【アニメコラム】キーワードで斬る!見るべきアニメ100 第16回「正解するカド」ほか

アニメ2017-05-04 12:00

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アニメファンの飲み会というのは得てして、大喜利というか連想ゲーム的なものになりがちだ。「○○には××なシーンが出てくるよな」と誰かが一言いえば、ほかの誰かが「××なシーンといえば△△を忘れちゃいけない」と返してくる。アニメとアニメはそんなふうに見えない糸で繋がれている。キーワードを手がかりに、「見るべきアニメ」をたどっていこう。


「正解するカド」の第1話は、インパクトがあった。
羽田空港の滑走路の一角に突如謎の立方体が出現する。表面にフラクタルな文様が浮かぶこの一辺2kmの巨大な立方体は、滑走路にいた旅客機を飲み込んでしまう。政府はこの緊急事態に対し、あらゆる手段を使って立方体の正体や内部を知ろうとする。だが、立方体はあらゆるセンサーに反応しない。一角を狙って戦車で砲撃しても、壁面に触れた砲弾が丸く変形してしまい、傷ひとつつけられない。

やがて立方体上部から謎の人物がそこに姿をあらわす。彼の名はヤハクィザシュニナ。そのかたわらには、旅客機もろとも飲み込まれたはずの男、外務省が誇るタフネゴシエーター、真道幸路朗の姿があった。
ヤハクィザシュニナと立方体は何が目的で姿を現したのか。そして真道幸路朗の担うことになる役割とは……。

第1話は、一部アニメっぽいキャラクターの見せ方はあれど、全体としてはリアルなシミュレーション映画のテイストでできあがっていた。その姿勢を端的に現しているのが、立方体の性質を調査するために登場する理論物理学者の品輪彼方(先述の美女学者)の「当たり前のこと確認するって大事」というセリフ。このセリフ通り、本作は1つひとつありえそうなロジックを積みあげることで、ありえない出来事を大きく描き出そうとしているのではないか。これからの展開が十分気になる第1話だった。

そんな「正解するカド」だが、ジャンルに分類するのなら、ファーストコンタクトSFになるだろう。異文化(その多くは異星文明であることが多い)との接触から始まるさまざまな軋轢や変化はアニメでもしばしば題材として取りあげられてきた。

アニメ史上、もっとも存在感を放っているファーストコンタクトSFといえば「伝説巨神イデオン」が筆頭にあがるだろう。

外宇宙へ移民を開始した人類は、アンドロメダ星雲のソロ星で異星文明の遺跡を発掘する。その遺跡はなんと、今にも動きそうな宇宙船と3機の乗り物だった。そのソロ星に、伝説の無限エネルギー・イデを求めて異星人バッフ・クランがやってきた。地球人とバッフ・クランの間に武力衝突が起こり、ソロ星の移民たちは、遺跡の宇宙船(ソロシップ)でソロ星を脱出、バッフ・クランはそれを追撃する。そして、3機の乗り物は合体して巨大ロボット・イデオンになり、バッフ・クランを圧倒するほどの戦闘力を示す。

「イデオン」のファーストコンタクトSFの面白さは、バッフ・クランという文明の造形の面白さにある。
バッフ・クランはほぼ地球人と同じ外観をしていながら、髪や瞳に青や赤などカラフルな色を配色し、瞳孔を描かないことで“異星人感”を演出している。“サムライ”の文化を持った階級社会であるとか、両者の間で出産が可能とか、文化的・生物的な観点でも、「似て非なる」絶妙な距離感でもって描かれている。だからこそ、似ているところも、異なるところも際立つし、2つの異星人が出会ったことが“イデの思し召し”だとリアリティをもって感じることができる。

同作の中でも一番ファーストコンタクトSFらしいエピソードは第6話「裏切りの白い旗」だろう。これは、ソロシップ側が降伏を意味する白い旗を使ったら、それがバッフ・クラン側にとっては別の意味で……という内容だった。
こんな2つの異星人の出逢いが、誰も想像しなかった驚愕のラストシーンにたどり着くのが本作の最大の魅力と言える。

カルチャーギャップといったら外せないのが「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」。本作では地球が、戦闘種族ゼントラーディとメルトランディの戦いに巻き込まれるかたちでファーストコンタクトを果たす。そして、両種族が忘れてしまっていた「歌」の魅力でもって戦局を一変させ、戦争を終結させるという仕掛けのストーリーだ。

ポイントは、戦闘種族は戦闘だけに特化しており、「再生産」という概念が完全に失われてしまっていること。これによって地球人とのカルチャーギャップが生まれている。
ゼントラーディは男性だけの種族で、クローン技術によって増えているという設定。だから人間が愛し合う、キスをするということそのものが脅威となるのだ。そして彼らは歌も知らないため、アイドルソングを聞いても心を揺さぶられてしまうのだ。そして地球の“文化”に心動かされた一部のゼントラーディは、人類に味方するようになる。

つまりここではポップソング=愛=生殖という、('80年代的?)セントラルドグマ(中心命題)が“文化”の中核として表現されていて、そんな卑近なものが宇宙戦争の鍵になるというところに、本作のファーストコンタクトものとしてのひねりがある。

「正解するカド」の立方体は完全に正体不明の存在として描かれていたが、「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」もまた、コミュニケーション不能な存在とのファーストコンタクトを描いた作品だった。
「機動戦士ガンダム00」は、地球圏内の紛争というレベルを超克し、人類が宇宙に進出するに足る存在へと進化していく可能性を描いた作品だった。劇場版はその先に待っている「来るべき対話」がついに描かれることになる。

本作で登場するのは金属生命体ELS。人間とはまったくコミュニケーションの形式が異なるELSと人類はわかり合うことはできるのか。人類はELSに滅ぼされてしまうのか。本作は「ガンダム」シリーズに登場する“わかり合える人間”ニュータイプというモチーフを「イノベイター」という設定で継承しつつ、それをファーストコンタクトテーマと組み合わせたところにSF的な発想のふくらみがあった。

果たして「正解するカド」のファーストコンタクトはどのようなラストシーンを迎えるのだろうか。


(文/藤津亮太)

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