アニメーター・天﨑まなむ ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人”第8回)

アニメ2016-12-17 08:00

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アニメ・ゲーム業界の第一線で活躍するクリエイターたちにインタビューを行い、仕事の流儀や素顔に迫っていく本連載。第8回はアニメーターの天﨑まなむさん。「.hack//Roots」、「コードギアス 反逆のルルーシュ」、「Phantom~Requiem for the Phantom~」、「翠星のガルガンティア」、「月刊少女 野崎くん」、「干物妹!うまるちゃん」といった数々の有名作品に参加し、「未確認で進行形」、「ミカグラ学園組曲」、「NEW GAME!」では総作画監督として、作画の全体的なクオリティアップに貢献。「野崎くん」や「ミカグラ」ではデザインも手がけた天﨑さん。メディア初登場となる当インタビューでは、天﨑さんのこれまでの経歴をはじめ、影響を受けた作品、仕事に対するこだわり、アニメーターを取り巻く環境や求められる資質能力、今後の目標などについて、たっぷりと語っていただいた。


中学の同級生にほめられたのが、絵を描く原動力に

 

─このたびはお忙しい中、アキバ総研のインタビューに応じてくださり、まことにありがとうございます。早速ですが、天﨑さんが影響を受けた作品を教えていただけますか?

 

天﨑まなむ(以下、天﨑) いろんな作品の影響を受けていますが、子供のころだと「キン肉マン」を好きでよく観ていました。「キン肉マン」はキャラクターが記号的になっているので、子どもでも描きやすいんですよ。中学生になると「聖闘士星矢」が大流行していて、自分の周りでも「オリジナル聖衣を作ろう」というのが流行っていまして、自分もオリジナル聖衣を描いて、楽しんでいました。そのあたりが結構、絵を描く下地になっていたのかもしれないなと思います。もともと授業を受けるのが好きではなかったので、絵を描くというより、暇つぶしで落書きをしている感じでした。中学2年の時、すごく絵がへたな友だちから「そんなに絵が好きなら、女の子を描いてみろよ」と言われて、描いてみたら、「すげー!」と大絶賛してくれました。そこでほめられたのが、絵を描いていく原動力になっていると思いますね。

 

─天﨑さんのHPには「X-MEN」のイラストもありますね。

 

天﨑 カプコンさんからゲームが出る1年くらい前のことですが、専門学校のころにコミックの翻訳版が出たんですよね。当時の日本のマンガって、今ほどシナリオが複雑じゃなくて、割と正義と悪がはっきりしていて、「悪い奴は悪い奴」という構造が多かったんですけど、アメコミっていい奴も悪い奴もいろいろ問題を抱えていて、人間関係が複雑なんですよ。それが何かすごいなと思ったのと、あとはジム・リーさんのアートワークがすばらしくて、好きで読んでいましたね。めちゃくちゃバタ臭いわけでもなく、ダイナミックさがあって、繊細さもある絵で、カッコいいなと思います。当時は模写まではしなかったのですが、仕事をするようになってからはしました。自分が動画のクリーンアップをしていた時、総作監のアニメーターさんに、明らかに影響を受けている方がおられました。当時はアメコミがあまりメジャーではなかったので、周りの動画マンは「線の意味がわからない」という感じだったのですが、自分は「X-MENの影響を受けているな」とすぐに気づきました(笑)。

 

─マンガ以外ではいかがでしょうか?

 

天﨑 自分はゲームが好きなのですが、当時は「クロノ・トリガー」をよくやっていました。その中にエイラという原始時代のキャラクターがいて、仲間の人間が敵と戦わず、長老も「お前、強い。だから戦える」と言って逃げるんですけど、エイラは「強いから戦う違う! 戦うから強くなる!」と反論して、「お前たち、生きてない。死んでないだけ」と言い放つんですよね。それが心に響きまして、その後は自分の仕事に対しても「できないからあきらめるんじゃなくて、できないんだったら、できるようになればいい」と思うようになり、自分の考え方にも影響を与えていると思います。

 

─アニメではいかがでしょうか?

 

天﨑 自分が業界に入った1997年に、「もののけ姫」が公開されました。スタジオアドという会社に入ったのですが、僕が入るまでは仕上げがメインの会社で、ジブリの仕上げも請けていて、「もののけ」の仕上げもやっていました。それに自分は関わってなかったのですが、初号試写会と完成披露パーティーに出席させていただいて、業界に入ったばかりのときに観た作品だったので、当時はバイブルのように参考にさせていただきました。動画から原画に上がっても、シート付けで迷った時などには、「もののけ」のビデオを観て、コマ送り再生して、タイムシートを割り出して参考にしていました。そのほかにはNHKでやっていた「もののけ」の舞台裏の番組を観て、宮崎駿監督の仕事に対する姿勢とか、心構えみたいなものにも影響を受けたりしていたと思います。まだ業界に入って右も左もわからなかったころなので、すごく素直に受け止めていましたね。

 

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