アニメーター・本村晃一 ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人” 第22回)

アニメ2018-03-10 08:00

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

アニメは1日にして成らず。アニメは、クリエイターたちの卓抜した技量と弛まぬ努力の結晶なのだ。「アニメ・ゲームの“中の人”」第22回は、Webメディアでは初のインタビューとなる、アニメーターの本村晃一さん。本村さんと言えば、「天元突破グレンラガン」、「とらドラ!」、「パンティ&ストッキングwithガーターベルト」、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」、「僕は友達が少ない」、「夏色キセキ」、「とある科学の超電磁砲S」、「鬼灯の冷徹」、「終わりのセラフ」、「ローリング☆ガールズ」、「ブレンド・S」といった名作アニメの作画監督として広く知られている。また、「よつのは」ではキャラクターデザイン、「はなまる幼稚園」では総作画監督を務め、ファンの間で話題となった。当記事では影響を受けた作品、仕事のこだわり、経歴、アニメーターに必要な資質能力、今後の挑戦などについて、本村さんにじっくりと語っていただいた。

 

自分の画が動く感動が忘れられない

 

─このたびは「アキバ総研」インタビューに応じてくださり、まことにありがとうございます。まずは、本村さんがアニメーターとしてやりがいを感じるのは、どういった時でしょうか?


本村晃一(以下、本村)
 駆け出しのころに自分の画が動いているのを見て感動しまして、その時の気持ちが、今も忘れられないんです。


─影響を受けた作品は?


本村
 ちゃんとアニメを見始めたのは大学生になってからなんですが、「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」(1996~98)の中嶋敦子さんの作監回(第31話)が、すごくきれいな作画だったんです。チャンバラのシーンとか。その辺りから、アニメをきちんと録画して観るようになりました。


あとは、大学の漫画研究会で先輩に観せてもらった「天地無用! 魎皇鬼」(1992~94)です。最初のOVAシリーズなんですが、その時は自分がアニメーターになるとは考えてなくて、純粋なファンとしてハマっていました。


ゲームだと、ちょうど格闘ブームだったので、「ストリートファイター」なんかをよくやっていました。筋肉の描き方とかは、「ストリートファイター」の影響が大きいですね。


─大学時代は漫研だったのですね。


本村
 大学は美術系で、授業で油絵を描いていたんです。授業で油絵を描いているから美術部は避けたいなと思い、軽い気持ちで漫研に入ったら、「究極超人あ~る」のような濃いキャラの人たちがいっぱいいて(笑)。初めてコミケに連れていかれたりして、オタクの道に入っていきました。


それまでの自分の絵はイラストでも結構写実的な、リアル系の絵だったんですけど、漫研の先輩たちの影響で、漫画チックな絵も描くようになりました。それまで絵描き仲間もいなかったので、人から影響されるのも、初めての経験でした。

かわいい系や日常芝居が得意


 ─お得意な作画やジャンルは?


本村
 絵柄的にはかわいい系が描いていて楽しいです。ジャンルはどちらかというと、日常芝居が得意です。「GAD GUARD」(2003)でお世話になった錦織博監督がある日、別作品の日常芝居のカットを、「日常芝居なら本村だろう」と回してきてくれたのは、うれしかったですね。


─かわいい系と言えば、「夏色キセキ」(2012)、「ローリング☆ガールズ」(2015)、「ブレンド・S」(2017)などで作画監督をされています。こういった作品は登場する女性キャラも多く、描き分けが大変なのでは?


本村
 キャラを描き分けたうえで、それぞれの性格を考えてお芝居も考えないといけないので、頭がパンクします(笑)。アニメーターの自分が役者だとすると、1人何役もやらないといけないわけです。楽しいですけど、大変ですよ。一時期は舞台演劇の勉強もしていました。


─「NEW GAME!」(2016)では、オープニングに原画で参加されています。


本村
 動画工房さんは作品もスタッフも好きなので、お呼びがかかったら、「すぐ行きます!」といった感じです(笑)。


─かわいい系以外の作品の場合、どういったカットを担当されるのでしょうか? たとえば、「鬼灯の冷徹」(2014)はいかがでしょうか?


本村
 「鬼灯」4話のBパート、ウサギの芥子のパラパラ漫画なんかは、自分が作監をしました。


─「空の境界」(2007~10)ではどういった原画を?


本村
 第6章だと、着物を着て日本刀を振り回すカットとかですね。着物を着ているから、振袖がゆれて大変だった記憶があります。実際、自分で模造刀を買って、振り回しながらやっていました。小さいころ剣道部にいたので、剣を使ったアクションは好きですね。


─お仕事で必ず守るルールみたいなものはありますか?


本村
 原画でも作監でもそうなんですけど、前後のつながりは絶対大事にします。業界用語で「合わせ」と言うんですが、前のカットにあったものが次のカットになかったり、前のカットのキャラのお芝居が、次のカットだとつながってなかったり、そういう視聴者が観ていて不自然に思うところは、なくすようにしています。富野由悠季監督の「映像の原則」でも指摘されているので、アニメーターはこの本を読むべきだと思います。

 

本村さんの蔵書の一部

前へ 1/3

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連作品

関連記事