よりディープに、よりコアに! 音楽的な聴きどころあふれる2021年夏アニメのアニソン10選! 出口博之の「いいから黙ってアニソン聴け! In 2021夏」

アニメ2021-08-21 14:00

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

全国1千万人のアニメファンの皆様こんにちは。流浪のベーシストであり、アニメソング・特撮作品の楽曲をたくさんかけるDJこと出口博之です。

毎クールのアニメ作品が出揃い、物語も盛り上がってくる頃にどこからともなくやってくる、主観がすぎるコラムこと「いいから黙ってアニソンを聴け!」2021年夏号、開幕します!

初めて読まれる方もいらっしゃると思いますので、当コラムの簡単な説明をば。

 

毎クール放送されるアニメ作品のオープニング曲、エンディング曲をすべて聴き、ワタクシ出口の大いなる主観で10曲選ぶ、というコラムです。「あの曲がない!」「この曲を入れてない! やり直し!」とおっしゃる方もいると思いますが、あくまで私の主観、好みで選んで楽曲の聴きどころを解説しておりますので「あー、こんな聴き方もあるんだなぁ」というお気持ちで読んでいただけたら幸いです。

 

2021年夏クールは、方向性が明確で誰に向けているのかがわかりやすい作品が多いように感じました。視聴者の顔を第一に想像しながら作られたような「そう!こういうのが見たかった!」と思わせる作品、例にあげると「ゲッターロボ アーク」もそうですし、「Sonny Boy -サニーボーイ-」も特定の年代には「俺たちのためのアニメだ!」と特別な思い入れを抱かせるに十分なクリエイターが名を連ねています。その傾向は楽曲にも表れていて、歌詞やサウンドデザインにアニメ作品の世界観をていねいに盛り込んで、「アニメ作品のために作られた楽曲」が多かった印象。

それでいて、音楽的な観点で見ればよりコアなジャンルに踏み込んでいる楽曲もあり、ディープでコアな音楽ファンに訴えかける力をもった楽曲も際立っているように感じました。

 

つまり、全部に聞きどころがあって全部よかったので、10曲選ぶのとても難儀した次第であります!。

そんな2021年夏アニメソング、選出した珠玉の10曲はこちら!

 

・ヴァニタスの手記

OP「空と虚/ササノマリイ」

・かげきしょうじょ

OP「星のオーケストラ/saji」

・カノジョも彼女

ED「ピンキーフック/麻倉もも」

・ゲッターロボ アーク

OP「Bloodlines~運命の血統~/JAM Project

・終末のワルキューレ

ED「不可避/島爺」

・迷宮ブラックカンパニー

OP「染み/HOWL BE QUIET」

・乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X

OP「アンダンテに恋をして!/angela」

・うらみちお兄さん

OP「ABC体操/いけてるお兄さん(CV.宮野真守)うたのお姉さん(CV.⽔樹奈々)」

・魔法科高校の優等生

ED「ダブル・スタンダード/フィロソフィーのダンス」

  

・月が導く異世界道中

ED「ビューティフル・ドリーマー/Ezoshika Gourmet Club」

  

改めて選出した10曲をみてみると生の楽器というか、バンドサウンドが自分の中で大きなウェイトを占めていることがわかる結果になりました。

それでは、それぞれの解説に参ります。

 

 

・ヴァニタスの手記

OP「空と虚/ササノマリイ」


イントロ1音目から放たれる「いい曲」の説得力と貫通力は、今期トップだと思います。とてもカッコいい。都会的なサウンドの中に哀愁が隠れていて、洒脱で先進的なのにどこか懐かしくもある。不思議な浮遊感とリアリスティックな視点が混ざり合う楽曲の世界観は、2021年の空気感が生々しく切り取られたような手触りがあります。

音楽的な部分に注目すると、昨今スタンダードになっているコード進行の一種「Just The Two of Us進行」を分解し、独自の世界観に落とし込んでいるのが特徴。過去にも「Just The Two of Us進行」や、このコード進行の影響で作られた楽曲がルーツになっていると思しきアニメソングをピックアップしているのでお気づきになる方もいらっしゃると思うのですが、一聴して「いい曲!」と引っかかるのは大抵このコード進行の楽曲。ちょっと極端に言いすぎかもしれませんが、少なくとも昨今のヒット曲の多くはこのコード進行の影響下にあるといって間違いありません。

