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スケールモデルと、キャラクターグッズの接点
── 「ガールズ&パンツァー」(ガルパン)や「艦隊これくしょん」(艦これ)のヒットが、戦車模型や艦船模型によい影響をあたえたと聞いています。 馬場 弊社はキャラクター製品用に、「ぺあどっと(Pairdot)」というブランドを持っています。こちらでは、IV号戦車やセンチュリオンなど「ガルパン」のデフォルメされた戦車にフィギュアを乗せた完成品を展開し、10種類ほど販売しています。キャラクター製品以外にも、ミリタリーでは1/35や1/72スケールで明治時代の「二十八糎榴弾砲」や現代の陸自車輛のキットもあります。
「艦これ」は配信された当時は、プレイヤーがゲーム初期に手に入りやすい駆逐艦はよく売れていました。また、関連製品では、「妖精さんと25mm三連装機銃」を発売しました。25mm三連装機銃は1/35スケールで、非常に話題になったプラモデルです。
中村 九六式25mm三連装機銃は、旧日本海軍のさまざまな艦船に搭載された装備です。ですから、1/700の艦船に付いている小さな機銃と1/35の大きな機銃を、並べて飾ると面白いんです。「こんなに大きかったのか?」と、びっくりしますから。こうしたスケールの意外性が、いちばん面白いと思います。
馬場 九六式25mm三連装機銃が好調だったので、プラモデルに妖精さんの完成品フィギュアを付属させたコラボ製品として発売したんです。弊社としては、唯一の「艦これ」関連商品です。
── 最近、ぺあどっとブランドで発売されたのが、「この世界の (さらにいくつもの)片隅に 日本海軍 戦艦 大和」ですね。 中村 月刊モデルグラフィックス誌の「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」特集で、片渕須直監督が弊社の1/700大和のプラモデルを作画参考用に組み立ててらしたことを知って、感激しました。映画に登場したのと同じ旗を新たに付けることで、コラボレーションが実現しました。
── 旗は、塗装済みのエッチングパーツで再現されていますね。 中村 当初は、デカールで再現すればいいのではないかという話もありました。しかし、旗をデカールにすると、細い線を張る手間が出てきてしまいます。線を張る手間を省くため、エッチングパーツにしました。それぞれの旗の意味については、最初の打ち合わせで、片渕監督から詳しくうかがいました。
馬場 箱絵のレイアウトも、片渕監督が大まかなデザインを決めてくださいました。
中村 片渕監督の行動力は、すごいですね。映画の関連イベントであちこちに出かける合間に、零戦や航空機についての研究もなさっていますからね。
── この1/700大和は、非常にパーツが細かいですよね。映画を見て初めて買った方から、「組み立てづらい」との声は聞かれませんか? 中村 そこそこ数は出ているキットですが、そうした声はありません。皆さん、記念用に買って、組み立てていないだけかもしれませんが(笑)。
── ピットロードさんのプラモデルは、確かにパーツは細かいのですが、接着位置が必ず見つかります。艦橋などはスライド金型で一体成型されていて、根気さえあれば誰にでも組み立てられます。 馬場 ここ何年かは金型会社との3D CADによる形状の伝達方法が確立し、パーツ精度に大きく貢献してくれています。
中村 CADでも、二次元だと立体にするときに齟齬が生じます。手描きの図面だと、エンピツの芯より細かい精度は求められないわけです。計算上は寸法が合っていても、立体ではつながらない部分が出てきてしまいます。しかし3D CADなら、「あと、100分の5まで削ってくれないと、ここの溝が抜けないよ」といった細かい調整を、金型を設計する側へダイレクトに伝えることができます。また、金型の放電加工で使われるマスターは、かつては銅を削って作っていました。今ではカーボンなども使われ、金型製作の素材も変化してきています。そのおかげで、最近はテストショットが上がった段階で、「もう少しクリアランスを出してほしい」といった要求を言いやすくなりました。
── 1/700「世界の現用戦闘機セット2020」を組み立てたのですが、とても小さいのに精密な溝が彫ってあって、感心しました。 中村 昔の1/700スケールの戦闘機は表面がツルッとしていましたが、戦闘機は上から見たときに密度感が出ていてほしいわけです。現在の技術なら細かいモールドを入れられるうえ、型を分割する段階で、着陸脚を接着する手間を省くこともできました。パーツ数を減らしながら、なおかつ精密感を維持できる、合理的な分割が可能になりました。