平尾隆之が、「映画大好きポンポさん」をアニメ化したい本当の理由【アニメ業界ウォッチング第67回】

アニメ2020-06-21 12:00

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杉谷庄吾【人間プラモ】氏(以下、杉谷庄吾氏)による漫画「映画大好きポンポさん」の劇場アニメが制作中だ。かわいらしい少女の姿でありながらも敏腕の映画プロデューサーであるポンポさん、彼女のアシスタントとして働くジーンらを描く、架空の映画界を舞台にしたファンタジックな作品だ。
監督は、テレビシリーズ「GOD EATER」(2015年)や劇場用アニメ「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」(2013年)で知られる平尾隆之氏。だが、「GOD EATER」ではこだわりのあまり制作が思ったとおり進まず、イレギュラーな形の放送形態になってしまったという。その挫折経験を克服し、みずからの働きかけで動きはじめた「ポンポさん」のアニメ化。平尾監督は今、どんな想いで映画制作に打ち込んでいるのだろう? 制作を担当するCLAPのスタジオを訪ねた。

製作委員会ありきではなく、ひとりの有志が言いはじめた企画


── 平尾さんが、「映画大好きポンポさん」を監督することになった経緯を聞かせてください。

平尾 話すと長くなるのですが、先に制作会社や出資社が決まっていて、そこから僕に仕事として降りてきた話ではないんです。テレビアニメ「GOD EATER」の制作では多大なご迷惑をおかけしてしまったので、フリーランスにはなったものの、もうアニメ業界ではまともな仕事は来ないのではないかと思っていました。そこで、「自分はなぜアニメをつくりたかったのだろう?」「これから自分は、どんな作品をつくりたいのだろう?」と、いま一度考え直してみたんです。すると、「おそらく、これが一生かけて描きたいのであろう」というテーマがひとつ、浮かび上がってきました。そのテーマを、フリーになってから会った人みんなに、なるべく話すようにしたんです。そのテーマを描くには、オリジナル企画ならうれしいけど、原作ものでもまったく構わない。自分はこういう方向性のアニメをつくりたいんです……と、自分から周囲に発信していったんです。
当時、「進撃の巨人」(第2期・2017年)を手伝ったりしていたんですけど、いくつかの制作会社さんから監督のお話もいただいていました。とてもありがたかったのですが、それらは自分のやりたいテーマと照らし合わせたとき、うまく行かなそうだったんです。そんなとき、ある方から「映画大好きポンポさん」という漫画があるから、「ちょっと読んでみてほしい」「あなたがアニメ化すべきじゃないか」と、声をかけられました。初めて「ポンポさん」がpixiv(ピクシブ)に掲載されて、ほんの2日後ぐらいの頃だったと思います。それまで僕のところへ来た企画はハードなバイオレンスものが多かったのですが、それらとはまったく違う、かわいい絵柄だったので、その時点で「おっ」と思いました。読んでみたら、とても面白くて。これなら自分のやりたいテーマが込められる、と思いました。それで、話を持ってきてくれた紹介者の方に「これならば自分でアニメ化したい」と返事をしたんです。すると、その人は原作者(杉谷庄吾氏)に会いに行ってくる、と言ったんです。その紹介者はとある会社のプロデューサーではあるんですが、ひとりの個人として僕に「ポンポさん」を紹介してくれたんです。だから、本当に熱意だけで、杉谷さんに突撃していった(笑)。企画書もなければ、アニメ化の算段がついているわけでもない。杉谷さんと会って初めて、杉谷さんがプロダクション・グッドブックの社員だと知ったぐらいですから。その時点で、すでに「ポンポさん」を書籍化したいというオファーが10を超える編集部から来ていて、まだどこから出版しようか決めかねているという話でした。「アニメ化を前提にするなら、どこの出版社がいいんだろう?」と、今度は僕が相談を受けました。
ちょうどその頃、僕は富士見ファンタジア文庫から『のけもの王子とバケモノ姫』という小説を出すための執筆作業をしていましたので、「その打ち合わせに同席しませんか?」と、紹介者の方をお誘いしたんです。そこで偶然、小説の担当編集者さんが以前、漫画の編集もしていたことが分かって、その場で「ポンポさん」をKADOKAWAさんから出版してはどうだろうか、という話になりました。そこからKADOKAWAさんを幹事会社にして「ポンポさん」をアニメ化するための準備が始まりました。同時期に、松尾(亮一郎)くんがCLAPという新しい制作会社をつくったと聞いて、「こういう原作漫画があって、まだ製作委員会も何も立ち上がってないんだけど、一緒につくりませんか?」と声をかけたんです。 ですから、ひとりの有志の方がフリーランスになって仕事のない僕に「『ポンポさん』をアニメ化すべきだ」と言いはじめて、僕が小説を書いていたり、松尾くんが会社をつくったり、さまざまな縁が偶然重なって、企画が動き出した感じなんです。……長くて、すみません(笑)。

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