【アニメコラム】キーワードで斬る!見るべきアニメ100 第20回「賭ケグルイ」ほか

アニメ2017-08-27 12:00

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アニメファンの飲み会というのは得てして、大喜利というか連想ゲーム的なものになりがちだ。「○○には××なシーンが出てくるよな」と誰かがひと言いえば、ほかの誰かが「××なシーンといえば△△を忘れちゃいけない」と返してくる。アニメとアニメはそんなふうに見えない糸で繋がれている。キーワードを手がかりに、「見るべきアニメ」をたどっていこう。


名門高校として知られる私立百花王学園。だがそこは、ギャンブルで決められた序列が生徒を支配するという弱肉強食の世界だった。ギャンブルに負けて多額の借金を背負えば、待っているのは「家畜」の身分。そんな学生たちの頂点に君臨するのが生徒会メンバーである。物語は、この百花王学園に黒髪の美少女、蛇喰夢子(じゃばみゆめこ)が転校してくるところから始まる――。

以上が、河本ほむら・尚村透による「賭ケグルイ」の設定で、同作は2017年7月期の作品としてアニメ化されている。
タイトルの通り、本作は賭ケグルイ=ギャンブル狂が主題となった作品だ。虫も殺さぬおとなしい性格に見えた蛇喰夢子も、ギャンブルの修羅場の中で、ハイリスクなギャンブルほど燃え上がる賭ケグルイの本性を剥き出しにするようになる。

登場するギャンブルにはオリジナルが多い。
第1話で登場するのは「投票ジャンケン」。クラスメイトがカードに自由にグー・チョキ・パーのいずれかを記入し投票。2人のプレイヤーは投票箱から3枚をひいて、そこで勝負をする。第2話はトランプを2セット使うダブル神経衰弱。第3話は「生か死か」というルーレットと丁半博打を組み合わせたようなゲームが登場する。
いずれもチップレートは超高額。たとえば、投票ジャンケンは1枚につき1万円。ダブル神経衰弱」では1枚100万円である。

実はギャンブルものの魅力というのは、賭けのスリル以上に、財産を湯水のように使い果たしてしまう「蕩尽(とうじん)」の快楽にこそあるのではないだろうか。
たとえば第1話で追い込まれたかに見えた蛇喰夢子が、巨額の現金をさらに突っ込んで再勝負を挑むくだりが出てくる。この「蕩尽」への誘惑とギリギリのバランスで戯れるところこそ「賭ケグルイ」の「賭ケグルイ」たる所以なのだろう。

というわけで今回のお題はギャンブル。

ギャンブルといえばはずせないのが福本伸行のマンガ「賭博黙示録カイジ」「賭博破戒録カイジ」をアニメ化した「逆境無頼カイジ」「逆境無頼カイジ 破戒録篇」だ。

自堕落な日々を過ごしていたカイジが借金返済のために、さまざまなギャンブル地獄を巡っていくことになる本作は、そのギリギリとカイジを追い詰めていくテンションの高さに中毒性のある作品である。

アニメ版は立木文彦のテンションの高いナレーション抜きに語ることはできない。「そしてカイジ、豪遊!」など、原作でも印象的なセリフを力を込めて読み上げるナレーションのスタイルは、その後、バラエティなどでもパロディとして使われるほど普及した。

ギャンブルアニメはどうしても全体的に動きが少なくなって、地味な設えになりがちだが、ここではナレーションが作品の華を作り出しているのだ。(アニメ「賭ケグルイ」では、狂気を秘めた顔をねっちり描く、いわゆる“顔芸”がその役割を果たしている)。

いっぽう、高級カジノでのギャンブルを描いたのが「マルドゥック・スクランブル」。冲方丁の同名原作は文庫本で「圧縮」「燃焼」「排気」の3冊に分かれている。アニメはこれをそれぞれ1時間のアニメ映画三部作として制作した。カジノシーンは、この3作目「排気」に登場する。

主人公の少女バロットは、自分を悲惨な目にあわせた男シェルを裁くため、彼のデータを隠してある100万ドルチップ4枚を狙ってカジノに潜入する。そこでバロットは。カジノのスピナー(カジノの従業員で、ボールを投入して当たり数字を発表する人)の女性ベル・ウィングと知り合う。ベル・ウィングはバロットに「人生」と「運」について語り、その言葉はバロットを深いところから支えることになる。確かにカジノは人生と運を考えるには最適の場所といえる。
ちなみにギャンブルとしては、ルーレットのほか、ポーカー、ブラックジャックが登場する。

そして最後は「サマーウォーズ」。
ネットの世界を荒らし回るプログラム、ラブマシーンを倒すためにヒロイン・夏希は、ネット内で花札のゲーム・こいこい勝負を挑む。こいこいは、夏希が祖母から仕込まれていたゲームで、札を順番に引いて、役をつくりその点数を競うゲームだ。ここではお金でなくて、ラブマシーンに奪われた4億のアカウントをめぐって勝負が行われる。花札の絵がもっている華やかさも、クライマックスのビジュアル的な盛り上がりに貢献している。

ギャンブルは人生のスパイスであり、人生の真実がそこに潜んでいるのも間違いはない。だからこうしてアニメの題材にもなる。

くれぐれも現実で「蕩尽」の魅力に飲み込まれてしまわないように……。


(文/藤津亮太)


(C) 河本ほむら・尚村透/SQUARE ENIX・「賭ケグルイ」製作委員会

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