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ポイントはボスボロットのやわらかさ!
──本作の花形といえる戦闘シーンで、ぜひ注目してもらいたいシーンはどこですか?
なかの どこを見てもらってもいいですよ、という感じです。先にヨーロッパで公開されましたが、ネットなどでネタバレされて、うっかり内容全部知っちゃっても劇場で見ておかないと後悔しますよ、という作品になっていると思います。
──マジンガーZのスピーディーなアクションに圧倒されました。
なかの 現在、そもそもロボットアニメをあまり見たことがないという人も東映アニメーションにも多いので、そういうスタッフに理解してもらうために、「ロボットというよりもスーパーヒーローとして描いてほしい」「よりかっこよく描いてほしい」という説明を徹底していました。「マジンガーZ」以降に出てきたリアルロボットのカテゴリーに引きずられないようにしないと、「マジンガーZ」たりえないんですね。関節や装甲の伸縮や武装の収納なんかも劇中の科学技術が10年後に退化していたらさすがにおかしいので、基本はそのままでヒロイックさを高める演出をしています。
──確かに、TVシリーズで受けたかっこいい印象そのままという気がします。
なかの 今回だけで何周したかわからないくらい「マジンガーZ」を見ていますが、その印象からは変えていないですね。自己流の解釈で勝手に何かを変えることはしていないつもりです。マジンガーは、そのままで超かっこいいですから!
あとは、けっこう力を入れたのがボスボロットだったりするんですよ。あの見た目もキャラもやわらかい感じがないと真にドラマとして「マジンガーZ」にはならないんですけど、その魅力を硬くなりがちなCGでの表現に落とし込めるかというのは大きなチャレンジでしたね。結果、がっちり笑いの取れるものになりました。あそこは東映アニメーションさんのCGチームのいいところが詰まっているシーンだと思います。僕らの期待以上に、往年の東映アニメらしく、いい動きになっていました。
金丸 動きの面白さは万国共通だなと思ったのが、イタリアとかフランスで上映してても、ボスボロットのシーンで誰もが笑ってくれるんです。ああいう「共通性、アニメーションの面白さみたいなもの」が、イコール「ボスボロットの面白さ」になるんですが、それがちゃんと表現できているのが今回の「マジンガーZ」の面白さだと思います。
なかの 少なくとも、日本の現在のTVアニメのトレンドにはおもねってないんですよ。なぜなら世界中の人に見てもらう作品だから。言葉も風習も違う人たちに、音を消して見てもらってもわかってもらえるものじゃないといけない。これは持論でもあるんですが、映像で作る以上、音やセリフで何もかも説明してちゃダメなんです。どんな文化圏や言語圏の方が見てもボスボロットのところで笑っちゃうし、マジンガーZのところで「GO~ッ!」ってなる。そういうものを創ろう、というのはひとつの目標でした。
これがゴールではなく、スタートだ
──ドラマ部分は、結婚や出産など、地に足の着いたドラマが展開しますね。テーマ的なところを改めて教えていただけますか?
志水 世界公開を念頭に置いた映画のため、普遍的な家族愛を基本的なテーマにしていまして、その辺りをできるだけ描こうと考えました。弓首相(弓教授は、今回日本の総理大臣になっている)とさやかの親子のやりとりをできるだけ出したくて、シナリオにない描写も演出段階でだいぶ入れましたね。
金丸 前作から時間がかなり経っている続編になるので、監督が重視したのがキャラクターのていねいな描写という部分です。
なかの 甲児はこうは言わない。ボスはこんなことをしない、というようなことはけっこう監督と議論をしたような覚えがあります。改めてTVシリーズに立ち返って、あるべきはこうなんだけどという話しをして。それでダイナミックさんにコンテの決定稿をもんでもらって、そこでまた新しく要望や意見が入ってきたり。
──ダイナミック企画からの要望には、どんなものがありましたか?
なかの 細かいところでいうと、東映版TVシリーズの甲児と鉄也はお互いに「くん」付けで呼ぶんですけど、今回は呼び捨てに変更したい、とかです。漫画では呼び捨てが多いからかもしれません。ゲームの「スーパーロボット大戦」だと、鉄也のことは「さん」付けが多いですよね。
──確かに「スパロボ」やこれまでに発表されたOVAなどで刷り込まれた情報と、原典たるTVシリーズでの描写の違いに気づかされることも多くありました。
なかの 僕も「スパロボ」ユーザーだし、漫画版はもちろんOVAや深夜アニメ版などもそれぞれにいいのですけど、今回は東映アニメーション版のTVシリーズおよび劇場版を原典にすることに徹しています。だから困ったことがあったら、常に最初のTVシリーズに立ち返るという大ルールを作って、現場が混乱しないようにしました。
──と言うことは、本作を作るにあたり、そうとう見直したんじゃないでしょうか。
なかの 僕がマジンガーを見てない日はなかったんじゃないかと思います(笑)。1日中自分のモニターには、「マジンガーZ」から「グレンダイザー」までループで流れてました。やっぱり甲児や鉄也をはじめ、登場人物の人間性をトータルでとらえたかったんです。要は、思い込み補正はやめましょうと。
──全高約600mという超巨大サイズの魔神・インフィニティは、どのように生まれたのでしょうか。
金丸 あれは僕が言ったのかな。まず企画段階で永井豪先生から「宇宙の奥からせまってくる敵」という「ゴラーゴン」の初期アイデアをいただいたんです。ただ、申し訳ないんですが、マジンガーは宇宙で戦うよりも地球で戦わないといけないと思います、という話になったんです。監督としても、まずは地球で戦わないと。じゃないとキャラが立たない、という話をしていて、だったらゴラーゴンという名前だけいただいて兵器の形にしてしまおう。そして味方にマジンガーとグレートがいるから、その相手をする敵役も魔神にしたいです。だったら新しく魔神を作りましょう、というお話の中から生まれたように思います。
なかの 巨大すぎて、あまりマジンガーとはからんでいないですね。どっちかというと「死亡遊戯」の塔のような、背景としての役割で。やっぱり機械獣とガチバトルしてるほうがマジンガーらしくて面白いので、そのための舞台として機能させています。終盤、隣接次元でリサがタイプライターを打っていたりというアイデアは全部監督発ですね。
──終盤、子どものリサが出てきましたが、あのシーンについて解説をいただけますか?
志水 マジンガー関連の作品を今後作るにあたって足かせになる要素になるかもしれないのでああいうことになりました。脚本家やダイナミック企画さんの考えでもあります。
なかの そこは決め込まないほうが、人気作品の続編として気持ちのいい落としどころになるのかなと。本作をフックにして、さらにマジンガーの映画を見てみたいとかこのコンテンツをさらに広げていきたいという時に自由度を持たせておきたいなと。
──本作はこれがゴールではなく、スタートだと。
金丸 そうですね。それは間違いなくありますね。完結させようと思ってコンテンツを生み出そうという人はいませんから。