ホビー業界インサイド第23回:美少女フィギュアか伝統工芸か? 永島信也が彫る“美少女根付”は、どこへ向かう?
いまの時代の流行に、あえて流されたい
── いま、ワンダーフェスティバル(WF)には出展しているのですか?
永島 はい、出展しています。興味のある方に、ピンポイントで受ける感じですね。色の着いていないフィギュアだと思われて素通りされるのは仕方ないことですが、「根付である」という部分に興味を持ってくださる方が、意外と多いです。ストラップではない本格的な根付はあまり目にする機会がないでしょうし、根付は手で握ることができたり、独特のラインを描いていますよね。フィギュアの作り手の方は、そういう造形的な部分を見てくださいます。
── だけど、WFでいきなり根付を買う人はいないんじゃないでしょうか?
永島 そうですけど、WFで見つけてくれて、後からお客さんになってくれた方はいます。WFにも一点モノやオリジナル物が増えてきたと聞いているので、作品をアピールする場としては申し分ないです。
── 根付を作るときは、どういうことに気をつけていますか?
永島 これだけ数を作っていると、どうしてもネタが切れてきてしまいます。そういう場合、自分がそのときハマっているゲームなどからモチーフを持ってくるようにしています。
── ゲームというと、たとえば?
永島 最初にハマっていたのは「DARK SOULS」ですね。世界観やデザイン・センスが好きで、モロに影響を受けていました。
── いっそ、ゲームのキャラクターそのものを作ろうとは考えませんか?
永島 それをやると、キャラクターありきになってしまって、キャラクターに寄せて作らないといけませんよね。二次創作は得意ではないので、やはりオリジナルで作っていきたい。
── 人から「こういうキャラクターをお願いします」と言われることはありますか?
永島 ご注文品の場合は、もちろんオーダーに従います。僕に頼まれる方は、こういうテイストの作品を好きで頼んでらっしゃいますから、それほど外れたご注文はありません。「猫をモチーフにして」「表は女の子、裏はライオンに」「こういう中国の妖怪があるので、あなたの作風で作って」といったオーダーが多いですね。そういう場合、やはり女性の妖怪だったりしますね(笑)。
── 注文品以外は、自分の好きなものを作るわけですね?
永島 そうですね、自分の好きなものと周囲から求められているであろうものの両方を作ります。それに疲れてくると、作業していて楽しいものを作ります。亀なんかがそうですね、単純に形を作るのが楽しい。作家として作り続けなくてはならないので、「飽きない・疲れない・嫌にならない」バランスを、いつも考えています。
── いちばんこだわっているポイントは、どこですか?
永島 なるべく、多くの人に好かれる顔を目指しています。ドールのデフォルメ感が好きなので、ドールの資料はよく見ています。顔は彫りすすめ方で表情が変わるので、何個も彫って試行錯誤しています。個展にいらっしゃる方からも「こっちの顔が好き」と、人気が分かれてきます。自分の好みも大事だけど、どうすればお客さんに好まれるのか考えながら作るのも、面白い。答え合わせ的な作り方が、好きなんでしょうね。あえて、流行に流されたいとも思っているんです。根付というのは、その時代時代に即した文化を反映してきましたから、現代の文化の中で自分の感じているニュアンスを表現したいと考えています。
(取材・文/廣田恵介)
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