そのルーツから「シン・エヴァ」「シン・ウルトラマン」、そして最新作「シン・仮面ライダー」まで庵野秀明の全てがここに! ファン必見の「庵野秀明展」レポート

ホビー2021-10-06 12:00

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去る2021年9月29日、東京・六本木の国立新美術館にて、「シン・仮面ライダー対庵野秀明展」と題した合同記者会見が開催された。先に掲載した「シン・仮面ライダー」の記者会見に続いて、ここでは「庵野秀明展」の内覧会の模様をお届けする。

本邦初公開となる貴重な作品を含む1500点以上もの資料が一同に介した本展覧会。
株式会社カラーの文化事業担当学芸員、並びに「特定非営利活動法人アニメ特撮アーカイブ機構(ATAC)」事務局長を務める三好寛氏によれば、2012年に、庵野秀明氏が館長を務め、東京都現代美術館で開催された「特撮博物館」と、翌13年、松屋銀座を皮切りに現在も巡回中の「エヴァンゲリオン展」(「エヴァンゲリオン展 VISUAL WORKS」)の2つの展覧会がきっかけになったという。
それぞれ前者が日本テレビ、後者が朝日新聞の主催であり、その両者から庵野秀明の展覧会企画を持ちかけられ、「それでは皆さん一緒にやりませんか」と、国立新美術館での開催が決まったものだ。

 

本展覧会は、「庵野秀明をつくったもの」「庵野秀明がつくったもの」「そして、これからつくるもの」をキャッチフレーズに、第1章「原点、或いは呪縛」、第2章「夢中、或いは我儘」、第3章「挑戦、或いは逃避」、第4章「憧憬、そして再生」、第5章「感謝、そして報恩」の全5章で構成されている。前口上はここまでにして、さっそく展示の模様を紹介していきたいと思う。

 

入り口で来場者を待ち受けているのは、若き日の庵野秀明氏扮する仮面ライダー(旧1号)のコスプレ等身大パネル。内覧会の行われた9月30日付の朝日新聞の広告でも話題となったこのコスプレ写真だが、出典はバンダイが発売していたプラモデルを中心とした情報冊子「模型情報1985年10月号」で行われた企画。

 

■第1章「原点、或いは呪縛」

 

 

最初の展示は、圧倒的な数の特撮作品のミニチュア。

展示の大半が、少年時代の庵野氏を形作ったとも言える紛れもない本物である。こうしたミニチュアは、本来、撮影が終われば破棄されてしまう一過性のものであるが、近年、「特定非営利活動法人アニメ特撮アーカイブ機構(ATAC)」が、資料として保存活動に力を入れており、その成果の一端を垣間見ることができる。通常なら撮影に関わる関係者しか見ることができないミニチュアの数々だが、それらを実際に間近で見ることができるのは、何より貴重な機会と言えよう。

 

手前は東宝映画「海底軍艦」(1963年)から轟天号。奥が「惑星大戦争」(1977年)から轟天。作品を越えた「二大轟天」の揃い踏みが嬉しい。恐らく板金加工で作られたものと思われる轟天号の本体、リアリティを醸し出す轟天の汚し塗装にも注目。

 

東宝映画「メカゴジラの逆襲」(1975年)からメカゴジラII。ボディはかなり劣化しているものの、その迫力は健在。

  

庵野氏がしばしば愛を炸裂させている円谷プロの「マイティジャック」(1968年)のメカ。左の2機がビブリダー。右がバギー。ビブリダーは、翼端が異なる2種とも現存しているという奇跡! いずれもかなり大きなサイズのミニチュアで、バギーはコクピット内の人形の大きさから、おそらく1/6スケールだと思われる。

  


展示のミニチュアに目を奪われがちだが、こんなところにも注目。写真は「箱馬」と呼ばれる撮影現場で用いられる木箱で、被写体を載せたり、足場にしたり、さまざまな用途で用いられる。各社の焼き印が押されており、「特撮研究所」は、特撮監督の故・矢島信男氏が設立した会社で、東映の「仮面ライダーシリーズ」「スーパー戦隊シリーズ」などの特撮でおなじみ。「東宝ビルト」はウルトラマンシリーズの製作拠点となった撮影所で、「ウルトラQ」(1966年)や「ウルトラマン」(1966年)はもちろん、平成になってからの「ウルトラマンティガ」(1996年)もここで撮影された(2008年に閉鎖)。

 

 

ピー・プロダクションの「スペクトルマン」(1971年)から、スペクトルマンのマスクと、回転シーンの撮影用に作られたミニチュア。後者は純粋に展示物として見ると、簡素な作りだが、テレビ放送の時間のないスケジュールや限られた予算の中、いかに効率よく成立させていたかを見て取ることができる。

 

「ウルトラマン80」(1980年)からはスカイハイヤー。「特撮のDNA—ウルトラマンGenealogy」で展示されたものとはサイズ違いのミニチュア(こちらのほうが小さい)。機首には大胆にもビスが突き刺さっていて「えっ?」と驚くかもしれないが、操演の際の「吊り点」だと思われる。

  

スーパー戦隊シリーズ第4作「電子戦隊デンジマン」(1980年)からデンジタイガー。機体のラインは凹モールドではなく、単なる黒線で表現されている。大事なのはミニチュアとしてのリアルさの追求ではなく、映像としてのリアルさの追求である。

