していこうという心づもりでいたので、突然の展開に驚きました。正式な決定をお知らせいただいたときは、本当にうれしかったです。
── 安野さんにとって、「カードキャプターさくら」とはどんな作品ですか? 安野 子供の頃に見ていたアニメの中で、一番キラキラしていた作品でした。平和で幸せで、夢にあふれていて。私と同年代の女性は、多くの人があの世界を愛していたと思います。
── 前のTVシリーズが終了してから18年ぶりのTVアニメ化ということで、「クリアカード編」を懐かしさとともに見ている大人のファンも多いんじゃないかなと。 安野 本当にそう思います。「お母さんも子供の頃に見てたんだよ」って言いながら、親子一緒に見ていても不思議じゃない作品ですよね。私にとっても、子供の頃に大好きだった作品の主題歌を、時を経て歌えるなんて、一生に一度あるかないかのことだと思いました。
── 「ロケットビート」を聴いての第一印象はいかがでしたか? 安野 ピュアが濃縮されていて、まさに「さくら」の曲だ! と思いました。作詞の岩里祐穂さんは、あの「プラチナ」を書いた方ですし、北川勝利さんが書かれたメロディも、北川さんらしさがありつつ、「さくら」の曲として間違いないという感じで。このお2人とご一緒できたのも、本当にうれしかったです。
── 歌詞はとても前向きで、男女の差なく多くの人の心に届くものになっていると感じました。 安野 小さな子にもわかるやさしい言葉で未来や希望について書かれていて、どの年代の方が聴いても、人生についての大切なメッセージを受け取ることができる歌詞だと思いまし。それでいて、酸いも甘いも噛み分けた大人が聴くと、ビターな意味合いもある歌詞になっているところがすごいんです。〈「知りたい」がいっぱいある私は「大好き」をたくさん持ってた ひとつあればいいと気づいたあの夜 窓から 星空へ振りまいた〉という部分に、特にそれを感じました。
── 「大好き」はひとつあればいいと。 安野 子供の頃って、「誰が好きなの?」と聞かれると、友だちの名前をたくさんあげる子がいたじゃないですか。それに、好奇心があって、あれもやりたい、これもやりたいと思っていて。でも、その中から自分にとって本当に大切なものをひとつだけ選ぶことの必要性を理解することが、大人への階段を昇ることだと思うんです。そういうメッセージが、この部分には入っていると感じました。きっと、子供の頃の私がこれを聴いたら、「どうして、たくさん持っていた「大好き」を、星空に振りまかないといけないんだろう?」って、腑に落ちなかったと思うんです。
── 子供の頃に聴いた歌詞の意味を、大人になってから理解できた、というのは往々にしてあります。 安野 「カードキャプターさくら クリアカード編」を見ている小さな子にとって、「ロケットビート」がそんな曲になることができたら素敵ですよね。きっと、歌と一緒に大人になれたような気がすると思うんです。そういう意味で、私にとっても大きな可能性を秘めた曲を歌わせていただけたんだなあと、改めて感じました。
── ストリングスの入り方も「カードキャプターさくら」の曲らしいですし、伝統を受け継いだ曲という印象がありました。 安野 伝統ですか?(笑) でもわかるような気がします。
── それにしても、タイトルは「ロケットビート」なのに、ロケットもビートも、歌詞の中には出てこないんですよね。 安野 そうなんです。岩里さんが考えてくださったタイトルを聞いたとき、私自身びっくりしました。でも、かわいらしさがありつつも、前にガンガン進んでいく強さがある曲なので、とてもいいタイトルだと思いました。
── レコーディングはいかがでしたか? 安野 難しかったです。落ち着いた歌い方ではなく、激しい気持ちを前に出してほしい、とディレクターさんには言われました。「この曲の登場人物を見守るあなたじゃなくて、あなた自身のストーリーだと思って、がむしゃらに手を伸ばすような、突き進む気持ちが欲しい、ハングリーさが欲しい」と。
── 最初に歌った時は、やさしいボーカルになっていたんですね? 安野 そうなんです。曲から受けた印象そのままに、やわらかく幻想的なラインで心地よいボーカルを目指したので。そしたら、「そうじゃないんだよ、安野さん。歌のお姉さんにはならないでほしいんだ」という言葉が返ってきて、ディレクターさんが求める方向性がわかりました。そこからが格闘だったんですよね。まだ足りない、もう1回、という感じで、フルで7回か8回は歌って、「じゃあ、本番行ってみようか」と(笑)。コーラスの録りもあったので、トータルで8時間はかかったと思います。
── それは大変でした。 安野 でも、楽しく歌うことができました。スタジオには北川さんもいらっしゃって、いろいろと指示をいただけて。ディレクターさんとのダブルディレクションになったので、いろいろな味が引き出されたのではないかなと思います。