アニメライターが選ぶ、2019年冬アニメ総括レビュー!「約束のネバーランド」「風が強く吹いている」など、5作品を紹介!!【アニメコラム】
孤児院グレイス=フィールドハウスに隠された真実を知ったエマとノーマンが、仲間たちと集団脱走を計画するサスペンスアニメ。神戸守監督は前作「すべてがFになる THE PERFECT INSIDER」で密室ミステリを扱ったが、「約束のネバーランド」では子供を閉じ込める孤児院が不気味な場所として描かれており、舞台がハウスの内部になるほど緊張感が増していく。
もっとも印象的なのは色使いだ。ハウスの中に光が届くことはまれで、登場人物の肌はランプの炎によってオレンジに、星明かりによってブルーに色を変える。ノーマンがある決意をエマに伝えたあとの回想では、思い出だけが通常のカラーリングで表現され、そのコントラストが鮮やかなシーンとなった。本作が色にまつわるストーリーのように見えるのは、作中に登場する花が人間の色を奪っているように表現されていたことと無縁ではない。エマが夜明けの光を全身に浴びて、彼女自身の色を取り戻すラストシーンは「約束のネバーランド」にふさわしい幕切れである。
寛政大学の学生寮・竹青荘で暮らす10人の学生たちが、箱根駅伝で頂点を目指す青春小説をTVアニメ化。全国トップ級の実力者だが過去のトラウマに悩んでいるカケル(蔵原走)、漫画オタクで運動神経がイマイチな王子(柏崎茜)、そして計画の首謀者であるハイジ(清瀬灰二)など、性格も実力もまったく異なるメンバーの群像劇を全23話で描き上げた。実際に箱根駅伝を中継している日本テレビで放送されたため、実況にはアナウンサーを起用。中継テロップなどもリアルに作り込まれている。
スポーツアニメは数多いが長距離走を描いたタイトルは珍しい。本作では公道を走る選手だけでなく、彼らが走る沿道の街並みや応援する人々もていねいに描かれており、駅伝はもう2度と見ることのできない景色を通り過ぎる競技であることに気付かされる。エピローグで描かれたハイジたちのその後が忘れられないのも、本作が駅伝をテーマにした作品だからだろう。
ONEが手がける青春サイキックマンガのTVアニメ第2期。第1期に比べて市街戦が増加しており、周囲の建築物を破壊しながら展開する超能力バトルに引き込まれる。とくに相手の動きを読めるテレポーター・島崎との戦いは圧巻だ。島崎を捕えたカメラの背景が次々と変わることで瞬間移動を表現したアイデアは最高にクール。後半はアクション回の連続で手に汗握ること間違いなし!
最終回後には完全新作OVAの制作も決定。スペシャルCMでは主人公・モブをはじめ、お馴染みのメンバーが温泉に浸かっている様子が映し出されている。七夕に開催されるイベントで公開予定の最新作も見逃せない。
世界一有名なペンギン「ピングー」のアニメが3DCGになって復活。舞台を南極から街に移して、コック、消防士、お花屋さんなど、さまざまなお仕事を体験する姿を描く。クレイアニメをCGで再現しており、本当に粘土をこねて作ったかのような温かみのある映像が特徴的。光沢を抑えたキャラクターモデルはもちろん、水しぶきのエフェクトまで粘土っぽく、オリジナルシリーズのファンも違和感なく楽しめる。
ピングーたちはいわゆる“ピングー語”で会話をしており、全キャラクターをたった2人のキャストが担当。何をしゃべっているのかはわからないが、何だかセリフをマネしたくなる中毒性がある。ピングーが毎回見せるビックリした顔や、ベロを出して妹のピンガをあおる姿もうざかわいく、あっという間に時間が過ぎてしまう。どのエピソードも楽しいが、8ミリカメラで映画撮影に挑む「映画を作ろう!」がとくにおすすめ。
愛と死、そしてロボット。アニメに必要なすべてが詰まった素晴らしいタイトルだ。作画用紙を固定するタップ穴がハート、ロボット、ドクロのアイコンに変わるイントロから始まる本作は、過激な表現にあふれた18の短編で構成されている。四肢が吹き飛ぶどころか、性器までそのまま描かれているのは、刑法175条が存在する国の人間にとって新鮮だ。
映像表現もフォトリアルやカートゥーン調、さらには実写が混じっているなどバラエティ豊か。赤軍がモンスターと戦ったり、宇宙空間にひとりで投げ出されたり、ヨーグルトが世界を征服したりと、1話ごとにまったく異なるストーリーが繰り広げられており、何でもありな猥雑さが気持ちいい。企画自体はオムニバスアニメ「ロボットカーニバル」を彷彿とさせるが、本編を見ていると「Fallout」や「Borderlands」など、ゲームタイトルを不思議と思い出すのも、そのカオスさゆえだろうか。
(文・高橋克則)
(C) 白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会
(C) 寛政大学陸上競技部後援会
(C) ONE・小学館/「モブサイコ100 Ⅱ」製作委員会
(C) 2018 The Pygos Group (C) MATTEL, NHK, NEP, PP
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