【中国オタクのアニメ事情】中国における4月新作アニメの人気。関連作品の悪評が人気の追い風になるケースも

アニメ2017-06-10 12:00

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。
今回は中国の動画サイトで配信されている日本の4月新作アニメの人気の動向や、その周辺事情などを紹介させていただきます。


前評判や関連作品からの話題の影響が目立った4月新作アニメ


中国は9月から新学年になるので6月頃になると中国の学校では学年末の空気になっていきますし、受験シーズン真っ盛りということにもなるので、中国のオタクの主要な層を占める学生にとって忙しい時期となります。
そういった状況なので中国のオタクな人たちの交流や情報収集の動きも鈍くなり、4月の新作アニメに関してはスタートダッシュに成功した作品がそのまま人気と話題を独占する傾向が見受けられます。

今年の4月の新作アニメに関しても初動のよかった作品がそのまま人気を維持しているようで、人気や話題性の高い作品としてはまず「エロマンガ先生」「Re:CREATORS」が目に付きます。
それからやはり「NARUTO」の続編として注目されている「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」が一般層も含む高い人気とPV数を獲得している模様です。
また定番作品の続編として安定した人気作品となっている「夏目友人帳 陸」や、比較的安定したファン層があるとされているラノベ原作系のアニメの中では「冴えない彼女の育てかた♭」「ゼロから始める魔法の書」といったあたりの作品も好調のようです。


関連作品の悪評は中国のアニメ視聴者にどう影響するか


4月の新作に関しては前評判の影響が他のシーズンと比べて大きく出た感もありますが、その「前評判」に関してはポジティブなものばかりではなく、なかでも「エロマンガ先生」と「Re:CREATORS」は中国のオタク界隈ではネガティブな方向の前評判が非常に強く出ていました。

実はこれは「エロマンガ先生」「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」「Re:CREATORS」「アルドノア・ゼロ」という、中国オタク界隈では「やらかした作品」としての悪評が非常によく知られている作品と、原作者や関わっているクリエイターが共通していることによるものでした。

中国における日本のコンテンツの反応や各種炎上に関しては中国特有の政治的社会的な理由によるゴタゴタが目に付きやすいですが、中国の日本アニメファンの間での炎上はキャラの扱いやストーリー展開、特に
「中国のアニメファンにとって納得のいかない展開」
に対する不満が爆発するケースが大きな炎上につながりやすいといった傾向が見受けられます。

またこの「中国のアニメファンにとって納得のいかない展開」が作品終盤で発生し不満が爆発した場合は、作品やキャラクターのイメージがその不満に基づくネガティブなもので固まり、負のイメージの拡散が長期的に続きやすい……といった事情もあります。

そしてこの「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」と「アルドノア・ゼロ」はどちらも作品の終わり方に関して中国のオタク界隈で大きく炎上を起こした作品でした。
(※以下の内容に関しては作品の結末に関するネタバレが含まれますのでお気を付けください)


まず「アルドノア・ゼロ」のほうは、予想外の展開に対する期待外れなどから来る不満や反発が当時の炎上の原因となったそうです。
中国のアニメファンの間では「勝ち負け」が話題になることが多く、それは「主人公とくっ付くキャラが誰か」といった方面にも適用され、作品中盤から終盤にかけての話題の中心になることも少なくありません。

「アルドノア・ゼロ」も主人公格の2人とヒロインの関係はどうなるのか、どういった形で決着が付くのかと注目されていたところに、終盤で唐突に出た新キャラがイロイロと持っていってしまったということで、中国のオタク界隈では非常に強烈な反発が起こってしまったそうです。

中国のオタクな方の話によれば、「アルドノア・ゼロ」は当時作品を追っかけていた人に肩透かしと不完全燃焼な気持ちを深く刻み込み、さらにその炎上の方向からその後の中国オタク界隈では予想を外して期待も外す、ヒロイン的なキャラが予想外のキャラに寝取られるといった展開の代名詞的な存在となってしまっているそうです。


そして「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」のほうですが、こちらは私の知る限り作品の内容に関するものでは中国オタク史上もっとも大きな炎上が起こった作品です。

「俺妹」は中国でも大人気となって一時代を築いた作品で、当時の中国オタク界隈では各ヒロインのファンによる派閥が形成され熱い戦い(?)が繰り広げられていました。

そして当時は原作最終巻においてどのヒロインと主人公がくっ付くかが大いに注目されていたのですが、その結果は中国でもっとも人気が高かったキャラではなく妹キャラということになり、中国のオタク界隈では連日連夜大炎上といった事態になってしまいました。
この炎上はヒロイン人気の他にも、中国における肉親系ヒロインに対する拒否感の強さも加わってのもので、日本と中国の感覚の違いが浮き彫りになる事件でもありました。

この事件による影響は大きく中国のオタク界隈ではいまだに「俺妹」と関連するような話題や「ヒロインの勝ち負け」的な話題になると過去の「俺妹」関係の恨みを掘り返すような発言や、「俺妹」のヒロインの1人である「黒猫」の扱いに関する恨みの声があがる状態が続いています。

以上のような背景もあったことから、この2作品に関しては関連作品の悪評による影響がどう出るかが私も気になっていたのですが、現在の高い人気や話題の盛り上がり方を見ると負の影響による失速ということにはなっていない模様です。


新作アニメ情報の拡散と話題性


現在の中国では日本のアニメ、特に新作アニメに関する情報の拡散は、ライセンスを取得した動画サイトによる広報活動や一部のネット系ニュースサイト経由でのものもありますが、やはり現地のアニメファンによるまとめ情報やネットのクチコミベースでの拡散が主なルートとなっています。

また最近では配信される新作の数が増えたことに加えて、中国国産アニメの商業的な宣伝が活発になってきていることから日本のアニメの存在感は相対的に低下しており、日本の新作アニメの人気に関して「中国のアニメファンコミュニティでの話題性」の重要度が以前よりも上がっているのは間違いありません。
そんなわけで、現在の中国のオタク界隈では悪評であっても、ネタにされ続けることによって関連作品への注目が生まれ、結果的に人気の後押しにつながっていくようなところもあるそうです。

もっとも、上述の2作品は他の中国で人気になった作品と違って過去の恨みを掘り返すような発言も常に付いて回っているそうですし、注目を集め人気となって以降も炎上しやすい、作品批判に流れやすい状況が続いている模様です。中国のオタクな方からは、
「中国のアニメ視聴者の好みに合わない展開が出た場合、炎上してファンコミュニティへのダメージが発生してしまう可能性もある」
といった話も聞こえてきます。

中国では作品人気の移り変わりや、日本のアニメを視聴して活発に発言する層の世代交代のペースが日本に比べて速いといった事情もあることから、過去の悪評による新作アニメへの負の影響は日本ほどではないという見方もあるそうです。

もちろんこの手のネガティブな評判に関しては作品ごとに事情が異なりますし、扱いの難しい要素であることは間違いありませんが、そもそも前提として高い人気がなければ中国のアニメ視聴者に広く伝わるほどの悪評も形成されないわけですから、現在の中国のオタク界隈の環境においては、関連性のある過去の人気作品の炎上も、話題性の面などでは、新作に関してむしろプラスになるというケースもあるようですね。


(文/百元籠羊)
(C) 2016 伏見つかさ/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/EMP

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連作品

関連記事