スナップフィットの低価格キットで、「蒼き流星SPTレイズナー」のライバル機「ザカール」のゴージャス感は表現可能か?【80年代B級アニメプラモ博物誌】第5回

2020年11月22日 12:001

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早く胴体を組んでしまいたいが、頭がまだ手つかずだった。クリアパーツを使った頭部と、他キットと交換可能なバックパック。この2つが、「レイズナー」のプラキットでは売りとなっているが、その分、パーツを食われるし、工程も増える。

▲ 左右に分割された頭部の内側に、座席パーツを組み込む。同時に赤いクリア成形のキャノピーを挟み込むと、上下に開閉する。「キャノピーを開くと座席がある」、このリッチ感がうれしい

▲ 左右から突き出したツノはワンパーツで成形されていて、キャノピーの下から組みこむ。だけど、これではキャノピーを閉じるたび、座席に座ったル・カインが板に潰されてしまうよね……

▲ ほかのキットとの互換性のあるバックパック。左右に分割された本体に2枚の翼、ノズル部を取りつける。ノズル部は内側にもモールドがあって密度が出る。少しでもよくなるように工夫する姿勢は、見習いたい

あとは胴体を組むだけ……なのだが、ザカールは胸から背中に向けて、斜めにV2ガンダムみたいな羽が突き出てるんだよね。この羽パーツは胴体後ろ側のパーツにはめ込む。その上から、胴体前側のパーツをはめ合わせる。すると、胸の出っ張りの内側に羽パーツが位置して、深みのある多層構造となる。設定画をよく読み解いてますね。シンブルながら、レベルの高い仕事をしてます、86年のバンダイさん。

▲ 羽パーツの内側、両肩に腕を受けるためのパーツを組み込む。また、股間部に両足との接続パーツも入れておく。胴体を前後で分割するとペタッとなりがちだが、このキットは“前後に長い”シルエットを獲得している

▲ 頭と手足を差し込んだら、バックパックを取り付ける。背中の穴は下側にスリットが伸びており、バックパックを差し込んでから下にスライドすると「カチッ」と固定される。機能的だ

▲ 胸の傾斜が、両肩の羽、バックパックへと繋がって見事なラインを形成する。大河原邦男さんのロボは、こういう統一感がいいよね。キットは横幅の広い箱型ロボから脱却して、スマートな頭身を維持できている

▲ 赤いキャノピーは、前部に向けてすぼまりすぎ? もう少し、ゆったりとボリュームがあったほうがよかったかもしれない。開閉ギミックの精度は良好で、浮いたりズレたりすることはない

▲ そして、左腕の武器“ホーン・オン・アーム”! 軸によって可動するはずだが……内側に数ミリ、外側にも数ミリ動くだけ。でも、見映えではなくて「自分の指で動かせる」ことが大事

▲ ヒジ・ヒザを最大限に曲げると、そこそこのアクションポーズがとれる。銃を両手で構えたりはできない。そこから先は改造するなり各自で工夫してください……という素材感が、この頃のキットには残っている

「レイズナー」後半には、ドリルやムチを武器にした悪役ロボが登場する。「ロボットが兵器として使われている架空戦記」という80年代前半に流行ったロボット物のスタイルが決壊して、巨大ロボに「キャラクターが着るコスチューム」に近いニュアンスが加わった。ザカールが金色なのは、搭乗するル・カインの貴族趣味のあらわれであって、兵器としてのリアリティとは次元が異なる。
……すると、ロボットを戦車や戦闘機のようにとらえて、一種のミリタリー模型として作る方法論が万能とは言えなくなってくる。今回のザカールが金メッキされたキットだったら、また新しい方向性が見えたような気がするが、いかがだろうか?
さて来月は、とんでもなくミリタリー風に振り切った究極の“B級アニメプラモ”を用意しているので、お楽しみに!


(文/廣田恵介)

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関連作品

蒼き流星SPTレイズナー

蒼き流星SPTレイズナー

放送日: 1985年10月3日~1986年6月26日   制作会社: サンライズ
キャスト: 井上和彦、江森浩子、梅津秀行、鹿股裕司、鳥海勝美、平野文、戸田恵子、原えりこ、堀秀行、広瀬正志、横尾まり、塩沢兼人、渡部猛
(C) サンライズ

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コメント(1)
ソウキソウキ2021/03/01 16:31

ザカールにはでも、その貴族趣味や優美さが足りないと当時から不満でした。 大河原さんには実用性度外視の、見てくれ重視の優美さ優雅さは苦手だからなぁと、残念な気持ちに。 ガンダムWも「エンドレスワルツ」でカトキさんがアレンジしたら、艶っぽさが増しましたし。 ちなみにそのアレンジが良いか悪いか好きか嫌いかはまた別ですが。

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