アニメライターによる2022年夏アニメ中間レビュー【アニメコラム】
アニメにおいて輝くことは絶対的に正しい。バトルものであれば戦闘中に光輝いたヒーローはこれまでの劣勢が嘘のように勝利を収めるし、恋愛ものであれば他人よりも輝いて見えるヒロインに多くの人々が心を奪われる。ステージに立ってスポットライトを浴びるアイドルものであればなおさら、輝くことの正しさは揺るぎがない。だからこそアイドルアニメのタイトルには「輝き」や「サンシャイン」、「キラッと」といった光にまつわる言葉が冠されてきた。
だが本作は「シャインポスト」=「輝く道標」というタイトルを持ちながら、輝くことがネガティブなものとして表われている。崖っぷちのアイドルユニット「TiNgS(ティングス)」を救うために招聘されたマネージャー・日生直輝は、嘘を吐いた人間が輝いて見えるという特殊能力の持ち主。彼がTiNgSのマネージャーになろうと決めたのは、メンバーのひとりが語った「シャインポストになる」という夢に嘘がなかった、つまり輝かなかったからだった。そしてほかのメンバーも、彼が手を差し伸べることによって、本心に嘘を吐かずに活動ができるようになる。本作の第一声が「さあ輝こう」という言葉だったのとは裏腹に、輝きを消すことがマネージャーの仕事のようにさえ見える。輝きを巡る物語がこれからどのような道筋をたどるのだろうか。
音楽系芸能人が参加するハイパースポーツの大会「Extreme Hearts」に挑む少女たちを描いたオリジナルアニメ。「Extreme Hearts」の競技は第1試合のフットサルを筆頭に、バスケットボール、野球、ハンドボール、バドミントン、さらにはフラッグフットボールまで、試合ごとに異なる複合型を採用。たったひとりで参戦した高校生歌手・葉山陽和は当然メンバーが足りないのだが、それを補うのが人型ロボットである4体のプレイヤーロボット(Pロボ)である。
Pロボは個体ごとに髪型や瞳の色が異なっており、深夜の特訓に付き合ったり、休んで充電していたり、陽和に変な名前を付けられたりと、単なるモブには留まらない存在感を放つ。そうは言っても主要キャラではないため、試合では大活躍もしなければ致命的なミスもなく、物語を邪魔をせずに見せ場を作るという、麻雀アニメにおける数合わせ面子のような黒子に徹した立ち回りが愛おしい。試合に勝利した後のウイニングライブには参加しないものの、彼女たちもチームを支える重要なメンバーには変わりはないだろう。公式サイトでは「学習型」と明かされていることから、意外なメイクチャンスのシーンが訪れるのを期待したい。
17年に及ぶ昏睡状態から目覚めたおじさんが甥のたかふみとともにルームシェアを始める異世界コメディ。おじさんは昏睡中に異世界「グランバハマル」で過ごしており、そこで得た魔法のスキルを駆使して動画配信者として生計を立てようとする。
アニメは基本的に伏せ字や自主規制音、モザイクが増えれば増えるだけつまらなくなるものだが、本作ではおじさんが配信するYouTubeや、たかふみが小学生時代に読んでいた「ゼロの使い魔」など、多くの物事が実名で登場。おじさんが大好きだと語るゲームメーカーのSEGAはスペシャルサンクスに毎回名を連ね、劇中ではゲーム機やパッケージはもちろん、効果音まで使われるほど。2人がルームシェアしている団地のリアルな生活感も相まって、孤独で過酷な異世界暮らしと好対照をなしている。なおテレビ放送では原作の掲載誌「WebComicアパンダ」のCMにおじさんとたかふみが出演。やけに芝居がかった口調から、本当に企業案件を受けているような雰囲気が出ているのも楽しい一作だ。
1990年から2003年まで「週刊少年マガジン」で連載された「シュート!」が28年ぶりにアニメ化。物語の舞台は同じ掛川高校ではあるもののストーリーはオリジナルで、弱小校に成り果てたサッカー部の復興を描く。サッカーアニメでありながら1話がFPSのゲーム画面から始まるなどサプライズに事欠かない本作だが、注目はキャラクターの熱量の高さ。とりわけ敵チームの天才プレイヤー・小久保公平は異様なテンションを誇り、現時点でほぼ2話にしか登場していないものの忘れられない爪跡を残す。
主人公・辻秀人のかつてのチームメイトだった公平は練習試合での予期せぬ再会に感激。敵にも関わらずベンチから秀人を応援するなど天真爛漫な振る舞いを見せる。そしていざピッチに立つと秀人にイギリス仕込みの熱烈ハグ。プレイ中も爽やかな笑顔と甘えた声で付きまとい、フィールドをファンシーな世界へ染め上げていく。3回パン、オバケ、流背、効果音など、ありとあらゆる演出が公平のウザかわいさを増幅させ、どこかホラーのテイストすら感じられる名シーンに仕上がった。
お笑い選手権「てっぺんグランプリ」の頂点を目指す女子高生お笑いトリオたちが、学生寮で共同生活を過ごすオリジナルコメディ。総勢15人の大所帯である彼女たちの出身地は、お笑いの本場・大阪に加えて、北海道、東海、そして茨城と多彩な顔ぶれ。キャストもキャラと同じ出身の声優陣を揃えており、劇中で方言が飛び交う様がかしましくて賑やかだ。もはや大量のキャラクターが覚えられない中年オタにとっても、方言は役を見分ける手助けになるだろう。
その反面、第5話では登場人物がたったの3人。1シチュエーションで会話劇を繰り広げるという攻めた展開もオリジナルならではの魅力。今後はどんなエピソードが見られるのか予測不能なタイトルに注目したい。
(文・高橋克則)
(C) Konami Digital Entertainment,Straight Edge Inc./シャインポスト製作委員会
(C) PROJECT ExH
(C) Hotondoshindeiru/KADOKAWA
(C) 2022大島司/シュート!Goal to the Future製作委員会
(C) てっぺんグランプリ実行委員会
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