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2作目を作ったことによる監督としての自覚と目標
──それ以降のガイナックス、TRIGGERの作品を見ると、そうした作り方も、実際にこれらの作品に影響されて門を叩いた若者が多かったわけですから、正道のひとつであったことが証明されているのではないかと思います。前作は「アニメミライ」の企画として若手のアニメーターたちといっしょに作られていましたが、今作でも引き続いて参加されているのでしょうか?
吉成 前作に参加してくれた人は全員参加しています。この間に「キルラキル」などを作っていたので、腕を磨いてくれたかなと思ったんですけど、意外と変わっていないんですよね(笑)。いや、上手くはなっているんですけど、やりたいことが変わっていない。若いんだからもっと今石洋之さんとか、すしおさんからもっと影響を受けそうなものなんですけれど、あまりやりたいことって変わらないんだなって感じでしたね。得意なところは伸ばしているけれど、苦手なところは相変わらずだなという(笑)。
──先輩としては、アクションも日常芝居もエフェクト作画もどれもできるようになってほしいものですか?
吉成 バランスがいいに越したことはないんですけど、得意なものが何もないよりはいいし、苦手なところで無理して苦労するくらいだったら得意なところを伸ばしてほしいのですが、一概には言えないところですね。それを監督側がわかって、見合った仕事を与えられれば作業としては問題ないわけですから。ただ、自分が監督になると、自分が描くのではなく人に描いてもらうのが仕事になるわけで、そこでのスタッフワークというかいかに適材適所に人を配置していくかが重要になってくるなと思います。自分で最初からイメージ固めて、こうやってくださいというよりは、その人ができることを探すという感じでしょうかね。そう考えていかないとストレスになってしまうんですよね。「自分で描いたらこういうふうにできるのに」と考えるのではなく、どう生かしていくかというふうに発想を変えないとダメですね。
──今回もそういうことを念頭にカットを各アニメーターに振っていったわけですね。
吉成 そのつもりです。前作よりは誰が何が得意かをわかっているので、そこはやりやすかったところですね。
──前作は「アニメミライ」の企画だったため、若手を磨くための課題としてのアクションや日常芝居のような作りの絵コンテを切る必要がありましたが、今作においてはその必要性としてはないわけですが、そのあたりどのように考えて作業に当たりましたか?
吉成 そうですね。前ほど無理はさせないようにして、なるべく抑えて、彼らに任せるようにしていたのですが、作り手側が無茶してきてしまう部分をあまり抑えられなかったという部分もあります。そこはもっとコントロールしなくちゃいけないと反省するところですね。放し飼いにしすぎたかなぁという(笑)。
──エンドロールには著名なアニメーターのお名前もありましたが、彼らの分量は多いのでしょうか?
吉成 それは最後の最後でヘルプで入ってもらったぐらいの分量で、そう多くはありませんね。主力は前作からのアニメーターとさらに新しく入ってきた新人たちに頑張ってもらいました。
──そうした皆さんで作ったことについて、監督としての手応えはどのように感じていらっしゃいますか?
吉成 もっと伸びしろがあるとは思うんです。それは作品の世界観にしてもそう。僕自身、何しろまだ2本しか監督をしていないわけで、経験を積めばもっとよくなるはずで、もっと腕を磨かせてもらいたいという気持ちはありますね。
──それは前作ではじめて監督を経験した時の手応えとはまた違うものでしょうか?
吉成 今回のほうが人に任せるという部分において難しいことが多かった気がしますね。1作目は新人たちにやってもらうとはいえ、マンツーマンでみっちり指導したので、わりと自分色に染まっているところがあるんですよね。今回は人から出てくるものを生かしていこうという方針だったので、そのやり方の違いがあります。それが本当の演出家の仕事ですから、より課題が大きくなったという感じがしますね。
──監督が特に観客に見てほしいところはありますか?
吉成 ある一部という感じではないんですよね。キャラクターをちゃんと描けているのかな、というのが自分としては気になっているところですので、そこをお客さんに納得してもらえるかなというのが気になっています。物語上では主人公の危機に周りの人々が助けてくれるところが最高潮になるわけですが、個人的にはエンディングに入る直前のラストカットが一番、作り手の気持ちが入っています。やり遂げた感があるというか。そういうところまでお客さんに感じてもらえるかはわかりませんが、舞台挨拶などでぜひ反応を見てみたいところではありますね。
(取材・文/日詰明嘉)