【ざっくり!平成アニメ史】第4回 平成4年(1992年)――「セーラームーン」に沸いたTVアニメ! 「天地無用!」で萌えたOVA! 新時代ヒロインが活躍するアニメが続々出現!!

アニメ2019-01-30 14:09

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さまざまなアニメが生まれては消えていった、激動の平成。31年の歴史を、アニメタイトルとともに振り返る連載第4回。今回もスタート!

「セーラームーン」と「しんちゃん」が大ブームに

平成4年(1992年)は、「美少女戦士セーラームーン」と「クレヨンしんちゃん」という2大国民的アニメがテレビ放映スタートした重要な年である。

「美少女戦士セーラームーン」は、武内直子のマンガ連載と同時進行で展開した作品で、史上初の「女子向け」の戦う変身ヒロインものである。それまでも戦う変身ヒロインが登場するアニメやマンガは数多く存在していたが、いずれも基本的に男性向けの作品であり、女子に向けて、かっこよく戦うヒロインを描いた本作は画期的であった。本作では戦隊ヒーローもののようなチームバトル要素に加え、麻布十番を舞台にしたおしゃれな設定、転生、ラブロマンスといった乙女な要素が取り入れられたのも女子人気を博した理由だろう。

監督を手がけたのは、後に「おジャ魔女どれみ」「ARIA」「HUGっと!プリキュア(共同監督)」などを手がける佐藤順一。また、幾原邦彦、榎戸洋司、五十嵐卓哉といった、現在も第一線で活躍する当時の若手スタッフも才能を発揮し、シリーズを盛り上げた。

さまざまなフックを持つ本作は、女性はもちろん男性からも絶大な人気を集めたばかりか、海外にもその人気は飛び火。本作を見て、日本に憧れを抱いた海外のアニメファンも少なくないという。

その後、1997年まで休むことなく続編が制作されたほか、映画化、ミュージカル化などのメディアミックス展開が行われた。また、主演声優の三石琴乃、久川綾、富沢美智恵、篠原恵美、深見梨加は、声優ユニット「Peach Hips」を結成。劇場版やゲーム版の主題歌を担当したほか、ライブが行われるほどの人気を博するなど、社会現象とも呼べる人気を獲得。2000年代に入っても実写ドラマ化、原作テイストを重視したリメイクなど、その人気は今もなお衰えを知らない。

本作以降、女子向けの戦う変身ヒロインものというジャンルが確立。現在も「プリキュア」シリーズに、その魂は脈々と受け継がれている。

 

もうひとつの大ヒット作「クレヨンしんちゃん」は、マンガ雑誌「週刊アクション」連載、臼井儀人原作の大人向けギャグ漫画だ。当初、アニメ版はそれほど期待されていたわけではなかったそうだが、回を追うごとに視聴率が上昇。4月の放送初回の視聴率はわずか4.0%だったが、翌年1月には20%を超える大人気番組へと成長した。

と同時に、大人にとって痛いところをつくしんちゃんの言動や、お下品なギャグに対する批判も噴出。日本PTA協議会主催の「小中学生と親のテレビ番組に関する意識調査」の「子どもに見せたくない番組」アンケートでは上位の常連となる。

しかし、従来のファミリー向けアニメとは一線を画す「今風のファミリー」を描く本作の人気が揺らぐことはなかった。現在も数少ないゴールデンタイムのアニメとして、毎週お茶の間を盛り上げている。

 

両作品に共通しているのは、旧来の価値観を破壊する、まったく新たな作品だったという点だろう。テレビアニメシーンに大きな風穴を開けたこの2本は平成初期アニメ最大の発明と言っても過言ではない。

 

大豊作の魔法少女アニメ! そして深夜アニメ時代を予感させる「スーパーヅガン」

そのほか、この年のテレビアニメの特徴として、魔法少女アニメの盛り上がりがあげられる。

SUEZENのスタイリッシュなキャラが人気を集めた「ヤダモン」、「魔法のリボン」で変身する主人公の恋と友情を描いた「姫ちゃんのリボン」、「ミンキーモモ」「スイートミント」に続く葦プロダクション(現・プロダクションリード)の魔法少女アニメ「花の魔法使いマリーベル」といった作品が放送されたほか、サンライズ初の女子向けアニメ「ママは小学4年生」もまた、魔法少女アニメの亜種と言えるだろう。これらの魔法少女アニメが話題を呼んだ。まさに女性躍進の時代といったところか。面白いのが、いずれも夢と魔法の物語だけでなく、現実的でシビアなドラマもきっちり描いていたことだ。その骨太なドラマゆえ、男女問わず多くのアニメファンの支持を集めた。

 

さて男子向けアニメのほうはというと、まずは「幽☆遊☆白書」を忘れてはいけないだろう。当時、「週刊少年ジャンプ」に連載されていたマンガを原作とする本作は、当初こそ不慮の事故で死んでしまった主人公・浦飯幽助の人情ものといった趣だったが、すぐさまバトルアクションものへと変化。美形キャラクターに女子人気が集中し、一躍大人気マンガへと成長した。その人気を受けてのアニメ化ということで、こちらも大ヒット。声優が歌うキャラクターソングCDも多数発売された。

