アニメライターが選ぶ、2018年春アニメ総括レビュー! 「ヒナまつり」「こみっくがーるず」など、5作品を紹介!!【アニメコラム】

アニメ2018-07-14 18:00

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ついにフィナーレを迎えた2018年春アニメを一斉に総括! ヤクザ×超能力少女の人気コメディ「ヒナまつり」、スマホ向けRPG原作の「ラストピリオド -終わりなき螺旋の物語-」、女子高生マンガ家の寮生活を描いた「こみっくがーるず」、「comic POOL」連載の「ヲタクに恋は難しい」、コックピットにこだわったSFロボットアニメ「宇宙戦艦ティラミス」の5本をラインアップしました。


ヒナまつり

インテリヤクザの新田義史と突然現れたサイキック少女・ヒナの奇妙な同居生活を描いたギャグマンガが原作。新田はヤクザと言えど実体は単なるお人好しで、次第にヒナと親子のような関係を築いていく。
冷静に考えるとストーリーはかなりシビア。ヒナを処分するためにやってきた少女・アンズがホームレスになったり、中学生の瞳がバーテンダーとして児童労働を余儀なくされたりと過酷な展開を見せる。そんな設定でも気負わずに楽しめるのは、痛みを感じたときのセリフが「あいったー」という気の抜けた感嘆詞で統一されているからだろうか。キャラクターの表情も印象深く、アンズに都会を生き抜く知恵を授ける先輩ホームレスや、いつも頭にネクタイを巻いているバーの常連客といったオッサンまで、どこか憎めないタッチで描かれている。とりわけ第2話「超能力勝負はこうやんだよ!」で見せるヒナとアンズの顔芸の応酬は必見の出来映え。



ラストピリオド -終わりなき螺旋の物語-

モバイルゲーム会社・Happy Elementsのスマートフォン向けRPGをTVアニメ化。この世に絶望して死んだ者が「スパイラル」というモンスターになって蘇る世界を舞台に、スパイラルを倒して負の循環を止める新米ピリオド・ハルの活躍を描く。
メタフィクションやパロディを詰め込んだアニメは星の数ほど存在するが、本作はかなり攻めたストーリーが見どころ。物語の根幹にはスマホゲームにおなじみのガチャが関わっており、高額課金者をドキュメントバラエティ風に取り上げたエピソードや、ガチャの確率操作を思わせる描写まで盛り込まれた。さらに第3話「その日暮らし」では原作とコラボしていた「ひぐらしのなく頃に」のキャラクターがそのまま登場。スマホゲーム原作アニメの新たな道を切り拓いた。Happy Elementsと竜騎士07の懐の深さが胸に染みる。



こみっくがーるず

女子高生マンガ家・萌田薫子がマンガ家専用の寮に引っ越して、個性的な仲間たちと日々を過ごす「まんがタイムきららMAX」の人気4コマ。薫子は皆から「かおす」というペンネームで呼ばれてはいるものの肝心のマンガはパッとせず、いつしか没ネームの山が……。そんな苦難にもめげず、ラブコメ、お色気、ファンタジーと、同居人の得意ジャンルをせっせと吸収するかおす先生の奮闘ぶりに心揺さぶられる。
物語の舞台となる「文芳社女子まんが家寮」は木造2階建ての日本家屋。床にできた傷まで表現された寮は生活感にあふれており、以前暮らしていた寮生の熱意まで伝わってくる。オリジナルを交えて描かれる後半のストーリーは、彼女たちが暮らした寮も主役なのだと感じさせてくれる。



ヲタクに恋は難しい

腐女子であることがバレて彼氏と別れる羽目になった主人公・桃瀬成海が、幼なじみの二藤宏嵩と転職先で再会して付き合い始めるラブコメディ。タイトルの「ヲタク」が「おたく」でも「オタク」でもないことについて、我々は大塚英志や岡田斗司夫の名前をあげながら、ついつい語りたくなってしまうが、「ヲタ恋」はそういった呪いから解き放たれた作品である。
なにせOPアニメで映し出される場所が、かつて萌える都市と呼ばれた秋葉原ではなく、成海の職場がある新宿なのだ。彼女のコミュ力の高さは、1日の平均乗降者数が世界一を誇り、複数路線の乗り入れによってどこへでも行ける新宿という都市がふさわしい。そして成海は我々にはできなかった就職や恋愛を平然とやってのける。そこにシビれる! あこがれるゥ!
それは秋葉原の名を冠したサイトを運営しつつも、実は恵比寿というオシャレシティで働いているアキバ総研の編集部員たちも例外ではない。社内では「ヲタ恋」に負けず劣らずのオフィスラブが繰り広げられていることは明らかだ。そんな「ヲタク」たちへの憎しみと憧れがない交ぜになった一作。



宇宙戦艦ティラミス

宇宙戦艦ティラミスの搭乗員スバル・イチノセは、全人類の希望を一身に背負うエースパイロットとして戦いの日々に身を投じていた。だが艦内の集団生活になじめない彼は、専用機デュランダルのコックピットを自身の聖域と定め、そこでの暮らしを何よりもかけがえのないものとして大切にしているのだった……。
押井守が自身の演出術を解き明かした名著「METHODS ~押井守『パトレイバー2』演出ノート」において、最初に語られていたのがコックピットであったように、その閉鎖空間はメカものにとって魅力的な題材である。本作では串カツを食べたり、お守りや消臭剤を置いたり、クリスマスの飾り付けをすることで、コックピットの新たな可能性を示していった。2018年10月には第2期の放送がスタート。今度は地球を舞台にコックピットがどのように描かれるのだろうか。




(文/高橋克則)

(C) 2018 大武政夫・KADOKAWA刊/ヒナまつり製作委員会
(C) Happy Elements K.K/LAST PERIOD ANIMATION PROJECT
(C) はんざわかおり・芳文社/こみっくがーるず製作委員会
(C) ふじた・一迅社/「ヲタ恋」製作委員会
(C) 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会

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