アニメライターが選ぶ、2020年春アニメ総括レビュー!「邪神ちゃんドロップキック'」「イエスタデイをうたって」など、5作品を紹介!!【アニメコラム】
「COMICメテオ」にて連載中の人気コミックのテレビアニメ第2期。人間界に召喚された悪魔・邪神ちゃんが魔界に戻るため、自分を召喚した女子大生・花園ゆりねを亡き者にしようとするブラックコメディだ。Blu-ray/DVDの累計売上2000枚突破というミッションをクリアして続編制作が決まったという異色の経緯があり、それに見合った破天荒な展開が魅力的。
第11話ではほぼ既存の素材の使い回しだけでエピソードを作ってしまうという荒技に出たが、それでも面白さは衰え知らず。第1期の挿入歌「神保町哀歌」を今度はフルコーラスで使用されており、邪神ちゃん役の鈴木愛奈が持つ民謡初段という資格のパワーを体感できる。スペシャルエピソードの千歳編はふるさと納税を活用して作られた特別編。千歳市と納税者に感謝の念を捧げながら視聴したい。
自分がマンガ家であることを知られたくない主人公が、どんな仕事をしているのか娘にひた隠しにする久米田康治のコメディをアニメ化。「かくしごと」が“隠しごと”と“描く仕事”の掛け詞(かけことば)になっていることに加えて、視聴者に向けても隠している事実があるところがポイント。ときおり挿入される未来の出来事や、flumpool(フランプール)の歌声が切ないOPアニメが、まだ見ぬストーリーに引き込んでいく。
久米田康治原作の「さよなら絶望先生」の面影を残したキャラクターたちが登場しており、「絶望先生」の主題歌を手がけた大槻ケンヂは予期せぬ役柄で出演。さらにコラボCDまで制作している。EDテーマにはCMソングとしてもおなじみの大滝詠一「君は天然色」を起用し、音楽面も楽しめる一作。
主人公とヒロインの友だち以上恋人未満の関係がなかなか進展しないのは、彼らの間に終電が存在しないからだろう。お互いに歩いて通える範囲内で暮らしているため、いくら時間が過ぎようと相手の家に泊まる理由にはならず、いつでも自宅に帰れてしまうのだ。一緒に部屋に入ることが一線を越えることと同じ意味を持つのは、ヒロインが主人公を自室に招くため、鍵穴に鍵を差し込もうとするセクシャルなカットによって示唆されている。
そもそも主人公が働いていたコンビニの目の前にはローカル線の踏切があったし、もうひとりのヒロインと出会ったきっかけはバスだったはずなのだが、彼が公共交通機関を利用する姿は決して画面に映ることはない。まるで電車やバスに乗ることによって、関係が変わってしまうのを恐れているかのようだ。そんな主人公が最終話で本当の気持ちに気付いたとき、初めて電車に乗るシーンが描かれて、バスに乗り継いで彼女のもとへ向かう。終電がないため成立した関係性を打ち破るのにふさわしいフィナーレである。
ロボットアニメを多く手がける制作会社・サンライズが、ラジオ業界が舞台である本作をアニメ化した意義は、識者たちによってすでに語られている。なるほど、本作をロボットものと見なせば、ラジオブースという閉鎖された空間はコックピットのようだし、マシンガントークを繰り出すパーソナリティは戦闘中であっても饒舌なパイロットを思わせる。1話で主人公がコックの衣装のままラジオに出演してしまうのも、パイロットスーツを着ずにロボットを操縦するという王道の展開に重なる。それなら本番中にインサートされるラジオのリスナーは、守るべき市井の人々といったところだろうか。
最終回で本番中に不測の事態に陥った主人公は、リスナーから届くメールを次々に読み上げていく。リスナーの力を借りてトークが活気づいていく流れは、ロボットものさながらの熱さが感じられる名場面だ。本作のラストでは、ある歌謡曲が挿入歌として用いられた。ラジオパーソナリティの永六輔が手がけた詞を聞いていると、サンライズ初のオリジナルタイトルのEDテーマも星を歌っていたことに気付かされる。
イギリスの絵本作家 ジュディス・カーのベストセラー絵本を原作とした海外アニメーション。2019年のクリスマスイブにイギリスのチャンネル4で放送され、日本では2020年の3月にNHK Eテレにてオンエア。それ以降たびたび再放送されている。
突然自宅にやってきたとらが重量感たっぷりに描かれており、あらゆるものを食べ尽くす様子はふてぶてしくも愛らしい。次第に黒のストライプが動くのを見ているだけで楽しくなってうる。鮮やかなカラーリングのトラに対して、室内は原作同様に白一色で表現された。とらが食い散らかすせいで白い背景がどんどん汚れていく場面は、爽快感と背徳感がないまぜになった気持ちを味わえる。日本語吹替はとら役を三宅健太、とらを迎える少女のソフィー役を釘宮理恵が担当。どこか憎めないとらと、かわいらしいソフィーの芝居もほのぼのとした雰囲気を醸しだしている。
(文・高橋克則)
(C) ユキヲ・COMICメテオ/邪神ちゃんドロップキック製作委員会
(C) 久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会
(C) 冬目景/集英社・イエスタデイをうたって製作委員会
(C) 沙村広明・講談社/藻岩山ラジオ編成局
※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。
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