ですが、このコード進行を使えばヒット曲になる、ということではありません。

「Just The Two of Us進行」(および、それに類するもの)は音楽的に明るすぎず暗すぎず、お洒落な雰囲気でほどよい浮遊感があってメロディの世界観を最大限に引き出す力があります。しかし、その力が発揮されるのは良質なメロディや言葉の響きがあってこそ。つまり、コード進行はあくまで「装置」でしかなく、楽曲の本質にあたるメロディがよくなければ機能しません。

言い方を変えれば、この楽曲には強靭なメロディと唯一無二の言語感覚が備わっているからスタンダードなコード進行がオリジナリティあふれるものに生まれ変わっているのです。

  

・かげきしょうじょ

OP「星のオーケストラ/saji」


とにかくメロディが素晴らしいです。奇をてらわず真正面からメロディの強度、貫通力をストイックに追求した結果、生まれたラインだと思います。いいメロディ、というのは、一度聞いただけで耳に残る、覚えやすいもの。つまり、シンプルであることがグッドメロディの条件になります。

しかし、シンプルといっても音数が少ない、とか、メロディの抑揚が単純なものだから誰でもグッドメロディが作れる、というわけではありません。

数百色の絵の具を使った素晴らしい風景画ではなく、赤青黄の3色だけで見た人全員を感動させる風景画を描く。極端な例えですが、シンプルなメロディというのはこういった構造であることがほとんどです。

シンプルで強いメロディを生み出せるバンドは、時代に左右されない普遍性を持っています。この楽曲も、誰にでもよさが伝わる普遍性があるように思います。シンプルにすごくいい曲です。

  

・カノジョも彼女

ED「ピンキーフック/麻倉もも」


カッコいい! 全部カッコいい!

昨今のアニメソングはたくさんの楽器を使って音を壁のように構築するのが主流となっていますが、この曲は完全に真逆。無駄を削ぎ落とし必要最小限の楽器でメロディのよさを最大限引き出すアレンジになっていて、全部の楽器の音が音楽的な役割を持って機能しているのが手に取るようにわかります。

リズム楽器の構築、ウワモノの振り分け方、各楽器の美味しいフレーズなどなど、どの角度から切り取っても隙がないアレンジは、作曲をしている、あるいはDTMをやっていてアレンジに悩んでいる方にとって最良のお手本になると思います。

楽器を演奏する方も同じで、ドラムもベースもギターも鍵盤も、全員この曲を課題曲にして練習に取り組むのが吉。

手癖にしたいフレーズの見本市なので私も今日から練習に取り組みます!

カッコいい!

  

・ゲッターロボ アーク

OP「Bloodlines~運命の血統~/JAM Project」


俺たちのゲッターロボ! 俺たちのJAM Project! アツい! 優勝!

 

解説おしまい!

 

さすがにこれでは「ちゃんと仕事しろ!」と怒られるのでもう少し書きますが、正直なところ、伝えるべき気持ちはすべて語り尽くしているかもしれません。ゲッターロボとJAM Projectが揃ったら魂が震えないわけがない。カッコいいもんはカッコいい! 優勝!

すぐこうなるので少し落ち着いて楽曲のポイントに注目してみると、JAM Project特有の構成の複雑さが際立っています。JAM Projectは強烈な個性を持ったボーカリストが居並ぶスーパーユニットなので、楽曲には必ず各人それぞれの見せ場があります。そのため、オーソドックスな楽曲構成(A、B、サビといった一般的な曲の流れ)では最適なパートの振り分けができないため、転調であったり、静から動への極端なアレンジを多く取り入れているのです。

アレンジが目まぐるしく変わるのは、ともすれば楽曲の整合性のなさに繋がりますが、そこは百戦錬磨のJAM Project、ここにプログレッシブ・ロックのマインドを取り入れて、極端なアレンジをロックのダイナミズムに変換しているのです。

まるで変形するゲッターロボのように! アツい! 優勝!

セクションごとに主役が入れ替わる、ということは、つまりは一番かっこいいサビがずっと続くわけで、ずっとサビが続いたあと、最後にサビを超えるとんでもない超サビが炸裂するのがJAM Project。

それがもっとも発揮されているのがこの楽曲。優勝!

前へ 1/2

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連作品

関連記事