  

「バトルフィーバーJ」(1979年)からバトルフィーバーロボのミニチュアも展示。東映特撮のミニチュア展示は非常に珍しいので、この機会に、しかと現物を目に焼き付けてほしい。

  

 

庵野氏が影響を受けたアニメ「宇宙戦艦ヤマト」(1974年)から。第7話「ヤマト沈没!!運命の要塞攻略

やはり庵野氏が影響を受けたアニメ「機動戦士ガンダム」(1979年)コーナー。下のショーケース内には安彦良和氏による第1話の原画が展示されている。

 

■第2章「夢中、或いは我儘」

 

 

第2章では、アマチュア時代の創作の数々、そして「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年)制作時までの軌跡を辿ることができる。写真は本邦初公開となる中学時代の庵野氏が描いた油絵。前述の三好氏はこれらについて「油絵具を使い始めて間もない頃の作品ですが、一種の風格すら感じるような絵で、非常に味わいがあります」と解説。

 

庵監氏が監督を手がけたDAICON FILM制作の特撮自主制作映画「帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令」(1983年)からMATの隊員服。「ウルトラセブン」(1967年)で、成田亨氏がデザインを手がけたウルトラ警備隊の隊員服の影響が色濃い。

 

同作のメイキング写真。後の「エヴァ」を彷彿とさせる密度の濃い画作りがこの写真からもわかる。会場では大きなスクリーンで上映もされており、8ミリでの自主映画ながらも細部までのこだわった作り込みを堪能できる。なお、写真手前の電話ボックスは当時あった貯金箱(※展示アリ)。

 

左がマットアロー1号、右がマットジャイロ。展示は後年再製作されたものだが、これらはなんと「紙製」で、当時、衝撃を受けたファンも少なくなかったと思う。

  

 

上記で紹介したマットアロー1号、マットジャイロのデザイン画。「帰ってきたウルトラマン」(1971年)に登場した両メカが、最先端(当時)のイメージでリファインされている。

  

 

 

DAICON FILMでの仕事といえば、大阪で開催された第20、22回日本SF大会(通称「DAICON3」、「DAICON4」)で上映されたオープニングアニメーションも欠かせない。「SF」の名のもとにアニメ&実写問わず、さまざまなキャラクターが入り乱れるさまがとにかく痛快で、いずれも必見(※会場で上映あり)。写真はランドセル女児を追いかけるパワードスーツの原画とデザイン画。元々はご存知、バート・A・ハインラインのSF小説「宇宙の戦士」(原題:Starship Troopers)の挿絵用にスタジオぬえの宮武一貴氏がデザインしたものだが、ここではデフォルメされており、後にジャンル化される「ちびキャラ」、あるいは「SD(スーパーデフォルメ)」の萌芽を感じさせる。

 

「DAICON3」のオープニングアニメから、有名な、ガンダムからイデオンに変身するパロディ(※ウルトラセブンの変身シーンのパロディでもある)の原画。ちなみに展示ではイデオン→ガンダムになっているが、実際の映像ではガンダム→イデオンとなる。

 

こちらは「DAICON4」のオープニングアニメから。ランドセル女児が成長したバニーガールの女の子が活躍する。所説あるが「乳揺れの元祖」(?)としても知られる。

 

引き続き「DAICON4」のオープニングアニメから、「科学戦隊ダイナマン」(1983年)に登場するダイナロボ。劇中ではバニーガールを踏みつぶそうとするも逆に放り投げられる。足元に「自家用」と描き込まれているネタも有名。

 

このほか、DAICON FILM時代には、1983年代に企画されたDAICON FILM版「仮面ライダー」のデザイン画も展示。直接の関係性はさておき、「シン・仮面ライダー」が実現した今、非常に感慨深い展示内容となっている。

  

 

プロとしての初期の仕事となる「風の谷のナウシカ」(1984年)では、宮崎駿氏から巨神兵の場面の作画を任された。展示されている一連はそのレイアウト下書き。全身が徐々に腐敗していくさまが、見事に表現されているが、素人ながらも難易度の高さがうかがえる。恐らく庵野氏本人の筆跡だろう、「この顔!忘れるべからず!!」と書かれてあるものもある。

 

 

監督(総監督)を務めた「トップをねらえ!」(1988年)、「ふしぎの海のナディア」(1990年)から各種ポスター展示。こうして並べると、当時を思い出す人も多いのではないだろうか。なお、「シン・仮面ライダー」でヒロインを演じる浜辺美波さんは、幼少期に「ふしぎの海のナディア」を観ており、「ナディアちゃんがすごくかわいかった!」と、先の会見で興奮気味に語っていた。

 

 

 

「ふしぎの海のナディア」のAR台本とギッシリと書き込まれた創作メモ。ノーチラス号のスケッチも確認できる。

 

 

 

もはや説明不要の「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年)。ここでは決定デザインに至るまでのエヴァンゲリオンまわりの資料をいくつかピックアップしてみた。

 

第七話「人の造りしもの」に登場したジェットアローンのデザイン画。「マジンガーZ」(1972年)のボスボロット的な味わいを感じさせるが、名称は東宝映画「ゴジラ対メガロ」(1973年)に登場したジェットジャガーとその公募デザインとなったレッド・アローンの合わせ技。今日のジェットジャガー復権にも寄与した?

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