また、「宇宙の騎士テッカマンブレード」「超電動ロボ 鉄人28号FX」「元気爆発ガンバルガー」「伝説の勇者ダ・ガーン」といったSFアニメ・ロボットアニメも一定の人気を獲得。なかでも「テッカマンブレード」は、作画面では少々キツい面もあったが、「ど」が付くほどシリアスなストーリーと魅力的なキャラクターに人気が集まり、続編OVAも制作された。

そのほか人気の格闘ゲームを原作とした単発アニメ「バトルファイターズ餓狼伝説」も年末に放送された。キャラクターデザイン・作画監督は大張正己が担当。当時、すでにメカ作画で人気を集めていた大張だが、本作ではキャラクターデザインを担当。男性キャラはスタイリッシュに、女性キャラはセクシーに描かれたほか、ケレン味あふれるアクション描写が大きな話題を呼んだ。

 

そして30分枠で、初の深夜アニメ「スーパーヅガン」が放送されたのもこの年だ。同名の麻雀マンガを原作とする本作は、深夜1時過ぎからの放送にもかかわらず平均視聴率2.7%という好成績を残し、深夜アニメの可能性を示した。

 

ビデオユーザーの増加で成熟したOVA市場

テレビアニメに新たな潮流が生まれつつある中、OVAも大きな盛り上がりを見せていた。

かねてよりアニメファン向けの作品が数多く作られていたOVAだが、「ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日」がアニメファンに与えた衝撃は計り知れなかった。当時、「ミスター味っ子」監督などで頭角を現していた今川泰宏監督による本作は、重厚な作画とアクション、キレッキレの演出、フルオーケストラによるサウンド、横山光輝キャラの夢の共演など、どこを取っても魅力的な超大作。完結まで実に7年という長期間を要することとなったが、今もなおロボットアニメの金字塔として語られる一作である。

 

もうひとつ押さえておきたいのが、「天地無用!魎皇鬼」だ。本作はパイオニアLDCのOVAレーベル「PACシリーズ」の第1期作品としてスタート。主人公・柾木天地のもとに、魎呼をはじめとする個性的なヒロインが続々と集まり、いつの間にかハーレム的な生活を送ってしまうというもの。今では当たり前の作風だが、本作はその先駆けといえる。しかし、実はかなり複雑に作り込まれた裏設定を持つSF作品としての側面もあり、さまざまな角度から楽しめる懐の深い作品であった。本作は「機動警察パトレイバー」以来の大ヒットOVAシリーズとなり、TVアニメ化、劇場用アニメ化、ラジオドラマ化などさまざまなメディアに展開。

さらに舞台が岡山県ということで、熱心なファンの中には「聖地巡礼」をする者もいたという。そういう意味でも、エポックメイキングな作品だったと言える。

また、本作以降パイオニアLDCは数多くのOVAをコンスタントにリリース。90年代中盤OVAシーンの立役者となっていく。

そして、忘れちゃいけないのが「絶愛-1989-」である。これはいわゆる「BL(ボーイズラブ)」を扱った尾崎南の少女マンガを原作とする作品で、人気男性歌手とサッカー少年との禁断の恋を描いている。それまでガチンコのBLは専門誌でのみ展開していた時代に、初めて「マーガレット」という一般向け少女マンガ雑誌で連載を開始し、業界内に衝撃を与えた作品だ。もちろんこれが初のBLアニメでもある。

人気歌手・南条晃司を演じる速水奨のセクシーすぎる演技は、男性が聴いてもドキドキしたものだ。

 

そのほか、「超時空要塞マクロス」の続編「超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN-」も発売。新世代のスタッフによる続編OVAの売り上げは好調で、翌年には同じく超時空シリーズの続編OVA「超時空世紀オーガス02」も制作された。

このように、1992年はOVAが非常に元気な1年だった。その背景には、ビデオレンタル店の増加があるだろう。日本映像ソフト協会の調査によると、1990年12月に日本国内のビデオレンタル店の出店数はピークに到達。一説には1989年初頭のテレビ番組自粛ムードの中、レンタルビデオで暇をつぶす人が急増したことが、ビデオレンタル店の一般化に貢献したとも言われているが、ともあれ、この時期にはビデオレンタルでOVAを楽しむアニメファンも少なくはなくなっており、市場としては成熟期に突入していた。

 

劇場用アニメでは、宮崎駿監督の「紅の豚」、ディズニーアニメ「アラジン」、「ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌」といったファミリー向け作品がヒットを飛ばしたほか、前年に続き「サイレントメビウス2」「アルスラーン戦記II」「風の大陸」といった角川アニメも話題を呼んだ。

変わり種としては、この年に制作された、丸尾末広のマンガ「少女椿」を原作とするアニメ「地下幻燈劇画 少女椿」がある。絵津久秋(原田浩)が監督、演出、台本、作画を手がけ、J・A・シーザーが音楽を手がけた本作はゲリラ的にさまざまな場所で上映された後、警察の要請で2012年まで国内上映が禁じられるという数奇な運命をたどっており、なかば伝説的な存在となっている作品だ。

とはいえ、単なるカルトアニメというわけではなく、実験演劇、紙吹雪、発煙筒、スモークなどを使った仕掛けによる特殊な演出が施された芸術性の高い作品でもあった。こういう作品もあった、という意味で記憶にとどめておきたいタイトルだ。

 

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