【アニメコラム】アニメライターが選ぶ、2017年夏アニメ総括レビュー!「メイドインアビス」「ヘボット!」など、5作品を紹介!!

アニメ2017-10-14 21:00

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2017年9月に完結したTVアニメを総括レビュー。冒険ファンタジー「メイドインアビス」、日曜朝のキッズアニメ「ヘボット!」、マンガ家の広江礼威が原作を務めたオリジナルアニメ「Re:CREATORS(レクリエイターズ)」、人気小説原作の「異世界はスマートフォンとともに。」、時代劇ショートアニメ「信長の忍び」の5作品をラインアップ!


メイドインアビス

竹書房「コミックガンマ」連載の人気コミックをアニメ化。巨大な大穴・アビスの底を目指す少女・リコと、ロボットの少年・レグの冒険ファンタジーだ。かわいらしいキャラクターデザインに心を奪われるが、2人の冒険は常に危険と隣り合わせ。怪我や流血がリアルに表現されており、思わず目を背けたくなるような描写もしばしば。深く潜るにしたがっていろいろなものを失っていく容赦のないストーリーが繰り広げられる。
アビスに登場するモンスターたちも本当に存在しているかのような存在感で、臭いが伝わってくるほどの迫力。大穴の上層部は自然にあふれ緑豊かに描かれているが深部になると暗くなり、見るものの不安をあおる。そんなハードな世界観ながら、いつも前向きなリコや、頑張り屋のレグを見ていると、冒険から目が離せなくなっていく。いがらしみきお、福本伸行、植田まさしなど、竹書房にまつわるマンガ家たちのエンドカードも必見。意外なキャラクターたちと夢の競演を果たしている。



ヘボット!

バンダイの玩具「DXヘボット!」を中心としたメディアミックス企画。朝7時放送のキッズアニメでありながら、ハイテンションかつハイスピードで放たれるギャグ、意味不明なキャラクターが突然現れて脱線を繰り返すストーリー、大人ですら引用元がわからないパロディと、闇鍋のようなカオスっぷりで注目を集めた。
玩具アニメゆえに本編にも商品が登場するが、ヘボットがソフビ人形のヘボットの罠でスクラップ工場へ送り込まれたり、スナック菓子「いもチン」が名前とは裏腹にトウモロコシが原材料だとバラしたり、商品化されなかったキャラクターたちがイケメンアイドルグループを結成したりと、こちらも暴走気味。最終的には企画・開発を手がけたバンダイ社員が最重要キャラクターとして登場し、みずから声優も務めるという展開でファンを驚かせた。しかしお話の本筋は意外に真面目。ストーリーとは無関係に見えた大量のキャラたちにも実は意味があり、骨太なSFとしての一面も併せ持つ。DVD BOXの予約数も最終目標の3000個まであとわずか。目標達成はなるのか要注目!



Re:CREATORS

アニメを中心とした劇中劇のキャラクターが現実世界に現れるオリジナル作品。ロボットアニメのパイロット、RPGの魔法使い、騎士道ファンタジーのお姫様、アクション漫画のラスボス、女児向けアニメの魔法少女、美少女ゲームのヒロインなど、多ジャンルのキャラクターたちが登場。人智を越えた力を持つ彼らは2つの陣営に分かれて衝突し、やがて世界が消滅する「大崩潰」の危機に直面する。
キャラクターの生みの親であるクリエイターがストーリーの鍵を握っていたり、ファンの共感から生じる「承認力」によってパワーが増したりと、フィクションそのものに踏み込んだ設定も印象的だ。だが本作における劇中劇と現実という2つの世界は、どこか原作とアニメの関係を彷彿とさせる。キャラクターの顕現=原作のアニメ化ととらえれば、現実世界で暮らす彼らの性格が変化していくのは、アニメ化の影響で原作も変わることのメタファーにも見える。キャラクターが物語世界へ帰還するラストシーンは、好きな原作のアニメが最終回を迎えたときの感覚と似ている。キャラクターはあちら側で生き続けているし、原作はまだ続いているが、あのお祭りのような日々は終わってしまったのだという寂しさに包まれている。



異世界はスマートフォンとともに。

「小説家になろう!」連載の人気ファンタジーが原作。流行モノのジャンルでは、どこかに独自性を盛り込んで、他作品との差別化を図るのが定石だ。本作も現実から持ち込んだスマホを駆使し、文明の利器によってファンタジー世界を生き抜くストーリーなのだろう。という大方の予想は、スマホが何でもできる魔法の道具として描かれることで早くも裏切られる。むしろ「イセスマ」はテンプレートに手を加えず、そのままさらけ出すことによって、オリジナリティを獲得した希有な作品なのである。
主人公・望月冬夜は例によって最強キャラだが、あまりに強すぎて普通のアニメなら数話かけるようなエピソードであっても、ほんの数分で解決してしまう。なにせ第1話の冒頭3分で死を受け入れて転生するのだから、そのスピード感は並外れている。ほかの作品が取りつくろってきた過程を吹き飛ばし、「異世界転生アニメって結局はそういうものでしょ」とバラしてしまうのだ。最終話で冬夜は一夫多妻制を受け入れるが、これもハーレムアニメというシステムの暴露にほかならない。第7話で描かれた「カレーが辛い」というプリミティブなギャグも、我々の笑いに対する認識を脅かすのに十分すぎる破壊力だ。アニメへの批評性さえ備わった「イセスマ」を見た後では、これまで通り作品を楽しめるかどうかもわからない。近年まれに見る恐ろしい一作だ。



信長の忍び~伊勢・金ヶ崎篇~

「ヤングアニマル」連載の歴史コミックをアニメ化。伊賀忍者の少女・千鳥が織田信長に仕え、桶狭間の戦いから姉川の戦いに至るまでの約10年間を全52話で描き上げた。見た目はキュートだが滅法強く、あらゆる敵をぶった切る千鳥をはじめ、魅力的なキャラクターが盛り沢山。とくに矢が刺さっても死なない不死身の体を持つ木下秀吉が出世街道を歩む姿が見どころだ。ねねとの結婚や、墨俣城築城による侍大将への任命を経て、金ヶ崎の戦いの戦いでは退却する仲間たちを守る殿を任される。
第45話「家に帰るまでが殿です」では防戦を続けるため部下の前で大演説を披露。普段はコメディリリーフが多い秀吉のシリアスなシーンは、声を務める山口勝平の熱演も相まって、1年かけて積み上げてきた作品ならではの説得力が生まれている。本作は姉川の戦いの火蓋が切られる10日前で終わっており、さらなるアニメ化に期待がふくらんでいく。



(文/高橋克則)

(C) 2017つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス製作委員会
(C) BNP/BANDAI, HEYBOT! PROJECT, メ~テレ
(C) 2017 広江礼威/小学館・アニプレックス
(C) 冬原パトラ・ホビージャパン/ブリュンヒルド公国

(C) 重野なおき/白泉社・信長の忍び製作委員会

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