「遊戯王」×「デュエマ」×「ヴァンガード」が同日に勝負商品をリリース──風雲急を告げるTCGガチンコ対決の模様を、秋葉原からレポート!

ホビー2021-04-17 21:52

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2021年4月17日、国産カードゲームを代表する3タイトルが、“勝負”をかける3商品を同時にリリースした。

「【VG-D-BT01】カードファイト!! ヴァンガード overDress ブースターパック第1弾 「五大世紀の黎明」」
「DMRP-17 デュエル・マスターズTCG 王来篇拡張パック第1弾 王星伝説超動」
「遊戯王OCG デュエルモンスターズ DAWN OF MAJESTY ドーン・オブ・マジェスティ」

がそれだ。各商品の詳細については後述するが、単体でも目玉クラスの商品が同時発売されるとあって、各カードショップの動向も大きな注目を集めた。秋葉原で当日早朝から開店した店舗には、開店待ちの時点で100名近くの行列ができていたという。駅前の「トレカの洞窟」では整理券を配布しても捌ききれないほどのお客さんが店舗につめかけていたほか、トレーディングカードゲームショップが集まるエリアでは、開店時間前から大行列ができていた。

 

今回は事前に混雑が予想されていたこともあり、各店舗ではフロアごとに開店時間をずらして整理券を配布するなどの密対策を工夫していた。個人的な感覚だが、駅から離れた店舗ほどオープン時間を早める勝負を仕掛け、結果として来場客の分散にもつながっていたように思う。それにしても、開店前から各TCGショップに行列ができるのは久しく見なかった光景で、TCG業界全体として見て明るい兆しと言えそうだ。

トレーディングカードゲームの店舗が集まるエリアでは、早朝から長蛇の列が!

 

ドラゴンスター秋葉原店では「ヴァンガード」フロアを先行開放。50人以上が列を作った。

 

トレカの洞窟タワー店で発見。「デュエル・マスターズTCG 王星伝説超動」の金色に輝く限定カードには20万円を超える値付けも!(※価格や在庫は変動します)

「遊戯王OCG」の「シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン」。レアリティの高い限定カードは入荷した側から売れてしまい、現物は確認できなかった。

 

「ヴァンガード overDress」にCLAMP先生が描き下ろしたカードは、複数のショップ店員が一押しに挙げていた。


歴史小説「三国志演義」には、諸葛亮孔明が天下統一を目指して劉備に進言した「天下三分の計」という計略が登場する。天下統一の地盤を固めるためには、一強の存在を許してはならず、小国が乱立する群雄割拠もよろしくない。強国同士がバランスを保つことが望ましいという考え方だ。

 

JR秋葉原に降り立つと、令和の世にも風雲の匂いがする。電気街口改札前のアトレでは、「アイドルマスター シャイニーカラーズ」がコラボ展開中だ。筆者が愛する2.5次元アイドルとその近縁ジャンルでは、永く「アイドルマスター」国と「ラブライブ!」国が君臨してきた。それらに対抗する第三極となるのは「Wake Up, Girls!」国か、あるいは「Tokyo 7th シスターズ」国か、とにらみ合いが続いていた頃、星の鼓動の導きによって現れた第三国が突如として版図をかっさらっていった。その国の名は「バンドリ!」国。乱世の梟雄・木谷高明が率いる新興国だ。

そして、2021年4月17日。秋葉原ではまたあらたな三国の戦いが幕を開けつつあった。戦場の名はトレーディング・カードゲーム、「ヴァンガード」「遊戯王」「デュエル・マスターズ」による三つ巴の販売合戦だ。

別タイトルの勝負商品×3のバッティングは歴史的特異点


栄枯盛衰の激しいトレーディング・カードゲームの世界だが、近年の国産TCGの世界での二強ははっきりしている。「遊戯王OCG」と「デュエル・マスターズ」の2タイトルだ。どちらも本格TCGの始祖「マジック・ザ・ギャザリング」の影響を強く受けており、コナミ社の「遊戯王OCG」は集英社・週刊少年ジャンプと関わりが強く、タカラトミー社の「デュエル・マスターズ」は小学館・コロコロコミックと関わりが深い。このあたりの歴史は多くの企業や人間関係が絡み合い、ねっちょりと重く、面白い。

だが今必要な知識は、トレーディングカードゲームの世界は先行者利益がとても大きく、20年の歴史を持つ「遊戯王OCG」と「デュエル・マスターズ」が絶対的な強者として君臨しているということだ。いわばTCG界の「アイマス」と「ラブライブ!」である。

