タカラ製1/100「巨神ゴーグ」を組み立てて、“甲冑ロボ”の極意を学ぼう【80年代B級アニメプラモ博物誌】第15回

2021年10月30日 11:001

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「股ヒンジ」を使えば、安彦ロボのプロポーションがしっかりと決まる!


説明書によると、頭の次には「股ヒンジ」を組み立てる指示がある。「股ヒンジ」とは、初めて聞く単語だ。「股ヒンジ」とは、いったい何か?

▲ ようするに、ガンプラのV字形の股関節、左右に広がる可動軸をさらに可動軸ではさんで、その全体を股間ユニットとして使う。それが「股ヒンジ」です

この「股ヒンジ」って、ロボットのプラモとしては当たり前の可動機構のようでいて、ゴーグの股間周辺がスカート状に開いているからこその構造ではないかと思う。当時のガンプラにも似た機構はあったけど、もっと「デザインに沿っている」というか。
あともうひとつ、お尻のスカート部がカッコいい分割になっているので、ぜひ見てほしい!

▲ 腰が前後にパーツ分割されているのは当たり前だけど、最後部に位置する1枚のスカートを、可動するように組み立てる。ヒンジを付けて後部にパカパカ動くようにするだけなんだけど、しっかりとデザインを理解している。見事な構造だよ

▲ こうして組み上げたスカート部に股ヒンジを組み入れて、上半身の後ろパーツにはめ込む。上半身と股ヒンジの間には、ちょっとしたスペーサーのような円盤をはさんで、腰の部分がスムーズに回転するよう考えられている。いいキットだ

スカート部の可動や腰の回転、これって地味に凝った構造だよね? 考えてみれば、タカラ製「ボトムズ」シリーズも、腰回りの装甲が胴体とは分離していたよね。その構造のおかげで、上半身を無理なく回転できて……と、タカラにはタカラなりの進化の歴史があるんだよなあ。

▲ 上半身は、頭と腕を胴体パーツで前後からはさむ典型的な組み立て方式

▲ 全体の構造をわかりやすくするため、先に足をはめこんでみた。ようするに、モナカ状の胴体が頭や足をはさむのではなくて、股関節(このキットでいう「股ヒンジ」)がコアとなって、上半身と足を繋ぎとめているわけだ

後は腰パーツを付ければ完成……と思いきや、ちょっと面倒な作業が待っていた。手にする大砲(改造180ミリ砲)と、背部ユニットを組み立てないと。

▲ 大砲は、全6パーツ。左右に付く箱状ユニットが、わざわざ2パーツずつに割ってある。こういう細かな作業、微妙に面倒くさい。この箱状ユニットは砲本体から浮くので、別パーツにする意図は理解できる

▲ これが背部ユニット(説明書での呼び名は「バックメカ」)。たった2パーツではあるが、インテークの穴がちゃんと空いていたり、手ぬかりのない造形。パーツを組み合わせると、下方にロケットノズル的な穴ができたり、とてもセンスのいい分割

さて、そしていよいよ、タカラの繰り出す“甲冑ロボ”の完成だ。最後に付けるパーツが、また甲冑っぽさを体現していて、感動的なんだよね。

▲ これこれ、このパーツです。左右の肩に接着するだけなんだけど、胴体と一体成型せず、わざわざ別パーツにしたのが偉い。すごく甲冑っぽさが出ている

▲ そして、こうなる! 折り重なった肩の装甲が、独特の密度感を出している。頭や胸、肩などの上半身に緑がかった樹脂を使っているので、どこか玩具っぽいんだけど、全身が同一色より、このほうがリッチなのかもしれない

▲ 全身を見ると、こんな感じ! 多くのロボットは、肩のパーツがナナメ上方向に広がっているもんだが、見事なナデ肩。腰のゆったりとしたシルエットが優雅だ

そして忘れてはいけない、悠宇のフィギュア! 説明書では、悠宇の足に円盤状のパーツを付けてゴーグの頭に接着する指示がある。

▲ 言うまでもなく悠宇が巨大すぎるんだけど、こういうのは突っ込むのも野暮というか。1/100というスケールをロボットの身長設定に合わせつつ実在の人間の身長にも合わせた結果、このような齟齬が生じてしまったものと推測する

▲ あと、忘れてはいけない大砲。説明書でも、右手に砲身のいちばん細い部分を持たせるよう指示がある。なので、劇中のような砲撃ポーズは最初から想定されてないらしい

▲ 悠宇を乗せて、大砲を持たせて、どれぐらいポーズをとらせられるか試そうとしたが……肝心の「股ヒンジ」の嵌合が硬すぎて、バキバキと折れてしまった。もともと、可動範囲はそれほど広くないので、無理に動かさないほうがよかったな

アニメ劇中のようなポージングはできないけど、全身のラインは、まるで手で引いたようにきれいだ。平坦な面がなく、指でなぞると気持ちがいい。当時のタカラのプラモデルには、さぞかしすぐれた木型職人が協力していたのではないか……と推測するが、アニメーターが手で引いた線とアナログ時代の金型技術って、実は相性がよかったのではないだろうか?
と同時に、「ダグラム」「ボトムズ」でミリタリー系ロボを極めてしまい、「ゴーグ」「ガリアン」の甲冑ロボへ変遷していく1984年のタカラの動向を興味深くも感じている。タカラのプラモは面白いね、また組み立ててみたい。来月は、けっこうメジャーなロボを組み立てますよ!


(文/廣田恵介)

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関連作品

巨神ゴーグ

巨神ゴーグ

放送日: 1984年4月5日~1984年9月27日   制作会社: サンライズ
キャスト: 田中真弓、キートン山田、雨宮かずみ、今西正男、向殿あさみ、神保なおみ、佐々木優子、立木文彦、池田秀一、高島雅羅、亀井三郎、戸谷公次、藤本譲、加藤正之、佐藤正治、郡司みつお、島田敏、石塚運昇
(C) SUNRISE

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コメント(1)
設計主任設計主任2021/11/01 08:00

懐かしいです。ウインガルもゴーグのキットもタカラ時代に担当して設計&商品化しました。 当時の記憶がよみがえりました。

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