アニメライターが選ぶ、2021年春アニメ総括レビュー! 「ゴジラ S.P<シンギュラポイント>」「バクテン!!」など、5作品を紹介!!【アニメコラム】
「ゴジラもSFも詳しくない人間に理解できる作品なのだろうか」という不安は的中し、物語の謎は説明されても正直よくわからないのだが、それでもなお面白い。アニメにおいてわからないことなど些事(さじ)に過ぎないのだ。本作の魅力は「怪獣から地球を守る」という目標に対してブレない点にあり、登場人物たちが自分の才能や経験を生かして物事を解決していく光景に感動してしまう。
天才である2人の主人公は、常人には読み取れない超高速チャットでのやり取りによって真相に近付き、町工場の所長はみずから開発したロボット・ジェットジャガーを操って怪獣を撃退し、主人公の相棒は鍛え上げた肉体を駆使して窮地を救う。その姿勢は市井の人々にも浸透しており、老漁師は小型トラックに積んだ捕鯨砲でアンギラスを倒そうとするし、弓道部の女生徒はラドンから逃げるためのおとり役を買って出るだろう。非常時において正しい選択をすることの難しさを痛感させられている身からすれば、それができる個人と組織が存在する「ゴジラ S.P」の世界はとてもうらやましいものに映る。
スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました
ハードワークがたたって過労死した27歳のOLが、不老不死の魔女アズサに生まれ変わり、今度はのんびりとした日々を満喫する異世界ファンタジー。だが転生して300年が過ぎたある日、いつの間にか世界最強になっていた事実が判明し、その噂を聞きつけた来訪者たちに翻弄されることに……。
スローライフを題材というテーマゆえに、ゆったりとした時間の流れが印象的。最強の座を賭けて勝負を挑んできたドラゴン娘のライカや、アズサが倒したスライムの魂が精霊となったファルファとシャルシャなど、エピソードごとに仲間が少しずつ増えて、気付けばアズサ家は大所帯に。最終話では自宅で喫茶店をオープン。これまで出会ったキャラクターが大勢やってくるというフィナーレらしい展開から、日々の積み重ねが感じられる。なお一部の効果音は「エフェクト・ボイス」としてキャストの声で表現。そんなユニークな試みも落ち着いた世界観とマッチした一作だ。
高校入学を機に男子新体操部へ入部した主人公・双葉翔太郎が、個性的な仲間たちとともにインターハイ出場を目指すオリジナルアニメ。劇中で披露される新体操の華麗な演技はもちろん、部員たちとひとつ屋根の下で暮らす寮生活も見どころ。キャプテン・七ヶ浜政宗の実家が笹かまぼこ店であるなど食にまつわる描写が多く、部員総出で料理を作る場面もていねいに描かれた。同じ釜の飯を食うことで日に日に連帯感が生まれていく様子が伝わってくる。
第5話はライバル校のメンバーと、放課後の校舎でかくれんぼをして親交を深めるという異色のエピソード。全編にわたって暗い画面が続き、一風変わったホラーなテイストを味わえる。さらに第10話では練習したい気持ちをまぎらわせるために辞書を引くという不思議な展開に。ノイタミナ枠のファンであれば、その辞書の名前にニヤリとさせられるだろう。放送終了後には映画化が決定。新体操部の青春をスクリーンで楽しめる。
伝統工芸品・美濃焼の産地として知られる岐阜県多治見市を舞台に、父親と2人で引っ越してきた高校1年生の豊川姫乃が、陶芸の面白さに引き込まれていく青春ストーリー。陶器というとお皿や湯呑みなどを想像しがちだが、本作ではかわいらしいオブジェや巨大なモニュメントが登場。姫乃がコンテストで選んだ題材も意外なアイテムで、陶芸の奥深さを垣間見ることができる。
多治見の風景も美しく表現され、豊かな自然と水源に恵まれた場所だとよくわかる仕上がり。とりわけ陶芸に欠かせない水は、オープニングのタイトルバックなど、ところどころに描かれている。川面に光が当たって照り返す場面が記憶に残るのは、日本一暑い町と言われる多治見の強い日射しゆえだろうか。後半はキャスト陣が現地に訪れる実写バラエティコーナーで、まるで現地を訪れたような気分に。10月からは第2期を放送予定。
メディアミックス企画のショートアニメは、ともするとコンテンツが継続しているというアリバイのために作られているのではないかと勘ぐってしまうが、本作はシリーズに新たな風を吹き込もうという気概が頼もしい意欲作だ。初回の第一声が「D4DJ First Mix」には一度も出演しなかった立木文彦のナレーションというインパクトに早くも心が奪われ、なぜか象の雄叫びで物語が締められる第2話や、全編リモート会議という第5話も実験味があってワクワクしてしまう。
パロディ盛りだくさんの第20話は、わずかなセリフのために銀河万丈をキャスティングしたり、キャラクターたちをロゴで表わして動かしたりと自由奔放なエピソード。マスコットキャラのにょちおが車になって登場するという、2021年のヒット作を思わせる表現もショートアニメならではの機動力が生かされている。
(文・高橋克則)
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