スリリングさがバンドサウンドのひとつの醍醐味とするならば、「ベルセルク(第2期)」OP「サクリファイス」と「進撃の巨人 Season 2」ED「夕暮れの鳥」は、外せないかと思います。
他の作品でもバンドが主題歌を担当していますが、ベルセルクと進撃の巨人が特に印象に残りました。「サクリファイス」は、9mmが持つバンドの世界観とベルセルクの世界観の親和性の高さが抜群。勢いで押し切るのではなく、凶暴な面と叙情的であり耽美的な面がいびつに同居しているアンビバレンツな世界。これぞバンドサウンドだ!と言わんばかりのテンション感が聴きどころです。
「夕暮れの鳥」ですが、これはかなり難しい楽曲。ちょっとコメントに困るくらい、破滅的に美しい曲。バンドのアレンジとしてはかなりシンプルな構造なのですが、これをほかのバンドができるかというと、それは別次元の話。神聖かまってちゃん以外では、まったく再現できない構造になっています。美しくて、残酷で、かわいくて、無邪気で、希望と絶望が同じ地平に立っているような、そんな感じ。もう言えることなさすぎて、一番言っちゃいけない「そんな感じ」とか言っちゃうくらいすごい。
ちょっと濃い楽曲が続いたので、北海道苫小牧出身の10代2人組シンガーソングライターの「Softly(ソフトリー)」が歌う「境界のRINNE(第3シリーズ) 」ED「スキナノカナ」を。
爽やかでポップな曲ですが、10代でこの声の存在感。透明感がありながらも芯が強いフレンチポップスのような質感に耳を奪われます。かわいい曲ですが、奇をてらわず楽曲と声のよさで勝負するストロングスタイルなスタイルが見える曲です。
「正直なところ、今期で何が一番好きな曲なの?」と問われたら、「笑ゥせぇるすまんNEW」OP「DON’T」をあげると思います。
それぐらい個人的に大好きな曲。深夜アニメが「大人の時間」であることを表しているような余裕感と、誰しもが持つココロのスキマを突きつけられるシリアス感。「Don’t」と「ドーン」がかかっている言葉遊びもサラッと交えているあたりも、ついダジャレが口に出てしまう大人のペーソスが感じられてGood。DJでは小さめのハコで、イベントのオープン時間に盛り上がる曲ではなく、ゆったりお酒を飲む曲としてかけたい。
最後は「ID-0」OPの「ID-0」、この曲を今期のイチ押しとさせていただきます。もう優勝! カッコいい! 個人的に好きな要素が全部入っているから!
スパニッシュなホーンアレンジにパーカッションの疾走するグルーヴ感がたまりません。グルーヴ感もさることながら、曲のメリハリが非常に計算されていて、緩急が生み出す高揚感の着地点がサビの最後4小節のユニゾンフレーズになっている最高のストーリー。今期はこの曲が多くのDJイベントでかかりそうな予感がします。
いかがだったでしょうか?
恐悦ながら今期のアニメ作品から選出させていただきました。ほかにも、「ベイブレードバースト ゴッド」ED「ベイササイズ/セニョール・アナミー」や、「世界の闇図鑑」ED「me to me/MONO NO AWARE」とか、解説したい楽曲はあるのですが、それはまたの機会に。
あくまで作品準拠ではなく、いちベーシスト、いちDJとして楽曲を聴いた印象を優先して選出していますので、「そうは思わない!」「推し曲じゃない!」というご意見はごもっともです。たくさんの人の、たくさんの思いがあるからこそ、はかくも素晴らしいアニメソングが生まれるのです。
それでは、次は夏アニメの時期にお会いできたら幸いです。
【プロフィール】
出口博之
ロックバンド「モノブライト」のベーシスト。
特撮をこよなく愛し、アニクラDJとしても活躍中。世界の平和を願いながらベースを奏でる。
好きなセーラー戦士は水野亜美。