そして前述の通り、今週末は二強に“プラスワン”を加えた三勢力より、注目ビックタイトルがリリースされた。

ひとつめは、

「DMRP-17 デュエル・マスターズTCG 王来篇拡張パック第1弾 王星伝説超動」

「デュエル・マスターズ」20周年にして20番目のシリーズ「王来篇」の基本となる拡張パックだ。最近のデュエマは時間を行き来するタイムトラベルがモチーフに入っており、「王星伝説超動」では往年の人気カードの再録や、過去の人気クリーチャーの再録などが行われている。過去のファンにも嬉しい、また手にとってみたくなるコンセプトだ。だが「デュエル・マスターズ」は2021年3月16日のルール改訂で大きくルールが変化。デュエル環境の変化は必至であり、懐古と革新の間にあるタイトルと言えるだろう。

【店舗からの応援コメント】
●やはり3タイトルの中でも「デュエル・マスターズ」のユーザーさんの反応はとても熱いです。(デュエル・マスターズ販売担当)
●人気なのですが、パックの入荷量に制限がかかっているので、店頭での展開に限界があります。人気なのも痛し痒しですね(応援に駆り出されたマネージャークラスのTさん)


つづいては、「遊戯王OCG デュエルモンスターズ DAWN OF MAJESTY ドーン・オブ・マジェスティ」

全てのデュエリスト必携のカードを収録した基本パックの2021年度第1弾だ。「遊戯王」といえば「ブルーアイズホワイトドラゴン」というイメージをお持ちの人も多いと思うが、やはり本作にとって最強種ドラゴンは特別な存在だ。本パックではアニメ「遊戯王5D's」で主人公・不動遊星が操った「スターダスト・ドラゴン」が新たな力を得て進化する。「光来せよ! シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン!!」のフレーズにそそられる人には必携のパックと言えるだろう。

【店舗からの応援コメント】
●当店では一階で「遊戯王」を展開していることもあり、やはり3タイトルの中では「遊戯王」に勢いを感じます。通常の週末の倍から三倍の来客がある感じです(遊戯王販売担当)
●アニメで主人公が使っていたドラゴンはよく(シングルカードの販売が)出ますね。(別店舗の事務所にいた人)


最後にもうひとつの注目タイトルが「【VG-D-BT01】カードファイト!! ヴァンガード overDress ブースターパック第1弾 「五大世紀の黎明」」だ。

4月より放送中のTVアニメ「カードファイト!! ヴァンガード overDress」の世界観を元にした新シリーズ「カードファイト!! ヴァンガード overDress」のブースター第一弾が待望の登場を果たした。同作では、2021年3月25日に「近導ユウユ -天輪聖竜-」をはじめとするスタートデッキ3種、2021年4月3日には「大倉メグミ -樹角獣王-」と「瀬戸トマリ -極光戦姫-」をリリース、合わせて5キャラクターが操るデッキをイメージしたスタートデッキが発売されている。今回のブースターパックは、これらのスタートデッキを超強化できるという非常に明瞭なコンセプトだ。

【店舗からの応援コメント】
●「ヴァンガード」には非常に勢いを感じます。CLAMP先生描き下ろしのカードは絵柄もいいので人気ですね(ドラゴンスターの店長さん)
●新アニメ、新タイトルということで、既存のタイトルとは違う新しい層の方が買ってくださっている印象です(店舗店舗応援に駆り出されたマネージャークラスTさん)


各店舗によって人気タイトルは違い、早い時間帯から特定タイトルの販売を始める店舗には、そのタイトルのファンが集まるという傾向が見てとれた。やはり「遊戯王」の人気はすごいが、「ヴァンガード」を一番人気にあげる店もあった。

TCGユーザーは非常に保守的であると同時に、新しくて面白いものも常に求める矛盾した性質を持っているように思う。「遊戯王」と「デュエル・マスターズ」も、カードの復刻など古いユーザーの心をくすぐる施策を織りこんできている。そんな中、新しいイメージの新作アニメを引っさげて登場した「カードファイト!! ヴァンガード overDress」は果たして台風の目になりうるだろうか。

 

3タイトルの動きを見ると、4月という新しいシーズン、そして店舗大会の開催のめどがようやくたってきたこともあり、商品展開にも並々ならぬ気合が入っているように感じられた。この週末の秋葉原を制するタイトルが、2021年のトレーディングカードゲーム界をリードすることも、ひょっとしたらあるのかもしれない。めったにないお祭りだし、応援したい作品に一票を投じる気持ちで、商品を手にとってみるのもよいのではないだろうか。

店舗で対面して遊ぶトレーディングカードにも、商品を扱う店舗にとっても辛い逆風の時代。だからこそ切磋琢磨しながら、トレーディングカードゲーム業界が一緒にヴァンガって盛り上がっていけばと願ってやまない。

(取材・文・撮影/中里キリ)

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